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―ぞわっ。
私の結界に何者かが、魔力を練りこもうとしているのを感じた。
その気持ち悪さといったら、見知らぬ人間に、いきなり素肌を触られたようなショックといえば、通じるだろうか。とにかく不愉快で、気分が悪い。
「どうした、ソニア」
私の顔が、ずいぶんと歪んでいるのだろう。自覚しているから、よくわかる。
「何者かが、私の結界に唾をつけたようでして、それがとても不愉快なのです」
「なんだと!?」
王子が立ち上がり、「この話を早く伝えろ!」と使用人に叫んだ。
慌てた様子で、部屋から使用人たちが出ていく。
「さぁ、危ないから、ソニアは私とともに」
「いえ。結構です。私は相手に会ってきます」
「なっ!?それは、危険すぎる」
「私の予想では、おそらく大丈夫です。それに、この国で一番強いのは、私でしょうから」
そう言って、にっこりと笑うと、王子は私の顔を恐ろしいものでも見るような顔で、見た。
事実だ。おそらく、この国で一番強いのは私だろう。
私は、兵を連れて、戦場をかけたことだってあるし、国を守るため、国内での戦闘だって経験している。
剣も魔法も守りだって得意だ。
それが、私なのだから。
戦うことでしか、守れないものがあると思ったからこそ、小さいころから訓練を重ねてきた。城の中で怯えるだけの女であったら、もしかしたら、元の国でもまた違ったのかもしれない。
過去のことなど振り返っても無駄とは思いつつも、ほんの少しだけ考えてしまうのは、仕方ないことだろう。
それより今は、侵入者のことを考えよう。
侵入者というよりかは、帰還者というべきかもしれないけど。
この国を出て行った聖女が、私の思うよりずっと早くに帰ってきたらしい。
「これは、どういうことですか!?」
叫んでいるのは、私より少し年齢が上と思しき女性だった。
その後ろで、4人の女性が「どういうことなの」という驚きを隠せない様子で、こちらを見ている。
「まぁ、お初お目にかかります。私、隣国の聖女をしておりましたソニアと申します」
「隣国…まさか、化け物聖女!?」
ざわりと、恐怖で聖女の皆さんの顔が引きつる。
失礼な…誰が化け物だ。
「まぁ。化け物だなんて、心外ですわ」
そう言って、こちら側に悪意も敵意もないのだと、にっこりと笑って、握手を求めたら「ひいぃ」と言われて、後ろに逃げられてしまった。解せぬ。
「……」
「り、隣国の聖女が何の用よ!」
勇ましい女性だな…。
さすがは、リーダーを務めているだけはある(実際に、リーダーなのかはわからない。ただ、至極当然のように真ん中を陣取っているから、おそらくそうだろう)。




