*見てしまった*
雄也side*
部活が終わり、家路につく
桜井とけんかしてからは、できるだけ早く部室を出て、1人で足早に帰っている
桜井に会ったらまたなにか言ってしまうかもしれない
これ以上、嫌われたくない
今日はちょっとだけ部活が延びたから焦る
でも前に桜井と会った電車はだいぶ遅かったから大丈夫だろう
いつものようにiPodを取り出そうとすると、
前方に橘がいるのが見えた
そしてその隣には
桜井がいた
2人は見つめあって赤くなってて
夕日に照らされて
どう見てもいい雰囲気だった
すると、急に橘が桜井を抱きしめた
俺には桜井が抱きしめられている時間が
とてつもなく長く感じた
2人は離れると、
橘がなにか言った
桜井は
泣いてるみたいだったけど
笑顔で頷いてた
俺はその場を動けなかった
気づいたら涙が流れてた
止まらなくて、
近くの路地に駆け込んで、
夕日が沈んで暗くなるまで
泣きつづけた
話し声は聞こえなくても、
橘が告白して、
桜井が嬉し泣きしながらOKしたんだろうってことは、
分かった
たとえ仲直りしたとしても、
桜井はもう
俺の隣には戻ってこない
なんならいっそ
離れたままの方が
俺はいい
***
夜遅くなって
俺は家に帰った
泣き腫らした目を家族に見られたくなくて
ただいまと言うだけ言って
すぐ自分の部屋に入った
夕日に照らされた
頬の赤い桜井の笑顔は
すごくきれいで
でも俺は遠くから
横顔しかみることができない
あの横顔が忘れられなくて
また胸が苦しくなる
すると
"ピロリン ピロリン"
メールの着信音
差出人は
桜井だった
『坂本に話したいことがあるの
明日、会えませんか?』
話したいことって…
"わたし、健人くんと付き合うことに決めたの"
桜井の声が聞こえてくるようで
胸がしめつけられる
「んなの、行けるわけねーじゃん………涙」






