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なんといったこの王子。


「私がこの国から出ていって、次の聖女はどうされるのですか」

「適任者がすぐそばにいるじゃないか」

「ま、まさか…」


王子の隣で、にこにこと微笑んでいる妹を見た。


「まさか妹…ですか」

「彼女の方が、聖女にふさわしい」

「いや…いやいやいや…妹は、ろくに訓練をしていないんですよ!?いきなりは無理です」

「そんなことはない!」

「根拠は?」

「彼女は、癒してくれる」

「?」

「彼女の笑顔を見ると、皆が癒される」

「私は、妹が聖女にふさわしいという根拠を聞いているんですけど」

「彼女は美しい」

「それは認めます」

「だから、聖女にふさわしい」


頭わいてんのか?

聖女の仕事は、アイドルなんかじゃないんだぞ。

顔は、関係ない。あるのは、ただひたすら職務を全うすることに対する義務感か、自己献身だ。

甘やかされた彼女に出来るはずがない。


「そもそも貴方は聖女になることをあれだけ嫌がっていたではありませんか」

「昔の話です」

「聖女の仕事は、苦しいですよ」

「承知の上です」


何が目的なのかしら。

お金?…それは、ないか。私が使い切れない分のお金を渡しているし、そもそも王子やら貴族の子息やらから多額の貢物をされていると聞く。

だから、お金には、困っていないはず。

にこやかな笑顔を浮かべている妹の顔を凝視してみるも、なにも読み取れない。それもそうか。彼女とは、ろくに話をしてこなかったのだから。聖女の修行で、家族ともろくに顔をあわせていない。

そういえば、娘が倒れたというのに、結局誰も見舞いに来なかったな。


「今度の土曜日、聖女の就任式を行う。それまでには、荷物をまとめておくように」

「いくらなんでも急すぎませんか。仕事の引継ぎもろくに出来ないじゃありませんか」

「必要ない」

「ひ、必要ない!?」


聖女の仕事をろくにしたことがない妹のことだ。きっと仕事のことで、支障が出るに決まってる。聖女の仕事は、国の命がかかっている。だから、適当なことは許されない。


「必要です!聖女の仕事は、楽じゃありません!」

「だが、君は公園で寝ていた」

「あれは疲れていたんです」

「いや。君は昼寝が出来るほど、暇を持て余していたんだ」

「私の生活リズム知らないから、そう言えるんです!聖女の仕事は、過酷です」

「倒れるくらいにはか?」

「そうです」


倒れた理由が、疲労困憊なのは知っているだろう。

寝る間も惜しんでこの国を守ってきたのだ。

だというのに、心底軽蔑してますという顔で見てくる王子は、どういうつもりだ。


「な、なんですか」

「君は、嘘をついている」

「は、はい?」

「君は、夜遅くまで起きているそうじゃないか」

「そうです」


そもそも仕事が終わるのが遅い。

残業?なにそれ。って感じ。


「君は、遅くまで遊んでいるんだろう」


さっきから、断言してくるけど、この人、私のこと何も知らないんだな。


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