Apocalypse
「……やあ、大天使の皆さん。忙しいところを急に呼び出して悪かったよ。さて、全員揃ったね? じゃあ始めよう。
そう、その話さルシフェル。新たに誕生するモノについてなんだけど、とても素敵な姿をしたモノだそうだよ。……ん? ああ、そうだねぇラファエル。四つ足でもなく、枝葉もなく、君達と同じような形をしている。決定的な差異は――彼らには翼がないらしい。……ウリエル、ご明察。故に彼らは君達のような“能力”を持っていない。翼は、ちからの源だものねぇ。
なんだい、ガブリエル? うん……いや、違うね。炎からじゃなくて“土”から創られたと主は仰っていた。あの気まぐれな大地の子だってさ。はは、彼らも気まぐれに違いないよね。
おっと、話がずれたね。
それで、どうして君達を呼んだかっていうと、もちろん《祝福の儀》に関することなんだけど。生まれてくる彼らはどうにも“無垢”過ぎるらしいんだ。いわば白紙。そこで君達には何か特別な捧げ物をして欲しい。……何か言いたそうだね、ミカエル。全員呼んだのだから、わかるね? 今回の《祝福》は全員に行ってもらう。
えぇ? ああ、それか。うん、“捧げ物”で間違いないよ。主がそう仰った。だからさ、要は――
彼らを、天使より上位に置くってことだよ。
ふふ、初めてだねぇ。でも主が仰ったんだもの。説明なんて求めない方が賢明だよ。僕は《器》だからね、情報は限られている。
ああ、名前を伝え忘れてた。その新たな種の名は、《人間》、というみたいだ。意味? さぁねぇ、そこまでは。
さ、御言葉は理解したね? 《祝福の儀》は明日。またこの部屋に集まってくれればいいよ。きちんと、何を捧げるか考えてきてね。主の大事なモノだから。
……ルシフェル? 大丈夫かい、顔色がよくないけど。ん? ああ、それは当然さ。君が主の御言葉を疑うなんて、らしくないなぁ。
そうそう。彼らについては《祝福》が終わって用意が整ってから、他の天使達にも正式に通達して御披露目する。それまでは他言無用だよ。
――さあ、それじゃあ解散だ。君達の最高のお祝い、僕も楽しみにしているからね」
覆いが取り払われた時、後に残ったのは【啓示】と、噛み合った歯車の軋み廻る音。