序章:spiacente
何もなく終わるはずだったのに、彼と逢い変わってしまった。
失敗だった全部、全部、全部・・・・・・なのに後悔をしてないのは何故だろうか?
「あかねくん」
想うことは彼のことだけ、そうだ彼だけなんだ。
だから私は・・・・・・
「貴方の日常を守るよ・・・」
私は廊下を歩く校舎の大きな窓からは茜色の陽射しがとても美しく幻想的だ。茜色の陽射しは夕日というわけではない、ここはいつもこんな空の色をしている。
廊下の突き当たりにある階段に辿り着き階段の踊り場のほうを見上げる。そこにはあいつが立って私を待っていた。背の低くクシャクシャな黒髪に目が隠れていてその前髪の間から蒼いの目が見えていて黒いコートに白いマフラーのようなものを首に巻いている。
「もってきたか?あれを」
いつもの感情ない声であの蒼い目をじっと見つめる。相変わらずぞっとするような出で立ちをしているなと思ったが私は怯まず無理やり笑顔になって私は答える。
「ないよ」
あいつはビックリしたような顔をした。初めて見るその表情に感動を覚えた。
「なんでもってきてない。やくそくのはずだ」
怒った口調で言うあいつにいつものあの無表情で冷静な姿はない。
「確かに約束だったけど気が変わったの」
そうだ気が変わってしまったんだ。
あかねくん・・・・・・貴方に出逢ったから。
「だから私は逃げる」
私はそう言い張ると隠してあった銃をあいつに向けて発砲する。人間とは思えない速さで銃弾をよけた後、あいつは驚いた顔で私を見ていた。
「やくそくをやぶったあとはうらぎりか?」
「約束を破った時点でもう私は裏切ってたよ」
「そうだね。そうだよね」
怒っているあいつは凄く怒っている。何年も前に約束していたことを私は破ったのだから仕方ない。あいつも自分の銃を出して狙いを定めず発砲する。私はなんとか銃弾を避け廊下を走って逃げる。
逃げれるはずがない。そんなの無理に等しいけど。
「御免ね。あかねくん」
バンッ。今度はあいつは狙いを定めて私に発砲してきた。その銃弾が私の右足に当たり小さく悲鳴を声に出した。コツコツと靴の音が大きくなる。私は右足を引きずりながらも廊下を這いずる。
「なにやってるの?ばかみたいじゃないか」
冷たい言葉でそう吐き捨てるあいつ、距離はもうない。やっぱ逃げることは無理かと諦めた私は振り向きあいつの顔を見る。あいつの顔はいつもの無表情で冷静な姿。それで分かる私は死ぬんだと、もう無理なんだと。
あかねくん・・・・・・御免ね。
ここで私の記憶がなくなる。最後に覚えてるのは見たことない美しい微笑みを浮かべたあいつが私に向けて発砲する姿。その時、あかねくんへの想いと今年も海に行きたかったという呑気なことを思う私であった。
こうして彼に重い役割をさせるなど分からずに
私は目をゆっくりと閉じた。