01:Cloche
俺の彼女・楠原 沙耶が1か月前に亡くなった。
1か月前に朝のHR中に担任が沙耶の死を告げた。俺はそれを聞いた時、ビックリして眠たかった目が覚めて担任を凝視した。クラスメイト達は哀れな目と面白がる目のどちらかを俺のほうにむけていた。彼女の死は事故死のようでトラックで轢かれたらしい。
『それで楠原の葬儀なんだが親戚だけで行うらしく参加はできないそうだ』
担任がそう静かに言う。俺はなんとしてでも葬儀へと行きたかった彼女の家を知らないことが分かり沙耶の死に顔を見れなかった。
結局、沙耶と最後に見た姿は少し短い黒髪をなびかせ俺に手を振り「またね」と笑って言う彼女の姿だった。
現在、俺は沙耶のことを引きずり日常を送っている。
放課後。携帯電話と財布と漫画しか入ってない学校用のバックを肩にかけて帰ろうとしてた時に大と小に声をかけられる。
「標葉ぁー」
「しーちゃん。標葉ちゃぁ~ん」
「しーちゃんいうなよ」
150cm未満のクラスで一番背が低い、真面目で人のいい久馬井と190cmのクラスで一番背が高い、人懐こい赤茶の髪がトレードマークの秀哉の2人は俺にとって親友である。
「いいじゃんかしーちゃん」
「そんなことより標葉」
「そんなことよりって・・・」
2人は俺が一番落ち込んでいた時にかなり心配をかけてしまったので2人の前では明るく振舞っているがきっと俺がまだ沙耶のことを引きずっていることには気が付いていると思うけどその事に触れないでくれている。
「しーちゃん。今日ね世朶通りに新しくグレープ屋さんに行きたいんだけど」
「また甘いものか?秀哉」
「だって、くまちゃん今日はグレープの気分だもん」
「うるせぇよ。190ある男が“もん”と言うなよキモい」
このデコボココンビは正反対の性格なのによく一緒にいるがだいたい久馬井は秀哉に文句を言っているけど、秀哉は無視してべらべらとしゃべっている。
「それでしーちゃんは行くの?」
「えっ何所に?」
「聞いてなかったの?世朶通りのグレープ屋にだよ」
「あー・・・パスしとく」
俺がそう言って断ると秀哉は残念そうな顔をするので俺は「また今度」と言って別れた。今度っていつになるかは分からないけどね。ダメなんだ。どうも世朶通りとかを歩いていると沙耶のことを思い出してしまって何所か彼女の姿を探してしまう。意外と俺って未練がましい男なんだなと思わず笑ってしまう。
まぁ沙耶だからだと思うけどね。
「ただいまぁー」
家に入ると台所で母さんが晩御飯の用意をしていた。台所からにおいから今日はカレーだなと思いながら2階にある自分の部屋へと上ろうとしたら母さんに呼ばれ台所の方へと向かう。
「なぁーに母さん」
「荷物届いてるわよ」
「荷物?」
なんだろう?注文していた本はこの前、届いたばっかりだし・・・。白い段ボールに入った荷物に心当たりがなく差出人の名前の欄のほうに目をやるとそこには・・・・・・
楠原 沙耶
と記名されていた。
「っ!」
心臓がバクバクする。俺は段ボールを持って階段を急いでかけ上がり自分の部屋へと直行する。
「沙耶・・・」
疑問はたくさんあるはずなのに俺は無我夢中でガムテープをビリビリと破り段ボールのふたを開けた。
「何これ?」
その中に入っていたのは掌サイズの小さいガラスで作られた鐘が大事そうに入っているだけだった。俺はその鐘を手に取り鳴らそうと思い横に振るが音が出ない・・・。よく見ると音がなるようになっている中の棒がない。他に何かないかと思い段ボールをひっくり返してみるとヒラリとはがきサイズの紙が一枚出てきた。その紙を手にとってみると沙耶の字でこう書いてあった。
『朱根くんへ。預かっていてください』
沙耶・・・・・・それはどういうこと?