『黒歴史ノート』 ~直哉の章~ 序
世の中には、不思議な事もあるらしいな。
この前の『ファイナルクエスト』もそうだったが、今度の『ファンタジースターオンライン』もだ。
まあ、一番不思議なのは、俺達の『黒歴史』を記した『ノート』なのかもしれないな。
ぶぉんっ
巨大な棍棒・・・の様な武器が振り下ろされる。
「くっ」
俺は、愛用の大剣・・・『覇皇龍斬剣”戒”』でパリィする。
「洒落にならねぇな。」
パリィが成功したのにも係らず、俺のHPは削られていた。
『サイクロベータ』
惑星『アース』を侵略する『ベータ』の前線基地のボスキャラだ。
・・・ここは、ゲームの世界。
俺・・・直哉と妹の香織が昔はまっていたオンラインゲームの世界だ。
そのゲーム・・・『ファンタジースターオンライン』は、誰にもクリアされる事が無く、サービスを終了した。
俺と妹が・・・仲間達が夢みた物語の終わりは訪れなかったのだ。
そのゲームの世界に俺は居た。
原因はおそらく『黒歴史ノート』。
俺と妹がクリアされること無く終了した物語の続きをノートに書き、妄想した世界。
以前、終わらせた夢『ファイナルクエスト』に続く2冊目の『黒歴史ノート』その世界なんだと思う。
ぶんっ
今度は、棍棒を横に薙ぐ攻撃。
俺はステップで回避し、攻撃の隙にスキルを叩き込む。
「グランドクロスッ」
横斬り→縦斬りと繋ぐ中級攻撃スキル。攻撃後の隙が小さいのが特徴だ。
一人で戦っている俺は、隙の多いスキル=高威力スキルが使えない。
ここで死ぬ事が現実とリンクする・・・かは分からないが、死んで試す気は無い。
「くそっ・・・香織が居れば、魔法での援護があるんだがな・・・」
妹の香織は、『紅蓮の魔術師』と言う二つの名を持つ程の魔法の使い手。
香織がいれば、高威力スキルの後の隙を魔法で補ってくれる。
俺達二人は、そうして数々のクエストを攻略してきたのだ。
「ちまちま、やるしかないな・・・」
俺は、1時間程掛けて『サイクロベータ』を撃破した。
「やはり、生身でオンラインゲームはキツイ・・・」
「中学時代、剣道部でもなのに竹刀を振っていたのが役に立つとはな・・・」
「何にしても・・・」
拠点を攻略しつつ、妹と合流する。それが先決だ。
一つ目の前線基地を攻略した俺は、近くの町へと向かった。