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うずめちゃんの神様days!  作者: 青星明良
第1巻 ウェディングドレスですよ、女神様!
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2 危険な転校生?

前回、HENTAI仮面(?)と遭遇し、逃げ出した主人公うずめ。


しかし、その再会は思ったよりも早くにやって来るようです。


では、続きをご覧ください。

「ふひぃ~。昨日はさんざんな目にあったよ……」


 翌日、花美学園に登校したわたしは、教室の自分の机に突っ伏してそうつぶやいた。


「なになに? 福永くんとうまくいかなかったの?」


 グロッキー状態のわたしに話しかけてきたのは、前の席の雪音ちゃん。


 恋バナが大好きな雪音ちゃんは、わたしと福永くんがあれからどうなったのか知りたくてうずうずしていたらしい。


 そういえば、昨日、福永くんに告白されたんだった。その後に起きた出来事が衝撃的すぎて、記憶からぬけ落ちてしまっていたよ……。


「えーと……。好きな人がいるって言って、断っちゃった。福永くんには悪いけれど……」


 隠しても仕方ないので正直に話すと、雪音ちゃんは「ええ!?」と声を上げておどろいた。


「うずめちゃん、好きな人がいたの!? 恋愛の『れ』の字も知らないお子ちゃまが!?」


 おい、こら。さすがにそれは失礼でしょーが。


 しまったぁ……。余計なことまでしゃべっちゃったよ。


「だれ? だれなの? うちのクラスの男子……はないわね。馬鹿ばっかだもん。別のクラスの子? あっ、それとも、二年か三年の先輩?」


 おーい、雪音ちゃん。馬鹿呼ばわりされた男子たちが、こっちをにらんでいるよ?


 雪音ちゃんは普段はいい子なんだけれど、恋愛の話になるとめちゃくちゃテンションが上がるのだ。恋にあこがれるお年ごろってやつだねぇ~。乙女だねぇ~。


 わたしはそんな年寄りくさいことを心の中でつぶやきながら、どう答えたものかと悩む。


 だって、「いつも夢の中で会う人がわたしの運命の人なの」なんて電波な発言をしたら、雪音ちゃんに病院に連れて行かれそうだしさぁ……。


「うずめさん、おはようございます」


 困っているわたしの救いの神となったのは、教室に入って来た愛野あいのすずちゃんだった。


「あっ! 鈴ちゃん、おっはよーう!」


 わたしがぶんぶんと手を振ってあいさつをすると、雪音ちゃんが小さな声でつぶやいた。


「い……いつもの謎の儀式が始まる……」


 鈴ちゃんはわたしの前で姿勢正しく立ち、ぺこり、ぺこりと二回お辞儀。そして、


 パン! パン!


 と、二回拍手をし、またぺこりとお辞儀をした。


「昨日も健やかにすごすことができました。ありがとうございます、ありがとうございます。家内安全、無病息災、交通安全、父の腰痛が治りますように、母が失くした指輪が見つかりますように、姉の結婚がうまくいきますように、うずめさんが今日もわたしと仲良くしてくれますように。どうかよろしくお願いいたします……」


 鈴ちゃんが一心不乱に手を合わせてわたしにお祈りをしている間、雪音ちゃんは、


「ま、毎度のことだけれど、意味分かんねぇ……」


 と、困惑した顔で鈴ちゃんを見つめていた。たぶん、わたしの「好きな人」のことも、鈴ちゃんの朝いちのお祈りタイムのインパクトで忘れてしまっているだろう。


 わたしの幼なじみの鈴ちゃんは、わたしの家の近所にある神社の娘さんなのだ。


 おさげがよく似合う可愛い子で、物静かで真面目な性格……なんだけれど、少し変わったところがあるんだよね。


 鈴ちゃんは、他の子とかには敬語とかじゃなくて普通のしゃべりかたをするんだよ。


 でも、わたしに対してだけは、小さなころから、なぜかずーっと敬語。しかも、幼稚園でお友だちになったばかりのころは、わたしのことを「うずめ様」って呼んでいたんだ。


 何ていうか、崇め奉られている感じ? わたしってば、神様? みたいな。


 「友だち同士で様づけはやめようよ」ってわたしが言ったら、


「そ、そんな……。神社の娘であるわたしが、うずめ様を様づけで呼ばないなんて、万死に値します……! で、ですが、あなた様がそこまでおっしゃるのなら……」


 鈴ちゃんは号泣しながらも、わたしのお願いを聞いてくれて、「うずめさん」と呼ぶようになった。ていうか、幼稚園児が「万死に値する」なんて言葉、よく知っていたものだ。



            ☆   ☆   ☆



「はーい、みんな。朝のホームルームを始めるわよ。席に座ってね~」


 鈴ちゃんの長いながいお祈りタイムが終わると、タイミングを見計らっていたかのように、担任の夏谷なつたに先生が教室に入って来た。


「今日は、みんなにお知らせがあります。一年三組に新しい仲間が加わります」


 うん? 新しい仲間? あっ、転校生か!


 教室中がざわざわとさわがしくなり、「男かな? 女かな?」とささやき合う。


「はいはい、静かにね。では、猿田くん、入って来て」


 猿田くん? 転校生は男の子なんだ。


「イケメン、来い。イケメン、来い。イケメン、来い……」


 前の席の雪音ちゃんが、呪文を唱えるようにぶつぶつ言っている。


 イケメン転校生と運命的な出会いをして、恋人になる妄想でもしているのだろう。


 雪音ちゃん。世の中、そんなにうまくいかないって。あんまりハードルを上げずに、わたしたちの新しいお友だちを歓迎しましょうよ。縁あって出会った仲間なんだからさ。


 わたしがそんなふうに心の中でつぶやいていると、転校生が教室に入って来て、わたしたちにあいさつをした。


「転校生の猿田さるた彦之進ひこのしんだ。人間たちよ、今日からよろしく頼むぞ」


 なぜか上から目線。しかも、「人間たちよ」って、あんたは人間じゃないのかとツッコミたくなる。まあ、それはこの際、別にいいとして、問題なのは彼の顔だ。


 雪音ちゃんが期待していたようなイケメンだったかって? それは分からない。なぜなら、転校生くんはお面をしているのだ。そう、天狗のお面を!


 こいつは……こいつは……き、昨日の……。


「HENTAI天狗仮面っ!!」


 わたしはそうさけぶと、イスをガタン! と後ろに倒して立ち上がり、プルプルと震える指先で転校生を指差した。


 今日は山伏みたいなかっこうじゃなくて制服を着ているけれど、まちがいない!


 わたしが折ったはずの天狗の鼻は、修理したのか元に戻っている。でも、そんなお面をして外を出歩く変人なんて、世の中にそんなにたくさんはいないはずだ!


「あんた、なんで学校にまで来て、お面なんてかぶってるのよ!」


笑美えみさん、さわがしいですよ。猿田くんとお知り合いなの?」


 夏谷先生が首をかしげて、わたしに聞く。


 先生、疑問に思うのはそこじゃないでしょ! 転校生の顔を見てくださいよ! 学校で天狗のお面なんかをかぶっていますよ? 注意しなくてもいいの?


 ……あれ? そういえば、わたし以外のクラスメイトは、転校生が天狗のお面をしていることに対して、だれもつっこまないぞ?


 なんで? もしかして、お面をつけて登校するのが最近の流行だったりするの?


 イケメンを期待していた雪音ちゃんはどうなのよ? 転校生、イケメンどころか天狗のお面をした変人だよ?


「ふーん。まあまあね。ちょっと鼻が高くて外国人みたいなのがプラス点かなぁ」


 いやいや! あれは天狗のお面だから! 外国人も、あそこまで鼻高くないし!


 わたしがパニックになっていると、転校生の猿田くんは、わたしをさらにパニックに陥れる爆弾発言をした。


「オレとうずめは、お知り合いどころの関係ではない。永遠の愛を誓い合った夫婦だ」


 猿田くんがそう言った直後、教室は騒然となった。


「う、うずめちゃん、結婚していたの? 好きな人がいるとか言っていたけれど、彼氏どころか旦那さんがいたなんて! お子ちゃまだと思っていたのに、人妻だったのね!」


「中一で結婚とか、大人の階段のぼりすぎぃ!」


「ウソだろ、笑美! 福永が玉砕ぎょくさいしたから、次は僕がアタックしようと思っていたのに!」


 雪音ちゃんを始めとするクラスメイトたちがギャアギャアとさわぎ、夏谷先生は猿田くんの結婚発言によほどショックを受けたのか、顔は真っ青でぼうぜんとしている。


「あと三か月で三十歳のわたしがまだ独身なのに、教え子に先を越されるなんて……」


「先生、落ち着いてください! 日本の法律では、男は十八歳、女は十六歳になるまで結婚できないんですよ? 十三歳のわたしが結婚するわけないじゃないですか!」


 わたしは大声で必死になってそう言い、教室の混乱をしずめようとした。


 でも、教室をパニックにさせた張本人である猿田くんは、


「愛の前では、年齢、家柄、生まれた国のちがいなんて関係ない。オレとうずめの愛は、そんなつまらない障害、何千年も昔に乗り越えているんだ」


 などと、火に油を注ぐような発言をまたもやしたのだ。


 これには、わたしもとうとう切れてしまいましたよ。ええ。プッツンとね。


「何千年も昔って、わたしとあんたは、昨日会ったばかりでしょうがぁぁぁ!!」


 わたしは、教壇に立っていた猿田くんのところまで助走をつけてジャンプ! 空中からのかかと落としを食らわせた!


「ああーーーっ! また鼻が折れたーーーっ! うずめ、おまえはいつからそんなにケンカが強くなったんだぁ~!」


「武術の先生をやっているお父さんから護身術を習ったのよ!」


「かかと落としって、護身術!?」


「そ・ん・な・こ・と・よ・り!!」


 わたしはギロリと猿田くんをにらみ、ビシッと指差した。


「わたしとあんたは、赤の他人! 夫婦なんかじゃないの! いい加減、変なことを言うのはやめてちょーだい! いーい?」


「だ、だが……オレたちは本当に夫婦……」


 ギロッ!


「わ、分かった……。人前ではもう言わない……」


 「人前では」って、二人きりになったりしたら、言うんかい!


「……完全に記憶を失ってしまったのか。しかし、元気いっぱいで勝気なところは、昔のうずめのままだ。また会えてよかった……」


「? ……いったい、何を言って……」


 またおかしなことを言っていると思い、わたしは猿田くんを見た。その時、天狗のお面からのぞく彼の目とわたしの目がパチリと合い、


(あっ……優しそうな目。どこかで見たような……)


 一瞬、そう感じた。何だろう、この懐かしい感覚は……?


 もしかして、わたしと猿田くんは初対面じゃない? 小さいころに会っている?


 そ、そんなわけないよ。だって、こんなインパクトのある子、出会っていたら忘れるわけないし。でも……。


 ううっ、突然、頭が痛くなってきた。な、何よ、これ?


 わたしが頭痛に苦しんで頭をおさえると、猿田くんがわたしの肩にポンと手を置いた。


「大丈夫だ。オレが、必ず思い出させてやる」


 お、思い出すって……。な、何を……よ?

<うずめの一口メモ>

かかと落としは護身術だよ。お父さんが言っていたもん。

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