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Far East  作者: 桃川千鶴
5/9

発見 (4)

 翌朝、朝食を食べに野営地に行くと既に大勢の人が集まっていた。

 昨日の騒動を見た人も多いのだろう、瀬十菜が現れるとヒソヒソ話始めた。

「女性って噂話が好きですよね」

 瀬十菜と一緒に来ていたカインがそう呟いた。

「まぁ性分なんでしょ」

 さらりと受け流して朝食の列に並ぶ。

「私はするべきことをしただけだしね」

 朝食を受け取ると、自分のテントに戻って行く。道半ばで振り向くと悪戯に笑いながら言った。

「今日の話し合い二人にお願いするから」

「何言ってるんですか!!ルカ様はともかく、僕にはそんな権限なんてありません」

「別にいいじゃん。私昨日のアイツ嫌いだから見たくもない」

 手をひらひら振るとテントの中に消えていった。


「瀬十菜様、本当に行かれないのですか?」

「ルカに任せる。私よりもあなたのほうが上手くやるでしょ」

 少々ひねくれてるのは自覚しながらルカを追い払おうとした。

「その代わり、なめられないようにして」

「もちろんです。ご心配には及びません」

 サッと敬礼の姿勢をとると、そのままテントを出て行った。

 時々、本当に彼が自分よりかなりの年上なのだとは思えないことがある。

(私のおじいちゃんより年上だったっけ)

 彼は天宮をとても信頼して、この仕事をしているんだとつくづく思った。


「将軍は参加しないのですか?」

 会議室、と言ってもやはりテントなのだが、レジスタンスの主要人物である面々が揃っていた。

 案の定、瀬十菜がいないことに冷やかしを込めた口調で聞いてきた。

「瀬十菜様は昨夜の騒動で忙しく眠れなかったようで、自室にてお休みになられています」

「戦場では寝る暇など無いですよ?」

「ええ、だからこそ眠れるときに寝るんですよ」

 穏やかな顔で返したルカの眼は鋭かった。それには気づかない1人がボソッと呟いた。

「所詮はお飾りの将軍でしょう」

「そうお思いなさるなら」

 そう言ってルカは席を立つ。

「あなた方とはここでおさらばですな」

「あっ、いや……」

「お飾り将軍とはいえ援軍を率いたことに感謝するべきでは?」

「っ……、申し訳ございません」

 ルカの“氣”に当てられた男は、何かとてつもなく大きな地雷を踏んだのだった。


 一方で、ルカとカインを送り出した瀬十菜は、寝ているわけではなかった。

「アリスに電話しなきゃ」

 自分の端末機をカバンから取り出すと電話帳からアリスを探す。発信すると二コールぴったしで相手が出た。

『はい、瀬十菜様。どうされましたか?』

「昨日の少年なんだけど、叔父さんにお願いして世話見て貰って」

『叔父さまとは陽一様で?』

「じゃなくて、真さんのほう」

『……そうですか。ご主人様には――』

「内緒にして!お願い!」

『わかりました。それでは』

 珍しくアリスが先に電話を切った。

(まぁ、あのお願いは無理を言ったからちょっと怒ってたのかも?)

 それにしても、

「真さんって未だにみんなから嫌われてるのかなぁ」

 真さんは瀬十菜の母の弟で、昔はよく遊びに来ていたのだが、ある事件で天宮の敷地から十年追放になったのだ。既に十年経っていたが、タイミングを掴めず、それから一度も会ってはいなかった。

「私も久しぶりに会いたかったな」





「瀬十菜様、今戻りました」

 昼を少し過ぎた頃にルカとカインが帰ってきた。

「体調はいかがです?」

「大丈夫。でも食欲ないから昼はいらない」

「そうですか。では、我々で食事に行きます。せめて栄養補給はしてくださいね」

「うん」

 二人が居なくなると、冷蔵庫から輸血パックを一つ取り出した。封を破り、それをチューチューと吸う。

(やっぱり不味い)

 新鮮な血に比べたら味が落ちるのは仕方ないが、何もここまで不味くなくても……と思う。

 そんなことを考えながら、さっきルカが置いていったものに目を通す。丁寧なことにボイスレコーダーまである。再生すると先程の話し合いの様子が全て解る。ボイスレコーダーを聞いていると二人が帰ってきて、いきなりカインが叫んだ。

「あ――――!!」

 そしてすぐさま瀬十菜からボイスレコーダーを奪い取った。

「ちょっ、何すんの」

 瀬十菜が抗議し、一連の動作を見ていたルカがカインをはたいた。

「何をしているのですか」

「だってさっきのあれ――」

「とっくに消しましたよ」

 呆れて何も言えない、という感じだ。

 そんな中、瀬十菜は二人の会話を全く聞いておらず、何か考え事をしている。

「ルカ」

「はい?」

「私一回でこれを終わらせる方法思いついたんだけど。雷を使えば一発でね」

 瀬十菜が話しだすと二人は黙って聞き、話し終えるとルカはすぐにモハメドの所へ行った。

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