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第四章「逃げられない夜が来る」

 タクミに裏切られたと知ったあいりは、涙をこらえながら走り続けた。 


 心の中はぐちゃぐちゃだった。怒り、悲しみ、そしてひかるへの申し訳なさ。


 走りながらスマホを取り出してひかるに連絡を入れた。


「ひかる、すぐに家を出て。誰にも見られずに、人気のないとこまで来て」


『え?どうした、まさか——』


「お兄ちゃんに私とひかるの電話聞かれた…あんたのこと、もう上に報告した。氷見組が動く。」


 電話の向こうで、ひかるの息が詰まる音がした。


『……マジかよ……』


「今すぐ逃げて。迎えに行く」


 その夜、人気のない工場跡地の近くでふたりは再会した。

 


 あいりはバイクにまたがり、ひかるを後ろに乗せる。


「どこ行くんだ?」


「しばらく潜れる場所がある。友達のとこ。兄ちゃんには連絡しない」


 バイクのエンジンが静かに唸り、夜の闇へと滑り込んでいった。


 逃亡が始まった。



 翌朝。ひかるは見知らぬアパートの一室で目を覚ました。

 寝袋の中で丸まった体を起こし、窓の隙間から差し込む光に目を細める。


 すぐ隣には、あいりが眠そうにしていた。


「……おはよう。よく眠れた?」


「……まあまあ」

 本当は全く眠れていないが、あいりを安心させるために咄嗟に嘘をついてしまった。


 会話はぎこちなく、でも互いの存在がどこか心強かった。


 だが、安心は長くは続かない。


 スマホに通知が届いた。

 あいりの兄からだった。


《氷室が動いた。お前ら、急げ》


 ひかるとあいりは顔を見合わせた。


「……お兄ちゃん、後悔してるのかも。氷室ってお兄ちゃんがいつもやばいって言ってるやつだ…」


「……どうだろうな。」


 ひかるは荷物をまとめながら、ふと窓の外を見る。


 見慣れない車がアパートの前に停まっていた。


「やばい……もう来てるかも」


 あいりも窓の外を確認し、すぐに靴を履いた。


「次の場所に移ろう。今は、とにかく逃げなきゃ」

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