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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第3巻 三大女神 地球最大の対決!?
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24 ミヤっちを救え!!

「うおりゃぁぁぁぁぁ!!! スーパーうずめちゃんパワーーーーっ!!!」


 わたしの浄化パワーが、漆黒の空間を赤く輝く光の世界へと塗り替えていく。やがて、目の前の景色は何もない空間から元の世界――デパートの屋上に変わっていた。


「よぉ~し! この勢いで、わたしたちをリングに閉じこめているガラスの壁も破壊しちゃうぞ!」


 このキャラかぶりデスマッチ用のリングにいる限り、ミヤっちは霊力を失い続けて死んでしまう。一刻も早くリングを覆っているガラスの壁を破壊しなきゃ!


「壁を壊すための武器……強力な武器……あっ、そうだ! 機関銃とかならいけるかも?」


 ピコーン! とひらめいたわたしは、椿の花のかんざし『宇受売うずめ』を額にそっと当てて「機関銃になれ!!」と念じた。


 ミヤっちの記憶の中で昔のわたしが『宇受売』を小刀に変化させている場面を見たせいか、おぼろげだけどこの神器の使い方を思い出してきたよ。

 このかんざしは、持ち主の「願い」を具現化するアイテムなんだ。わたしの霊力の大きさによってやれることが変わってくるから、普段のわたしではあまり使いこなせないかも知れない。でも、パワーアップ中の今のわたしなら……!


 ピカーーーっ!!


 わたしの強い願いに応じてくれるように、『宇受売』は光り輝き、小さなかんざしからズシリと重みのある機関銃へと変化した。


「やった! 成功した! でも、女の子が機関銃をぶっ放す時の正しい服装といったらアレだよね……。よし、ここで衣装チェーンジ!!」


 わたしはそう叫び、水着風巫女装束から(ほんの一瞬だけ光り輝く裸体になって)セーラー服姿に衣装チェンジした。


 そう、セーラー服と機関銃こそが、薬師〇ひろ子以来の形式美《お約束》!!


「いっくよぉ~! あっ、みんないちおう伏せていてね?」


 呆然とわたしを見上げている屋上のみんなに一声かけると、わたしはガラスの壁に向かって機関銃をぶっ放した!


 ズダダダダダダダ!!! ズダダダダダダダ!!! ズダダダダダダダ!!!


「か~~い~~か~~ん~~♪」


 わたしの霊力がこもった銃弾はガラスの壁を粉々に破壊していく。よし、壁に大きな穴が開いた! 脱出するよ!


 機関銃を元のかんざしに戻したわたしは、気絶しているミヤっちをお姫様抱っこして、リングから飛び降りた。


「猿田くん、キャッチして!」


「え!? 二人いっぺんに!?」


「女の子は綿あめにみたいに軽いんだから平気よ!」


「んなわけあるかーーーっ!!」


 猿田くんはそう叫びながらも、わたしとミヤっちが落下する地点までダッシュして、


 ドスーン!!


 わたしたちの下敷きになってくれた。ナイス、猿田くん! ……って、あれ? 猿田くん? ちゃんと息してる?


「お、おもた……ごほん、息が苦しいから早くどいてくれぇ……」


 あっ、良かった。生きてた。わたしはミヤっちを抱きかかえたまま猿田くんの体から降りた。


「う、うずめ。もう少し後先考えてから行動してくれ」


「どさくさにまぎれてわたしのお尻触ったんだから、そんなに文句言わないの☆ あっ、ついでにわたしのおっぱいも揉んどく? ほれほれ~」


「だ、ダメだ、うずめ! そ……それ以上は! みんな見てりゅううううう!!」


 わたしのR-15指定相当の行為を見て、トヨちゃんが「う、うずめさんの羞恥心が……。パワーアップ状態から元に戻った時、うずめさんが恥ずかしさのあまり悶絶死しないか心配ですわ……」と呟いていた。


 ちなみに、雪音ちゃんや他の観客たちがわたしをガン見していたらしいけれど、この時のわたしはぜんぜん気にしていなかった。


「み、ミヤっち! 大丈夫か!? しっかりしてくれぇ~!! うわぁ~ん!!」


「ウカちゃん、落ち着いてってば。霊力を失って死にかけている神様はどうやって救えばいいの? あんた見た目は幼女だけど、本当は何千年も生きている女神なんだからそれぐらい分かるでしょ?」


 泣きべそをかきながら駆け寄ってきたウカちゃんに、わたしはちょっときつめの口調でそう言う。救命行動は迅速にしないと、手遅れになったら後悔してもしきれないもん。


「う……うじゅめ……。わたくしはさんざんうじゅめのことを苦しめて、暗殺しようとしたのに、わたくしの友達を助けてくれりゅのか……?」


「当たり前じゃん! ミヤっちはわたしにとっても友達……ううん、大切な妹分なんだから! 誰のためでもない、わたしのためにミヤっちを助けるんだよ!」


「うじゅめ……。そなたというヤツは……うわぁぁぁぁん!!」


「泣いとるばやいか!! 早く助ける方法を教えなさいな!!」


「ひぐっ、ひぐぅ……。ほ、他の神から霊力を分けてもらったら、助かると思う。でも、稲荷大神五柱の一人であるミヤっちの霊力の総容量はかなり大きいから、霊力を譲った神が今度はひんち……じゃなくて瀕死になるかも知れぬ。

 本来なら同じ神社に祀られていてミヤっち以上の霊力があるわたくしが適任なのじゃが……おキツネ憑依の術を使いすぎたせいで、ミヤっちを助けるだけの霊力が残っておらぬ……」


「そういうことならわたしがミヤっちさんに霊力を譲りましょう」


 そう言って名乗り出てくれたのは、トヨちゃんだった。日本最高神アマテラス様と一緒に伊勢でお祭りされているトヨちゃんなら霊力も膨大にあるだろう。でも……。


「トヨちゃん、口や胸元が血だらけじゃん! 吐血しすぎぃー!」


「ぜんぜん大丈夫ですのでご安心ください。ちょっと稲荷寿司《食べ物》を投げすぎたものですから精神的なダメージが……」


「そんなフラフラなのに霊力を分けたら危険だよ! ……わたしがミヤっちに霊力を分けるからトヨちゃんはちょっと休憩していて! トヨちゃんに倒れられたらアマテラス様に殺されるし!」


「待て、うずめ。オオミヤノメ殿と全盛期だった頃のアメノウズメの霊力はほぼ互角だ。それなのにお前が霊力を譲り渡したら、お前の霊力が空になって死ぬかも知れないぞ!? ここはオレが……」


 猿田くんが心配してわたしを止めようとした。


「猿田くんこそ『よみがえりの術』で蘇ったばかりで霊力が不足ぎみなんでしょ? 余計に危険じゃないの。大丈夫だってば、今のわたしは鈴ちゃんたちのおかげでパワーアップしているもん。キャラかぶりデスマッチでミヤっちから奪っちゃった霊力のほとんどは神器『宇受売』を二回使ったせいでほぼ消費しちゃったけど……ほんのちょっとは残っているし!」


 そもそも、さっきの戦いでわたしがミヤっちから霊力を吸い取っちゃった(まあ、あの呪われたリングのせいでだけど)から、ミヤっちが死にかけているんだ。だったら、わたしが霊力を返してあげるのが筋ってもんでしょ。


「し、しかし……」


「ああもう! 悩んでいるヒマなんてないの! 誰かの命を救うために命を賭けられないなんて、何が神様よ。ケセラセラ! 最悪な結果ばかり想像していたら何もできない! わたしはやるよ!」


 わたしはそう啖呵たんかを切ると、ミヤっちを抱きしめ、体内にある霊力をミヤっちへと流しこんでいった。


 ……そういえば、「他の神様に霊力を譲る」なんて行為、誰にも教わっていないのになんで自然とできているんだろ? 神様だった頃の記憶が無くても、わたしの体が覚えているのかな?


 なんてことを考えながら霊力注入をがんばっていたら、また新たな問題が発生した。


「……うずめちゃんそっくりの女の子、今にも死にそうな顔をしているけれど大丈夫なのかしら……。き、救急車を呼んだほうがいいよね……」


 うげっ、しまった。雪音ちゃんがスマホで救急車を呼ぼうとしてる! 色々とありすぎて、屋上にいる人間たちの存在をすっかり忘れていたよ……!


 他の人たちも意識がないらしいミヤっちのことを心配して、やはりスマホで救急車を呼ぼうとしているみたいだ。


「あ、あわわ、救急車なんて呼ばれたら騒動が大きくなっちゃうよ!」


「わたくしに任せておけ、うじゅめ! こういう時こそ記憶操作の術じゃ! 霊力消費が少ないこの術だったら、今のわたくしでも使えるじょ! おい、サぁータヒコも手伝え!」


 ウカちゃんはそう言って猿田くんに指示をあたえると、二人そろって両手をパン! パン! と二回叩いた。その直後、


「おぎゃ~! おぎゃ~!」


「ばぶぅ~、ばぶぅ~」


「ふえぇぇぇぇん! ふぇぇぇぇぇん!」


「マンマーーーっ! マンマーーーっ!」


 鈴ちゃんたち巫女アイドル隊をのぞく屋上の人間たちは全員、まるで赤ん坊のように泣き出したのである。


「どうじゃ! 記憶を操作して、みんな自分のことを赤ん坊だと思っておりゅじょ!」


「なるほど。ナイスアイディアですな、ウカ様」


「ふはははは! そう褒めるな、サぁータヒコ。照れるではないか。うじゅ……うずめよ、これで集中してミヤっちに霊力を注入できるぞ!」


 大勢の大人たちが赤ちゃん化している異様な状況で集中できるかい!!!


 め……めちゃくちゃすぎる……。アイドルのプロデューサーらしきおじさんはおしっこをちびって大号泣しているし……。あと、なぜか雪音ちゃんだけは「うきゃきゃ! うきゃきゃ!」とサルみたいに上機嫌に笑いながらハイハイしているのが謎だ……。


 で、でも、これで誰かに救急車を呼ばれる心配はなくなった! 今のうちにミヤっちを助けなきゃ!


 うりゃーーーっ! 霊力フル注入ぅ~!!







            ☆   ☆   ☆






「う……う~ん……。あれ? オレはいったい……ハッ!! うずめを助けようとして飛び出して、電撃をくらって気絶していたのか! うずめファンクラブの会長でありながらうずめが危ない時に意識を失ってしまっていたとは不覚……! おい、半蔵、お前も起きろ! お前の主人が大変な時に気絶している場合か!」


「う、う、う……。ハッ!? し、しまったコケ!! うずめ様は無事ですかコケ!? ……うああ!! う、うずめ様が倒れているコケ~!!」


「う、うずめぇーーーっ!!」


「うずめ様、しっかりするコケぇーーーっ!!」


 気絶していたタヂカラオと半蔵がようやく目を覚まし、ミヤっちに膝枕されてダウンしているわたしに駆け寄ってきた。


「ふ、ふえぇぇ……。わたし、もうダメ……」


「うずめさん……いいえ、うずめお姉様! しっかりしてください! わたしはお姉様のおかげでこの通り無事です!」


「ごめん……無理ぃ……。は……恥ずかしくて死にそう……」


「開放的な気分に流されて危うく水着を脱いで歌いそうになったこととか、公衆の面前でサルタヒコ様にR-15指定相当の行為におよばれたことなど、気にしないでください! 昔のうずめお姉様はもっと大胆でしたから!」


「あああああああ!! 言わないでぇぇぇぇ!! 死にたいぃぃぃぃぃ!!」


 ミヤっちの膝の上で身悶えするわたし。さっきまで何があったのか知らないタヂカラオと半蔵は、「何がどうなってんの……?」と問いたげな顔をしてトヨちゃんを見た。


「……うずめさんは乙女の大事な物を失ってしまったのです。おかわいそうに……」


 首を横に振りながら涙ぐむトヨちゃん。

 ……やめて? その言い方、すごい誤解を招くから。


 ミヤっちに霊力を注入したわたしはパワーアップ状態がとけ、いつもの笑美うずめの姿に戻っていた。髪は元の肩までの長さになり、おっぱいも縮んだ……。そして、人間としての慎みも復活した。


 全てが元に戻る中、羞恥心がぶっ飛んでいたわたしが行なった恥の数々だけが残ってしまったのだ。……く、くそっ、いっそのこと殺せ!!


「心配するな、うずめ。今日あった全てのことは、人間たちの記憶から抹消すればいい。あまりホイホイと人間の記憶をいじくったら、口うるさい知恵の神オモイカネ殿に怒られるかも知れないがな……」


 猿田くんはそう言ってわたしをなぐさめるけれど、わたしの痴態を一番覚えていて欲しくない猿田くんは覚えているんだもん。マジで恥ずかしさのあまり死にそう……。


「わたし、もうお嫁に行けない……」


「お前はすでにオレの嫁なんだから、そんな心配はしなくてもいい」


 猿田くんは照れて顔を赤くしながらも、わたしの頭をポンポンと撫でてくれた。


 あ、あうう……。頭ポンポンしてもらうの好きかも……。


「これで一件落着ですね。何か忘れているような気がしますが、うずめさんもミヤっち様もご無事で何よりです」


 鈴ちゃんが微笑んでそう言うと、半蔵も「はいコケ! みんな笑って大団円ですコケ! 何か忘れているような気がするコケですが」と笑った。


「そうじゃな! 色々とありすぎて何が原因で争っていたのかも忘れてしまったが、ミヤっちとうずめが仲直りもできたし、めでたち、めでたちじゃ! ふはははは!」


「ウカ様の言う通りです。逮捕されたり誘拐されたりしていたオレはそもそも今回の騒動がなぜ起きたのかもあまり理解していませんが、みんな無事で良かった! ……オレをストーカーだと高天原警察署に通報した半蔵は後で唐揚げにしますがね。あはははは!」


 大笑いしながら、逃げようとしていた半蔵の首根っこをつかむ猿田くん。

 えっ、高天原警察署に通報したの半蔵だったの? ……あーあ、これはしばらく猿田くんにいじめられそう……。


 なーんて、わたしたち(泣きながら猿田くんに謝っている半蔵をのぞく)は和気あいあいと笑い合っていたのだけど……あれ? たしか、今回の騒動の原因って……。


「楽しそうだな。オレも混ぜてはくれないか。あと、サルタヒコ。うずめはオレの嫁にするから譲れ」


 屋上に、天空を切り裂くかのように猛々しく大きな声が響いた。


 こ……この声は……!!

 わたしたちは、いっせいに背後を振り返る。


 屋上のフェンスの上に健康サンダルで器用に立っているアロハシャツ姿の偉丈夫。彼は――。


「ち、父上!? どうしてここに……」


 ウカちゃんが動揺した声でそう叫んだ。


 また現れやがったよ、日本神話最大の暴れん坊スサノオ様が……。







<雑談コーナー:うずめ×作者>


うずめ

「色んな物に変化するかんざしなんて神話に出てこないのに、どうやってそんなこと思いついたのよ」


作者

「うずめちゃんにセーラー服と機関銃ごっこをさせたいがために考えついた設定でござる!」


うずめ

「やっぱりこの作者アホだ……」

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