『船幽霊(もうれんやっさ)』 ~海魔の章~ 序
世の中には、不思議な事はごまんとある。
人間からしてみれば、うちら海魔も不思議やろ?
うちらにしてみれば、人間だって不思議なんよ??
でも、この海底にある謎の『楔』は・・・??
(クラーケン様。東の海で変なモノが見つかりました。)
(それが、良くないモノを引き寄せているようです。)
亀の海魔が言った。
ここは、海底。
うちら精霊・・・海魔なんかは、此処でひっそりと暮らしている。
其れを脅かす脅威は、海魔の主たるうちが取り除かなければいけのよ?
(東の海・・・地上には『桜』がある・・・華音様の居る所の近くやねぇ?)
(皆には、近づかないよう、命を出しておいてね?)
(うちは、ちょっと様子を見てくるわぁ〜)
亀の海魔に言うと、うちは泳ぎだす。
うちの泳ぎなら、どこでもあっという間に到着する。
勿論、海の中なら・・・やけどね?
・・・
・・・
・・・
(なん・・・これは?)
其処には、『楔』のようなモノ
『霊石』の一種の様に思われる。
そして、其処に集まる無数の船幽霊。
何か良くない事が起こっているのは確かやね?
(しっかし、コレは・・・)
うちらでは、手がでん。
霊的なモノを引き寄せる『霊石』・・・の様なモノであるコレは、うちらにどんな影響を及ぼすか分からん。
触らぬ神に・・・と言いたい所やけど、海の中にこういうモノがあってはいかんのよ?
華音様にお願いしてみようかねぇ・・・
と、その時。
うちを呼ぶ声が聞こえる。
(クラーケン。すまないが、頼みがある。)
(ちょっと、此方まで来てくれないか?)
それは、華音様の声。神楽。
図ったような、タイミングやね。
(分かりました。今、行きますよ?)
うちは、地上に向かって泳ぎ始めた。