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言い訳ストライカー  作者: やしゅまる


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13/18

第13話 上手くいかない日の走り方

週末の練習試合。相手は市立高校。

真歩はサイドに立っていたが、アップの時から身体が重いのを感じていた。


トラップが少し跳ねる。

パスが足からわずかに離れる。

「いつも通り」のはずが、今日は全部ずれる。


(何これ……なんで……)


試合が始まっても感覚は戻らない。

凛が良い角度でボールを預けても、真歩は一歩遅くて追いつけない。


千春が後ろから声をかける。


「大丈夫、落ち着こー。」


でも、その言葉すら遠く聞こえる。


相手ベンチの声が飛ぶ。


「17番狙え!今日軽いぞ!」


それが、胸の奥を刺した。


(……わかってるよ。今日ダメなの、私が一番知ってるのに。)


真歩は「取り返さなきゃ」と思って、さらに前へ走る。

でも、焦りがミスを生む。

ミスが焦りを呼ぶ。

悪循環は止まらない。


前半終了。

真歩は下を向いたままベンチへ戻る。



ベンチの後ろ、川沿いの柵に寄りかかって、加藤がいた。

相変わらずボロいコート、片方潰れたスニーカー。

でも目は、よく通る。


加藤「真歩。今日の自分、何点?」


真歩は答えられない。

言い訳が喉まで来るのに、声にならない。


加藤は笑わない。怒らない。

ただ、静かに言った。


「ええ日だけ前に出るんは、まだ“途中”や。

 悪い日にどう走るかで、人間は決まるんや。」


真歩の呼吸が止まる。


「今日のお前の仕事はな、“前に行く”ことちゃう。

 “前に行こうとし続けること”や。」


隣で聞いていた凛が、小さく頷いた。


凛「真歩ならできる。」


その言葉は軽くて、でも揺るがなかった。



後半。

真歩は、相変わらず体は重かった。

最初のタッチも上手くいかない。

けど──走るのは止めなかった。


スピードが遅くても、走る。

相手に詰められても、前を向こうとする。

息が上がっても、声を出す。


千春「真歩、いいよ。その続き。」


凛はボールを持ちながら、真歩が動けるところへパスを出す。

真歩のために、トランジションの幅が変わる。


「前みたいにできない」じゃない。


“今日の真歩”で戦っている。



ラスト数分。

真歩はもう足が上がらないほど消耗していた。


それでも裏へ走る。

ボールが出る。

真歩が触る。

相手DFに止められる。


倒れ込む。


それでも、立ち上がって戻る。


相手コーチが小さく呟いた。


「……あのサイド、しぶといな。」


審判の笛が鳴る。

試合終了。


得点なし。アシストなし。

でも、真歩の胸は、不思議と静かだった。



帰り道、川沿いの風は冷たい。


真歩「ねえ凛。今日、全然うまくできなかった。」


凛「知ってる。」


真歩は苦笑しながら続けた。


「でも……逃げなかった。」


凛は笑った。


「それが一番むずいんだよ。」


千春が前を歩きながら振り返る。


「真歩。今日、強くなってたよ。」


真歩の足は重かった。

でも、心だけは軽かった。


“良い日だけ前に行く選手”では終わらない。


ここからだ。

ここから、本物になる。


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