表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

春:出会いの季節

作者: 音羽

 私には前世の記憶の断片のようなものがある。

 その断片の中の私は白いパジャマのようなものを着ていて

 真っ白な部屋の真っ白なベットの上にいる。

 時折、ピッピッピッという機械音が聞こえる。

 そこで私は1人の少年と向かい合い、話をしている…

 本当に断片で、それ以外になんにもない…



桜もまだ蕾の四月、私は新しい学校で新しい生活をしようとしていた。

私の親は私が進学するのを機に私を転校させ、共に引っ越した。

私にとっては、いつ引っ越そうと関係なかった。

どっちにしろ、会えなくなるものは会えなくなるのだ。


しかし、学校の雰囲気的にはこっちの学校の方が気に入った。

前の学校は生徒が多かった。それなのに掲示物は多くても3つか4つで

壁の装飾も少なかった。しかし、今回の学校は、生徒が少ない割に

掲示物や装飾が多く、あたたかみに溢れている。


生徒も転校生の私を気にかけてくれたが、私にとっては苦痛であった。

気を使われている分、こっちも逆に気を使わなくてはいけない。余計に疲れる。

 そんな生活が2~3週間続いた。桜は満開を迎えた。

私はもともと、体が弱い(ここに引っ越すことになった原因の一つ)。

そのため、体育の時は教室で次週になる。時々、先生が見に来るが基本的には独りだ。

そんなときは窓の外を見る。桜が降っている。


 ふと、ある机の所で私の視線が止まった。その机の上にはノートがあった。

表紙には、白地に薄桃色の桜が水彩画風に書いてある。この席の主は男だった気がするが…。

とりあえず、ノートを開いた。不思議と「盗み見をする後ろめたさ」は無かった。

そのノートには女の子らしい丸字で小説が書いてあった。どれもこれもファンタジーだった。

とても面白い話だった。次々とページをめくり、読んだ。しかし、物語は途中で終わっていた。

何ページも何ページもめくったが、真っ白だった。

そして、裏表紙にあとがきのようなものが書いてあった。

「ごめんね、最後まで書けそうにないよ。次、会う時までノート、持っててね。また書くから」

それを読み終え、ノートを閉じたとき、生徒が戻ってきた。

そして、ノートの主はノートを見つめ、ゆっくりとカバンにしまった。


そして、主は私に向かっていった。

「続き、書いてくれるかな?」



            春は出会いの季節だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ