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「よろしいですか。王子。私がいなくなったら、妹だけに聖女の仕事がいくんですよ。他に聖女がいるわけでもないですし」

「彼女なら、大丈夫だ。真の聖女なのだから」

「妹の本当の力のことをご存じですか?訓練され、慣れている私でさえ大変なのです。それをずっと怠けていた妹が、全てをこなせるとは、到底思えません。私は、この国を思って言っているんです」

「王子。聞いてはなりません。魔女の言葉です」

「我々をたぶらかそうとしているのです」

「…はっ!危なかった…助かった。お前たち。俺だけだったら、ここで少し心配になって、帰っているところだった」


…だから、王子は取り巻きをつけていたのね。

王子一人だったら、いくらでも丸め込んで帰せそうだったのに。


「リリアの言っていた通りだな。「お姉さまは、言葉巧みにこちらを惑わします。ですから、私が選んだ護衛の方を連れていってください」と、言われて連れてきたお前たちは、さすがリリアが選んだ人間だ。魔女の言葉は、通じないと」

「私たちは、リリア様一筋ですのね。リリア様以外の言葉は通じません」


それつまり、話は通じませんってことじゃない。

リリア様一筋っていうか、洗脳されてるようなものでしょう。正常な判断がつかなくなっているなんて…。リリア。あなた、何考えてるの。聖女には、正直メリットなんて、何一つないのよ。疲れるし、大変だし。なにより、どれだけ頑張っても誰も、認めてくれないのだから。


…そう思うと、どうして、私聖女なんて、やっているのかしら…。

… … …ああ。そうだったわ。私、リリアに負けたくなかったんだわ。

顔も体も若さも…実のところ、聖女の才能ですら、本当はリリアには勝てない。

だけど、頑張って、頑張って、ずっと時間と自分自身を削りながら、聖女として頑張っていたら、怠けているリリアに勝てるんじゃないのかって思っていた。

リリアに何か一つ勝てるものが欲しくて、ずっと頑張ってきた。

嫉妬だ。私を突き動かしてきたものは。

厳しい修行も苦しい毎日も、リリアに負けたくなくて、生まれ持った顔やスタイルで、勝つことは出来ないから、努力で何とかなりそうな聖女としての能力を磨くことだけを考えてきた。

私は、ずっとリリアに嫉妬してきた。それをいつしか忘れて、聖女の義務感だけが残って、今に至る。

そして、忘れた頃に私は、聖女としてもリリアに負けてしまうなんて…。


「… … …リリアは、この国を守れると思いますか」

「彼女なら、守ってくれる。俺が選んだ女だからな」


私は、リリアには何一つ勝てなかったのね。

それを、頑張ろうとした私が悪かったのかしら…。


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