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悪逆無道

人形より先にこっちが出来ました。

いつもよりかは短いです。

誰が主人公とかは明確に決めてはいないですが、ジェニファーたちは今回はお休みです。

どうぞお楽しみください。

「ひ……やめ……」


「へ、遅いか早いかの差だ。なら今死んどいた方が楽だろ?」


拘置所内に銃声が響く。

看守の一人が眉間を撃ち抜かれ絶命した。

見れば看守の腕には噛み傷がある。


「おやおや、放って置いてもゾンビになるからって今殺すのですか? ゴードンさん」


「コイツには世話になったからな、キッチリ礼をしただけだぜ? ビリー、飾り付けれないのが残念だがな」


「相変わらずイカレてますね」


「俺は正気さ」


ゴードンは死刑囚だった。

30人に及ぶ殺人。

ゴードンが捕まるまで……否、捕まっても言い続けていたのは「動物を作品に仕立てるのは良くて人間は何故悪い?」だった。


彼にとって殺人は趣味である。

自分なりの美学があり、それを忠実に守って人間の死体を一つの作品に仕立て上げる。

彼の美学とは「爆弾や機関銃を使わない事」

そう、彼は拳銃やマチェットを使い30人もの人間をおよそ5年かけて殺し続けたのだ。


曰く「あの手の武器は美しくねえ、破壊が酷くて作品には向かない」だそうだ。

例えば、殺害された一人の女性は腹を裂かれ、子宮を開き、引きずり出した腸をまるで羽を開いたように大きく広げて釘で貼り付け、子宮の中には別の人間の首を添えた。

彼曰く、作品名「生命の神秘」。

他にも前後に綺麗に割いた二つの死体を使って作られた「両面宿儺」など大凡正気とは思えないモノばかりだった。

ちなみに日本の阿修羅などの仏は刺青にするくらい好きらしい。


老若男女問わず必ずそのようにすることから警察では「アート」と呼ばれ、マスコミは「イカレ芸術家(マッドアーティスト)」と呼び恐れられた。


なによりも驚かれたのは捕まった彼が精神鑑定を受けた時だった。

なんと彼は正気(・・)だったのだ。


彼、ゴードンにとって殺人と死体アートは趣味でしかなく、本当に芸術としてしかとらえていなかった。

故に捕まえるのに苦労した面もある。


綿密に計画を練って実行、事が済めば一般人として普通に生活する。

誰もが「まさか」と言わざるを得なかった。


そんな彼がとうとう年貢の納め時となり、いつ執行されるかわからない日々を過ごしていた矢先のある日転機が訪れる。

看守の一人が血まみれで、彼ら死刑囚たちのいる部屋に飛び込んできた。

拘置所内で暴動が起き、看守や囚人が入り乱れて暴れているので抑えるのを手伝って欲しいと願ってきたのだ。


いくら人手が欲しいとはいえ囚人に、それも死刑囚に協力を要請するのはどうなのだろうか?

飛び込んできた血まみれの看守はお願い事を言ったあとに絶命した。

これ幸いとその中の一人だったゴードンは拳銃を奪って逃げ出す算段を部屋仲間としていたとき、死んだ看守が起き上がり襲い掛かってきた。


応戦して事なきを得たが、生き残った数人は噛まれた。

そして……ゾンビ化した。

その後、最初の会話である。


「ま、世話になった看守は問答無用で殺処分だが、気心しれた仲間でも噛まれたらアウトだから申し訳ないが変化する前に殺す。即座に変わることは無いみたいだがさっきみたいに背後からバクリとやられたらたまったもんじゃないんだぜ?」


「……出来るだけ噛まれないようにしますよ」


「噛まれたら俺が間違いなく殺してやるよ、逆に俺が噛まれたら」


「ええ、殺して差し上げます。貴方が私好みの女性なら楽しかったのですが」


「まあそういうなビリー、残ったのは俺たちだけだからせいぜい気を付けようぜ」


世間では凶悪と言われた殺人犯故の躊躇のなさはある意味頼もしい。

彼らは容赦なく噛まれた者を屠り、武器弾薬を補給しながら出口へと向かっていた。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



「まったく、倒しても倒しても限がないな」


「この分だと署内全員がゾンビになってるんじゃないですか? ん、あーあ勿体無い……いつか犯し殺して差し上げようと思っていたアンジェラちゃんがゾンビになってますよ……」


「捕まった段階で叶わない夢だったけどな。しかし、ビリーよぅ……よく見分けつくな」


「ふふふ、私が好みの女性を間違えるわけないですよ。まったく何処のどいつですか、アンジェラちゃんの素敵なDカップ齧りとった野郎は……よっと」


危なげなく愛しのアンジェラちゃんの頭を撃ち抜き、ただの死体に変えるビリー。


こっちはゴードンと違って生粋の異常者、というか異常性癖者。

彼にとっての好みに引っかかってしまった女性は哀れとしか言いようがない目に遭わせられる。

ただの強姦なら救いはあるのだが……否、それはそれで救いは無いが、ビリーは対象となった女性の性器を切り取って本人の目の前でソレを使い自慰を行う。

その時に見せる悲痛な絶望の表情がとてつもなく「そそる」と言うのだ。


ひとしきり楽しんだ後、反応が無くなるまで精神を破壊しつくしたら用済みとして殺害。

その際に使用した性器はホルマリンに入れ、部屋に日付と名前を書き込み保管するのだ。

彼の職業は外科医。

致命傷を避けて生かしたまま切り取る事は訳ない。


逆に人体の急所を知り尽くしていたりもするので、頭のどこを狙えば一撃で終わるかという事も彼にとっては大した作業ではなかった。


「あった、武器庫だぜ」


「三階に上がってきたから出口からは遠ざかりましたがね……ほう、コレはいいですね」


「武器は大量にあっても困らねえだろ。ほら見ろよ、ライフルだぜ」


「こっちはショットガンです。って、こっちに向けるの止めてくださいよ。」


「悪いな、油断したお前が悪いんだぜ?」


「く……あなたを信用した私が馬鹿ですか……」


ゴードンが一切の迷いもなく放った銃弾はビリーの頬に一筋の赤い線を作り出した。

直後、ドサリと何かが倒れる音が背後で聞こえた。


「え?」


「くっくっく……な? 油断したお前が悪いだろ?」


「心臓に悪いですよ……助けてくれるならバットマンとかヒーローのようにスマートにしてください」


「別にヒーローにあこがれる歳でもない。それに俺はバットマンよりジョーカー派なんだよ」


「なるほど……確かに質の悪い冗談がお好きな貴方らしいですね!」


そう言って背後を振り返り、近づいてきていたゾンビをビリーが吹き飛ばす。


「扉を閉めておかなかったのはミスでしたね」


「ま、今さら言ってもしょうがねえよな。とっととこの場所からオサラバするぞ」


「この包囲網を突破出来たら……ですね」


銃声を聞き付け、ゾンビがこの狭い部屋に集結している。

単純に見ても絶望しか感じないこの状況下で二人は微塵も自分たちが逃げられないとは考えていない。


「まともに相手したら弾薬が尽きるな」


「ゴードンさんにはどうにか出来る方法でも?」


「ある、お前は?」


「私もありますね」


「ほう? じゃあ同時に言ってみるか」


「「私が(お前が)ゾンビを抑え、貴方が(俺が)道を作る」」


二人は口の端を歪め、ニヤリと嗤う。


「いいね、先生。最高だよ」


「いえいえ、貴方こそ。では任せてください、そちらは任せますよ? 力仕事は苦手ですから」


「おうよ、そっちも頼んだぜ? 芸術にもならん作業は苦手なんでね」


ビリーがゾンビを抑えている間にゴードンは武器が入っていたロッカーの位置を狭め、間にベンチを置く。

部屋にかかっていた厚手のカーテンを引きちぎるように外し、硬く結んで長さを稼ぎロッカーの間に置いたベンチに結び付けた。

ベンチだけだと窓にひっかける事が出来ないのでロッカーを使ってつっかえ棒の代わりにしたのだ。

大した重いものという訳ではないが、そう言った作業はゴードンが得意とするものだった。


「おし、準備で来たぞ。先に行く! 俺が行ったら出来るだけ早く来い!」


「ええ、わかってますよ」


ゴードンはするするとカーテンを伝って下の階に移動する。

圧倒的に地上に行くには足りないが、一つ下に行くくらいなら十分な長さだ。

チラリと室内を覗き、居ないのを確認したゴードンは壁を蹴り、勢いをつけて窓を破って部屋に入る。

上に集まっているという事は下は数が少なくなっているという事。

ゲームのように無限に現れるポップモンスターではないのだから道理である。

ゴードンが中に入って割とすぐにビリーも降りてきた。


「ガラスが割れる音が響いてるからもうすぐここも集まってくるだろうな」


「ええ、急いで脱出しましょう」


街が絶望に包まれたその日、出てくることは無いと思われていた二人が外の世界に解き放たれた。

その二人はまだ人間にとって敵となるか味方となるかわからない。

書いてて楽しくなってしまった二人。

いや、かなりの極悪人ですよ?

嫌いじゃないけど。

ブックマーク、評価、感想をくださる方、お読みいただいた皆様に感謝。

お付き合いありがとうございました。

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