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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第3巻 三大女神 地球最大の対決!?
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16 デパートの女神の実力

「あ、あわわわわ……。わたしと瓜二つなのに、なんでそこだけ違うのよぉ……」


 わたしは震える指でミヤっちの胸元を指差す。


「な、なぜと言われましても……。うずめさんも昔はこんな感じでしたよ? 人間の娘として成長途中だから、今はまだ慎ましやかなだけなのでは……」


 ミヤっちは胸のことを指摘されて恥ずかしいのか、ちょっと頬を赤らめながらそう答えた。


「ふはははは! うじゅ……うずめよ、そなたはミヤっちのことを自分の2Pカラー程度にしか思っていなかっただろうが、現実を見るがいい! 瓜二つの美少女顔でも、そなたはまだお子ちゃま、ミヤっちは成熟したないすばでーなのじゃ! つまり、ミヤっちのほうがそなたの上位互換というわけじゃ!」


 が、がびーーーん!!!


 ウカちゃんの嘲笑に、わたしは精神的に甚大《じんだい》なダメージを負い、がくりと膝をついた。


 わ、わたしは下位互換……下位互換……。


「う、うずめさん! 体が……体が透けてきていますよ!?」


 鈴ちゃんの叫び声。ハッとなったわたしは自分の手を見る。


 う、うわっ! 本当に透けてきている! 何よ、これ!?


「もうひとつ言い忘れておったが、キャラかぶりデスマッチの途中でも戦意を喪失したら、『自分がキャラかぶりの相手よりも劣っていること』を認めたと判断され、相手に霊力を吸収されてしまうぞい」


 そんなめちゃくちゃ重要なことを言い忘れるなーーーっ!!


 あ、あばばば……。このままだと、勝負する前に消滅しちゃうよぉ~。


「うずめさん、気を強く持ってください! 胸の大小なんてどうでもいいことにこだわっている場合ではありません!」


 トヨちゃんが豊かな胸を上下させながらわたしを叱咤激励する。胸の大きな子にそんなこと言われても説得力ないよっ!!


「ミヤっち! うずめは自滅寸前じゃ! さっさとケリをつけて、勝利をかくじちゅ……こほん、確実にするのじゃ!!」


「は、はい」


 ミヤっちは頷くと、「みなさん、こんにちは! デパートの女神オオミヤノメです! ミヤっちと呼んでください!」と観客たちに呼びかけた。


「一曲歌う前に、みなさんにささやかなプレゼントがあります。受け取ってください!」


 プレゼント……? 何をする気なの?


 ミヤっちは両手を天にかざし、「デパートの女神秘儀、商品券ブリザードっ!!」と叫んだ。その直後、


「お……おい! 空から大量の紙が降ってくるぞ!」


「何だこれ……。こ、これは……デパートの商品券じゃないか!!」


「ひ、拾え! 拾え~! 1枚1000円分の商品券が雨あられのごとく降ってくるぞぉ~!!」


「商品券、17枚ゲットだぜ!!」


「わたしなんて24枚ゲットよ!!」


「まだまだ降ってくるぞ! もっと拾うんだー!」


「ひゃっほーっ! なんて太っ腹な女神様だ! オレ、あの女神様を応援するぜ!」


「わたしも! わたしも!」


 アイドルオタクの男性たちだけでなく、若い女の人たちや家族連れまで大喜びし、ミヤっちは一瞬で観客たちの人心を掌握してしまった。


「ふはははは! どうだ、これがデパートの女神の実力じゃ!」


 買収じゃねぇーか!! え・げ・つ・な・い!!


「まだわたしのターンは終わりません!! ……デパートの女神秘儀、従業員《げぼく》召喚!!」


 ミヤっちがまたもや技名(?)を唱える。あ……これは何が起きるのか想像がつくような……。


 ず……ずどどどど……。


 ずどどどどどどどどぉぉーーーっ!!


「オオミヤノメ様バンザイ!! オオミヤノメ様バンザイ!!」


「我らが女神様に光あれ!! 我らが女神様に光あれ!!」


「商売繁盛~!! 商売繁盛~!!」


 建物の全階にいたデパートの従業員たちがけたたましい足音とともに屋上に押し寄せ、ミヤっちを崇め奉り始めた。みんな洗脳されたみたいに目が虚ろで、何かヤバイ宗教みたいになってる……。


 地方のデパートだから従業員の数も都会の巨大デパートに比べたら少ないけれど、各階の従業員たちが屋上に集結したらすごい人数だ。屋上は普通のお客さんと従業員たちで溢れかえり、誰かが屋上から落っこちそうなぐらいになっていた。


「ふはははは! これで、ミヤっち推しの人間が増えたぞ!」


 あっ、そうか。ルールは「屋上にいる人間たちが審査員」なんだから、屋上に集まったデパートの従業員もふくまれちゃうんだ。


 まずい。まずいよ。こんなの、わたしが圧倒的に不利じゃん……。


「で、では、不肖オオミヤノメ、歌わせていただきます。わたしが作詞作曲した『恋はいつも魔法』です。聴いてください」



   光がさしこんで 私は手を伸ばしたよ

   あなたの手の温もり 初めての感情

   10年後 こう思えたらいいな

   これが私たちの始まりだったって


   道ばたの石ころだった私を

   あなたが恋色に咲く花にしてくれた


   愛はとても不思議

   たったひとつの出会いが 心をこんなにも浮き立たせる

   一人ぼっちでも平気だった私

   もう あなた無しではダメみたい

   たった一日 あなたの声を聞かなかったら泣いちゃうんだ



 え……うえええ!? めちゃくちゃうまい!! しかも、自分で作った歌なの!?


「み、ミヤっち……。デパートの女神様なのになんで歌なんか作れるの?」


「わたし……趣味が詩集作りでして……。たまに自分のポエムに合わせて作曲なんかもしているんです。ほら、最近は音楽制作ソフトとかで簡単に作れちゃうじゃないですか」


 ミヤっちは恥ずかしそうにうつむき、そう答える。


 簡単に作れちゃうじゃないですか、ってあっさり言うけれどさ……。それってすごい才能じゃないの? 何もない無から自分で歌詞と曲を作ってるんだよ? 立派な創作活動じゃん。それなのに、なんでこの子は自分に自信がなさげなのかしら。


「ミヤっち、最高ぉーーー!!」


「世界一かわいいよぉーーー!!」


「歌声も超キュートだわぁ~!!」


 割れんばかりの拍手喝采が屋上に響く。そして、人々の体からほんわかと明るい光の玉が浮き出てきた。光の玉たちは、ガラスの壁をすり抜けてリング内に入り、ミヤっちの頭上でひとつの大きな光の玉(直径3メートルはありそう)となった。


『みなさーん! ミヤっちの頭の上に注目♪ この光の玉は、ミヤっちがみなさんから集めた信仰心でーす♪ でっかいですねー! うずめさんは、ミヤっちよりもたくさんの信仰心を集めてさらに大きな光の玉を作ってください♪ さもないと負け確定、死亡確定、この世からおさらばです♡』


 死人みたいに青ざめた顔のまま、キャピキャピとした声でそう言う司会のお姉さん。


 信仰心を集めろと言われても……。わたし、体が半分透けちゃっていて、さっきから頭までぼんやりしてきているんですけど……。


「うずめさん! しっかりしてください! 負けないでください!」


「このままではうずめさんだけでなく、サルタヒコさんも救えませんよ!? がんばって立ち上がってください!」


 鈴ちゃんとトヨちゃんが必死になって呼びかける。


 そ……そうだった。猿田くんが命婦に体を乗っ取られたままなんだ。わ、わたしが助けなきゃ……。


「くっ……。か、体が重い……」


 わたしは気力を振り絞り、何とか立ち上がった。でも、霊力がかなり減ってしまっていて、ふらふらだ。こんな状態で歌ったり踊ったりできるかしら……。


「偽女神め、ひっこめーーーっ!!」


「みんな! 胸がないほうが偽者だ! 何でもいいから物を投げてやれ!」


「オオミヤノメ様バンザイ!! 偽女神は地獄に堕ちろ!!」


 ミヤっちを崇拝するデパートの従業員たちは、わたしに罵詈雑言を浴びせ、ジュースの空き缶やバナナの皮、卵など、手当たり次第にリングに投げ込んできた。


「い、痛い! 痛い! な、なんで!? ガラスの壁があるのに、なんですり抜けて飛んで来るの!?」


「またまた言い忘れていたルールがある。このリングは第三者の侵入は許さないが、野次馬の投げた物は普通に通す」


「な、なんでよーーー!?」


「そのほうが面白いから」


「なんじゃその理由は~!!」


「ふはははは! もっと泣け、喚《わめ》け、そして死ねい! ごふっ……!!」


 唐突に吐血するウカちゃん。デパートの従業員の中には食べ物を投げつけている人がいるから、食べ物を粗末にすることが大嫌いな食物神には見ているだけで精神的なダメージが大きいのだろう。もしかして、と思ったらトヨちゃんも血を吐いていた。


「す、鈴ちゃん! トヨちゃんに目隠しをしてあげて! トヨちゃんがまた倒れちゃう! ……い、いたた! 痛い! 痛いってば!」


 誰よ、干物のくさやを投げたヤツは! 体が臭くなるじゃないのさ!


「う、うずめさん! 隠形《おんぎょう》の術で身を隠してください! どんどんエスカレートして、危険な物を投げようとしている人がいます!」


 鈴ちゃんにそう注意されてわたしが従業員たちを見回すと、拳サイズの石を握っている人や、爆竹に火をつけようとしている人までいた。


 ど、どこからそんなものを持ち出してきたのよ!? 物騒すぎるってば!!


「ひ、ひいぃ~!! 隠形の術ーっ!!」


 わたしは涙目でそう叫び、透明人間になった。デパートの従業員たちは「あれ!? 偽女神が消えた!?」と言っておどろく。


 ふ、ふぅ~……。猿田くんから隠形の術を教わっておいて良かったぁ~……。


「人間たちから姿を消したのはいいが、それでどうやって歌うつもりなのじゃ? おんぎょーの術を使っている最中はそなたの姿は人間には見えないし、声も聞こえないぞ。ふはははは! アイドルの審査対決はミヤっちの勝利でけってーじゃな!!」


 口元の血をぬぐい、高笑いするウカちゃん。


 たしかに、ウカちゃんの言う通りだ……。

 でも、姿を見せたらまた物を投げられるし、どうすればいいの?


 ヤバイ……。これは真剣にヤバイよ……。だんだん意識が遠のいてきたし……。


 わたしは、目がかすむ中、ウカちゃんの横で幽霊のようにふらふらと突っ立ている猿田くんを見つめた。


 ああ、猿田くん。お面を外すとやっぱりイケメンだよね。いつも素顔を見せてくれていたら、わたし嬉し……。


「あっ……ダメ。力が出なくて隠形の術がとけちゃう……」


 わたしが再び姿を現したら、また物が飛んでくるだろう。きっと、わたしは人々の罵声を浴びながら、この世から消えていくんだ。


 神様として、一番最悪な死に方かも……。







<雑談コーナー:ミヤっち×作者>


作者

「今回、ミヤっちが歌った歌は書き下ろしだよ! やったね、ミヤっち!」


ミヤっち

「無駄に時間をかけて作詞したわりには、残念な歌詞ですね。これをわたしが作詞したことにされるなんて、屈辱です。精神的苦痛による損害賠償を請求します」


作者

「ひ、ひどい……。気弱キャラなのに、なんで作者の私には辛辣なの!?」

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