プロローグ 帰ってきた女神様
読者のみなさん、お久しぶり~! わたし、笑美うずめ! チアリーディング部に所属する元気な中学一年生!
あと、ここだけの話だけれど、神様やってます。神様だった頃の記憶はまだぜんぜん思い出せていないんだけれど、アメノウズメっていう女神様らしいのよ。
しかも、夫持ち(゜д゜)!
アメノウズメの夫サルタヒコ……わたしは猿田くんと呼んでいるけれど、こいつが天狗のお面をしているとっても変てこな奴でさぁ……。まあ、悪い人間(じゃなくて神様か)ではないし、素顔はわたし好みのイケメンだから、今のところ「友達以上恋人未満」みたいな距離感で仲良く(?)してあげているけれどね……。
これ以上の細かい説明をするのは苦手(というか、めんどー)だから、今回のお話を読む前に第1巻の「ウェディングドレスですよ、女神様」を読み直して復習しておいてね!
☆ ☆ ☆
「そろそろ来る時間か……」
夏休みが始まってから三週間ほど経ったある日のこと。
わたしは、自分の部屋でそわそわしていた。
今朝、鈴ちゃんちの神社に住んでいるわたしの神使・神鳥半蔵(オスのニワトリ)がやって来て、
「サルタヒコ様が大事なお話があるから、お昼過ぎの一時半にこちらへお邪魔したいとのことですコケ!」
と、わたしに伝えたのだ。
「夏休みに入った途端、わたしを置いてどこかへ旅行に行っちゃったくせして、急に何なのよ。ああもう、大事な話って何かしら。気になるなぁ~。あいつ、ケータイを持っていないから連絡つかないし……」
わたしは、部屋にゴミが落ちていないかチェックしつつ、部屋の真ん中で児童小説を読んでいる半蔵のまわりをぐるぐると歩き回った。
「うずめ様、少し落ち着いてくださいコケ。離婚しようとかそういう話ではないと思うから、心配しないでいいコケ」
「べ、別にそんな心配してないわよぉ! 第一、この間やったダブル結婚式は奏さんとオリバーさんのためだったし、わたしはまだ神様としての記憶が戻ってないからあいつのことを夫だと認めたわけでは……」
「うずめ様、顔が真っ赤コケ~。ぷぷぷ、これがいわゆるツンデレというやつですねコケ!」
「唐揚にするわよ、こいつーーー!」
ぷっつんと切れたわたしは、右足をぐわっと頭上に上げ、かかと落としの態勢をとった。
「お父さん直伝、かかと落としーーーっ!!」
「それ、護身術じゃなかったんですかコケ!?」
半蔵の脳天めがけて足を振り下ろそうとしたその時――。
「邪魔するぞー」
突然、部屋の窓がガラリと開き、天狗のお面をかぶった猿田くんが入って来たのである。
スカートで大胆に足を広げていたわたしは、思わずその姿勢のままピタリと止まってしまった。
「ふむ……。中学生のわりにはなかなか大人っぽい……」
「ジャンピングかかと落としーーーっ!!!」
「うぎゃぁぁぁーーー!!!」
ベッドの向こう側の窓へと飛んだわたしは、黄金の右足を猿田くんの天狗の面へと打ち落とし、怒りの一撃を炸裂させた。
「また鼻が折れたぁーーー!!」
天狗の鼻がべきりと折れると、猿田くんは悲痛な叫び声とともに窓から落下するのであった。
…………あっ、ここ二階だった……。
<雑談コーナー:うずめ×猿田>
うずめ
「児童小説でパンチラはあかんだろっ!!」
猿田
「角川つばさ文庫の『こちらパーティー編集部っ!』の主人公ゆのは、転校初日に学校の不良キャラにパンツの柄を見られて、以降そいつから『いちごパンツ』と言われ続けているから問題ないだろ。たぶん」
うずめ
「そういうところを参考にするなよ、作者っ!!」