02:Einleitung und Schluß
沙耶から荷物が届いた日の夜に不思議な夢の中で俺は知らない場所にいた。
水に浸かった崩れたコンクリートのビルの上に俺は立っていた。俺はある一点を見つめている。見つめているところにはパーマのロングヘアーもワンピースも肌も真っ白の少女、ただ瞳のだけがどこまでも蒼かった。
「きみはうんめいはしんじるてるのかな」
感情のない表情と声で少女は言う。
「ほんとうだったらねうんめいはおわるはずだったの。でもねそれはかのじょはのぞまなかった」
淡々と言う少女に俺はただじっと見てるだめだった。
「かのじょはだいすきなかれのにちじょうをゆうせんした」
悲しいのか少女は蒼い瞳を細める。そして俺に一歩ずつ近づいてくる。
「そしてうんめいはちがうほうこうへとうごきだしたの」
そして少女は微笑んだ。
そこで俺は目を覚まし朝を迎えた。いつもの時間に起きて制服に着替えていつものように朝食を食べて学校へと向かう。ただ違うのは昨日、彼女から届いた小さなガラスの鐘を大事にバックに入れていることだ。沙耶から最後に貰ったモノということでなんとくなく昨日よりは少し気持ちが楽になっている自分に少し呆れた。
放課後。俺は真っ直ぐとは帰らず世朶通りから外れにある川のほうへと向かう。此処は沙耶との思い出の場所の1つで、よく2人で一緒に此処を通って下校していた。
『朱根くん』
少し頬を赤くして微笑む沙耶の顔がキレイで可愛くて、俺の名前を紡ぐ声がくすぐったかった。
「沙耶」
俺はあの小さな鐘をバックから出して眺める。そして鳴るはずもない鐘を横に揺すった。
でも・・・・・・
リーーーン
「!」
ビックリした。中の細い棒がついてないのに何故か鐘が美しく響くのだった。確かに鐘からあの音がした何で?鳴るはずがない鳴るはずがないのに・・・もう一度、中を見る。だけどその中は空っぽで何もない。
「何だったんだよ・・・」
鐘をまたバックの中に大事にしまうと家へと帰るため川に架かった橋にある信号を渡るといつもの景色ではなく今まで見たことないほどの美しい処だった。
石畳の建物、遠くから聴こえてくるボーンボーンという低い鐘の音、夕日よりも真っ赤な空、俺の目の前には黒いコートに白いマフラーのようなものを首に巻いる格好をした黒髪に青い瞳の少年が右手に銃を持って立っていた。
「おまえにたくしていたのか」
「・・・?」
少年の蒼い瞳を見た時、夢の中に現れた白い少女のことを思いだした。少年か感情のない声で銃を持っていない左の掌を前にする。
「それをわたせ」
「何をだよ」
「べるだ。おまえのようなやつがもってていいものではない」
「は?」
べる・・・沙耶から届いた鐘のことを言ってるのか?何で俺が鐘を持ってることを知ってるんだ誰にも話していないはずなのに・・・。
「お前が何で鐘のことを知ってるんだよ」
「わたすきはないということか・・・だったら」
少年がそう言うと俺に右手に持っていた銃を俺に向ける。少年の雰囲気からするとこの銃は本物で本気で俺に撃つ気であること分かるけど俺はどうしても沙耶からの鐘を渡したくないと思いが強くバックの紐を強く握る。少年の蒼い瞳は揺らぐこともなくただ俺を見つめている。
「止めなさい」
後ろから凛とした声が響く。少年は声のした俺の後ろほうを見ると少し顔が歪んだような気がした。
「これは私の命ではない。櫓木さんの命よ」
「ろぎの・・・」
俺は首だけを動かし振り返ると長い黒髪、黒縁メガネ、ムスッとした表情で同じ高校の女子の制服を着た
背が高い女子が死神が持っているような黒い鎌みたいなものを持って立っていた。そいつの顔をみて俺は声を出して驚いた。
「お前はっ」
「・・・アンタが持っていたのね」
「何でお前が此処にいるんだよ!」
俺は制服を着た女子のほうに体ごと振り返り睨む。コイツは沙耶と友達だった櫻谷 智鶴。 沙耶が亡くなる前に突然、転校していってしまってそれ以来行方を知らないままだった。
「それはこっちの台詞だよ。まぁあの鐘を使ったらなら分かるけどね」
「どういう意味?」
「何も知らないか・・・」
櫻谷がため息を吐くと此処について話し出した。
この世には見えないが隣り合っている2つの世界があるらしい。1つは俺とかが普通に暮らしている【現実の世界】。もう1つはいつも空が夕日のよりも赤い空ということで【茜の世界】と呼ばれるのだという。
「茜の世界の行き方は簡単で専用のドアで行き来できるの」
茜の世界に行けるドアが突然、出来るらしくそれに気がつかない一般人がいてたまに迷い込む人もいるらしい。
「この世界に迷い込んだ人を私たちは迷い人と呼ぶ」
「じゃぁ俺もそれか」
「・・・ちょっと違うわね」
「どいういう意味だよ」
「その鐘でアンタは自分の意思で此処に来たのよ」
俺が持っている鐘はロストベルと呼ばれる特別なモノでドアなどなくても茜の世界に行き来ができるのだという。
「凄いんだな。この鐘」
「そうね・・・・・・他にも使い方はあるんだけどね」
「何か言ったか?」
「いや何も言ってないけど」
どこか誤魔化すように他に質問はないかと櫻谷が聞く。俺は一番、気になっていたことを櫻谷に質問する。
「沙耶、楠原 沙耶は何処にいる」
「・・・・・・」
「事故死って言ってたけど違うんじゃないか?」
ずっと疑問に思っていた何で沙耶が死んだのか事故死のはずだから新聞やテレビでされるはずのニュースはなかった。もしかしたら沙耶は生きているじゃないかと疑問に思ったこともあった。沙耶と友達であった櫻谷なら何か知ってるじゃないかと思って聞きたかったことだ。
「・・・・・・さぁね」
「何でも答えてくれるじゃなかった?」
「“何でも”なんて言った覚えはないよ」
「ふざけんなっ!」
「はなしはもういいか?」
そっけなく言う櫻谷に苛立っていると後ろにいた黒い少年が俺達の間に入って来た。右手にはもう銃はなくなっている。
「いくぞ。かねのねがなったことをろぎたちにいわないといけないからな」
「そうね。標葉、アンタも来なさい」
まだ話し足りないけど此処で従ってないといけない気がするので2人に着いて行く。