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十二話

 お花畑の中で、あたしは座っていた。次の契約に、行こうかなー。


「ご主人ちゃん、シリシーが来たでございますよ」


 甲高い声がして、あたしの影からシリシーが出てきた。相変わらず、フリフリのゴシックドレスだ。

 人差し指くらいの大きさの、あたしの使い魔。


「シリシー、来たんだ。今までどこにいたのー?」

「ずっとご主人ちゃんの影の中にいたでございますよ。出番を待っていたです」


 ふーん。ずっと見ててくれてたんだ。


「それよりご主人ちゃん、もう四つも契約してるのすごいでございますよ。成績優秀悪魔として、表彰されちゃうです」

「んへへー。これでも首席だもんね。それじゃあ、次に行っちゃおう!」


 シリシーを連れて、あたしはふよふよと次の契約者さんを探しに向かった。

 次も幸せな契約ができるかなー。


△▼△▼△▼△▼△


 シリシーとおしゃべりしながら、何日か空を浮いていると街を見つけた。

 人間さんがいっぱいいる。今まで見た中で、一番賑やかな場所だ。


「屋台もあるです。まるでお祭りでございます」

「そうだねー。人間さんの魂がうきうきしてる!」


 みんな楽しそうだなあ。それに、質の良い魂もちらほらいる。

 良い契約者さん、見つかるかなー?


 んー。でも、その前に。


「シリシー、オカネある?」

「毎月魔界コインを支給されているはずでございます。それに、ご主人ちゃんは魔界に納品した報酬のコインももらっているです」


 そっかあ。それなら、余裕があるかな。

 魔界コインを変換して、この街の通貨に換えた。


 人間さんがいない路地に降りて、実体化する。シリシーには妖精さんに化けてもらって、と。

 よーし。お店に行ってみよー。


「こんにちは! 二つちょうだい?」


 あたしはお店の人間さんから、果物のアイスを売ってもらった。

 片方をシリシーに渡して、食べてみる。ひんやりしてて、甘いなあ。


「美味しいね」

「ヒナゴのシャーベットって書いてたでございますよ」


 ふむふむ。凍らせたフルーツを擦りおろして、シャーベットアイスにしてるんだって。人間さん、すごい。

 木の椅子に座って、足をぶらぶらさせながら食べていると、いつの間にかなくなっちゃった。


「美味しかったー」

「ご主人ちゃん、あっちのお店も気になるです」


 んー?メメコメエのウインナーサンドって書いてある。行ってみよー。


 お店で買ったサンドは、パンにウインナーと葉っぱが挟んであった。


「パリッとしててジューシーで美味しい」

「厚切りのパンがミソと言っていたでございます」


 うん。人間さんの食べ物、お腹には溜まらないけど美味しいな。

 シリシーも嬉しそう。素敵だね!


 サンドを食べながら次のお店を探しに歩いていると、後ろから大きな声が聞こえる。


「キミ!…キミだよ、キミ!!――可憐な赤い髪のキミ!」

「うんー? あたし?」


「そう、キミだよ! ああ…美しい」


 大きな声は、あたしを呼んでたみたい。

 あたしを呼んだ人間さん、手に持ってた杖を落として地面に座り込んじゃった。面白いなあ。


 魂がどっくんどっくんして、なんだかよじれてる。質はまあまあかな?


「今、解った。ボクは…、キミに出会うために生まれたんだ。キミ、ボクと結婚してくれないかい?」

「結婚? でもあたし、悪魔だよー?」


 契約の出番?うーん。でも、この契約は成立しないかも。

 悪魔と結婚したいだなんて、珍しい人間さんだなあ。

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