ショートショート・テスト「以下の英文を訳せ」
花籠大学付属高校では、英語以外に第二外国語としてフランス語も教えている。
中年英語教師、関口功は、テストに「以下の英文を訳せ」と出題した。
放課後、彼は職員室でテストの採点をしていた。
彼はふと目を見張った。
そこにはフランス語が書いてあったからだ。
彼は「訳せ」と書いたことに気づいた。
彼はその答案をもって、フランス語の若手教師、滝沢明のところにいった。
滝沢はそれを見ながら、生徒の書いたフランス語を読んだ。
「間違いもあるが、まあ80点ですね」と滝沢は言った。
関口はやむなく80点をつけ、それ以降は「和訳しろ」と明記することにした。
後期試験では、滝沢は「以下のフランス語を英語にせよ」と全生徒に出題した。
滝沢は英語も読めたので、自分で採点した。
その結果、ほとんどの生徒が50点に届かなかった。
この学校では、3つ50点未満(赤点)を取ると落第となる。
正式に落第させるかどうかは、判定会議という職員会議で決める。
校長は特にフランス語に赤点が多いのを問題にした。
「滝沢くん。なぜこんなに赤点が多いのか?」
「それは……フランス語を英訳しろと問題を出したからです」
「君はフランス語だけではなく、英語の教員免許も持っているな?」
「はい」
「それはそれでいいが、『英訳しろ』は、ちょっと厳しくないか」
「確かにそうですね」
滝沢は素直に認めた。
校長は重ねて言った。
「では、フランス語の成績は2割増にする。それで修正したまえ」
「わかりました。申し訳ありません」
滝沢は素直に謝った。
それで落第該当者は大幅に減った。
滝沢は翌年からは「以下のフランス語を日本語か英語に訳せ。英訳したものは点を2割増にする」という出題法に改めた。
この結果、花籠大学付属には英語とフランス語に堪能なものが増えたという。




