『願いが叶う壺』 ~香奈の章~ 終
長い坂道を登り、校門をくぐり3階まで階段。
やっと到着した教室に入ると、私は無言で席に座る。
鞄から文庫本を取り出し、読み始める。
・・・私は、華音さんと花子さんに助けられた。
何故、会ったばかりの私にこんなにも良くしてくれるんだろう?
無意味な・・・そう、何時もの何も無い毎日を過ごすだけの私に・・・
「ちっるまちゃんニュース!」
「です。」
「はぁ・・・朝から元気ね二人とも。」
双子達の騒がしい声が聞こえた。
誰にでも気さくに話せる双子達。
あの子達なら・・・私の友達になってくれるかもしれない。
もう、何も無い毎日何てイヤ。
これは、華音さんや花子さんがくれたチャンスなのだと・・・
私は、ぎゅっと手を握りしめ・・・
「あの・・・何か面白い事でもあったの?」
勇気を振り絞って話しかけた。
「お、文学少女の香奈ちゃんが食いついてきたね?きたんだね?」
「姉さんくどいです。」
「桃井さん、何時もの与太話だからスルーしていいんだよ?」
「かおりんヒドッ!!」
「ぷっ」
私は思わず吹き出してしまった。そして・・・
「あはっあははははは・・・」
思いっきり笑った。
きょとんとする3人。
「あ、ご、ごめんなさい。」
「とても、おかしかったの。」
「へ〜桃井さんってそんな風に笑えるんだね。」
あ、確かに人前で笑うなんて・・・なかったかもしれない。
「かおりんが、香奈ちゃんを口説いている。」
「これは、ニュースですね、姉さん。」
「ななななな、なんでそうなるのよ!!」
顔を赤くして否定する新城さん。
私はまた笑った。
やっぱり、この3人と友達になりたいっ
「楽しいっ」
「こんなに楽しいの久しぶり・・・」
「・・・ねぇ、高木さん達に新城さん・・・」
「わた・・・私と友達になって貰えませんか・・・?」
言って私は俯いてしまう。
「「「ぷっ」」」
「「「あはははははは」」」
今度は3人が笑う。
「なに言ってるの?香奈」
「そうですよ、香奈さん。」
「うんうん、もっかなー」
「へ?」
多分私は変な顔をしていたと思う。
「だって、友達に友達になってって言われてもね?」
「私達は、もう友達でしたよ?」
「そうそう、これからは毎日、とびっきりのニュース聞かせちゃうからね!!」
笑いながら・・・泣いた顔。
「ところでで、もっかなって何ですか?姉さん?」
「も(もい)かなだから、もっかなーだよ!」
「それって、あだ名?」
うれしいっ
私、初めてあだ名着けて貰った・・・
「それと、香奈。」
「苗字禁止だから・・・ね?」
「・・・うんっ香織ちゃんっ知真ちゃんっ葉和ちゃんっ」
これも、華音さんと花子さんのおかげ。
そうだ、今日お礼を言いにいかないと・・・たしか神主さんが好物は『さのや』とか言っていた気がする。
この日私に、本当の友達が5人も出来た。