発見 (5)
モハメドへ話をつけに行ったのは、もちろんルカとカイン。瀬十菜の案は多少の反対はあったものの、なんとか決行へとこぎつけた。
しかし全員が口を揃えて言ったことは、「そんなことができるのか?」
なおも疑うレジスタンスの面々に証拠を見せようかとしたところ、意外にもモハメドは「その必要は無い」と言った。珍しいこともある。
(あいつなら絶対文句言うと思ってたのに)
決行当日。
砂漠には滅多に降らないのに生憎の雨―――ではなく、雨の日を狙って作戦を立てたのだ。奇襲などでなく、正面衝突をわざわざ選んだ。ルカ曰わく、「一発でやるならば奇襲は駄目」ということらしい。
レジスタンスの面々は真っ向勝負など初めてで、どこか落ち着かない。
Far Eastの面々は彼らを先導するような位置に配置されている。
戦闘開始の合図は一発の大砲。全員がその音を聞こうと耳を澄ましていた。
その頃、瀬十菜は戦場から少し離れた、ちょっとした丘へ来ていた。ここからだと戦場全体を見渡せる。
「道案内ありがとう」
瀬十菜は丘まで連れて来てもらった女性、ミンファに礼を言った。彼女はキャンプのリーダーで、故郷がこの辺だと言い、自ら案内役を買って出たのだ。
「別に。ただ故郷が見たかっただけ、焼かれてしまったけど」
そう言ってミンファが指した方角は遠目でも分かるほどにその一帯は炭と化していた。
しかし今回、この丘に来た目的は彼女の焼かれた村を見るためでなく、作戦の一部を実行するためだ。
ミンファは瀬十菜に尋ねた。
「それよりあなたどうやって戦うの。まさかここから火矢でも打ち込むわけ?」
「惜しいね。まぁ発想としては間違ってないけど」
ここから火矢を打ち込められない、ということは無いだろう。だが、それはかなりの強弓と豪腕が必要である。残念ながら瀬十菜はそのような腕も武器も持っていない。
では、どうするのか。
「ミンファは『雷』を見たことがあるか?」
「『雷』はあなたが使う『武器』でしょう?私が見たことあるわけ無いじゃない」
「先に見せてあげる」
瀬十菜は左手を空に突き上げて、人のいない砂地に体を向けた。
突然周囲が明るくなり、頭上を一本の稲妻が走る、と同時に空が轟いた。
雷が落ちたのは、ほんの一、二㎞先だ。
どうだ、というふうに瀬十菜は得意気な顔をしてみせる。対照的にミンファの顔は青ざめている。
「こんなの、あっ、当たったら死んでしまうじゃない!」
この国の人たちは、『雷』を見たことがなかった。
「大丈夫だよ、もっと威力が小さいのを投げるから。今のはちょっと大きかっただけ」
「でも、人は殺さないって約束―――」
「もちろん、人は死なせない。たとえそれが味方だろうと敵だろうと」
さっきまでの笑みは消え、代わりに真剣な顔を浮かべる。
「誰であっても死ぬことは許さない。絶対に」
一方、政府軍の天幕では、一人の男が喚いていた。
先程の瀬十菜が放った雷にえらくご立腹な様子だ。
「さっきの音は何なんだっ!奴らは何を企んでいるのだ!」
男をなだめるのは二十歳前後の青年だ。
「ただの雷ですよ、将軍様。こういう雨の日には稀に落ちるのです。ご存知なかったでしょうか?」
「……いや、久しく聞いてなかったから驚いただけだ」
ふふっと笑うと青年は男の耳元で囁いた。
「我々Far Eastがついているのですから」
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文法や敬語がおかしかったりするのですが、
感想などいただけたらうれしいです(*^▽^*)