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毎日、毎日、働き、眠る暇なく、働き、国を支えるためだけに生きている私。生きているのか死んでいるのか、もはや判断がつかなくなっていた時、妹の腰に手を当てながら、王子は高らかに宣言した。


「彼女の方が聖女にふさわしい!!!」


それに対し、私は何も答えなかった。

答えられなかった。

頑張ってきた成果を認められなかったからだとか、妹を贔屓しているだとかそんな理由ではなく、単純に働きすぎの寝不足の頭では、すでに考え事をするような容量が残されていなかったからである。


「彼女は、公園で寝ていたりと、明らかに仕事をさぼっている」

「まぁ…公園で?はしたないわ」

「ありえないな」

「聖女としての自覚はないのか」


貴族たちが思い思いのことを叫ぶ。

私は、それに対しても反応が出来なかった。

頭は、いつからか、もやがかかったようにおぼろげで、白く濁っていた。

寝ているのか、起きているのか分からない。

ただ、体だけは繰り返され、刻み込まれた職務を全うしていた。

疲労回復の魔法を重ね掛けし、やり過ごしていたが、ついに私も限界だったらしい。普段であれば、回復する魔力も連日繰り返される徹夜や短時間の睡眠で、回復していなかったらし

い。ついに私は、その場で倒れ込んでしまい、昏睡状態に陥ってしまった。原因は、極度の疲労と睡眠不足のためだった。


そして、そのあと目覚めたのは、倒れてから一週間が経った頃だった。

目覚めたとき、真っ先に心配したのは、結界のことだ。

しかし、睡眠時でも結界を保つように厳しい訓練をしていたおかげか、昏睡状態になっていても、結界は消えることなく、この国を守っていたらしい。ついでに周辺の村の結界も保たれたままだったそうなので、私は安心した。


「お前は、聖女失格だ」


目覚めてから、早々に王子が私に会いに来たかと思うと、言い放った。


「なんだ。お前のその恰好は」

「格好なんて、気にする余裕がないものですから」


最低限の身だしなみは整えているが、それでも最低限だ。

そもそも聖女は、走り回ることのほうが多いので、もし、王子の理想の格好がドレス姿なのだとしたら、残念ながら期待に沿うことは出来ない。汚れるし、動きづらい恰好は、最初から論外だ。


「それにお前、化粧もしてないのか。聖女どころか女失格だな」

「すみません。化粧している余裕がないものですから」


事実だった。

この日は、単純に時間がなかった。

化粧をしても眉を書き、ファンデと口紅を塗るくらいだ。


「お前は、本当に聖女失格だな」


聖女にふさわしい女は、常に美しくないといけないのだろうか。

だとしたら、それ相応の時間の余裕をくれないだろうか。

せめて、あと一人聖女の仕事を手伝ってくれる人がいればいいのに。

そうしたら、私だって、もう少し小綺麗な格好が出来るのに。


「お前は言い訳ばかりだな。もういい。愛想がつきた」


愛想は、もともとお互いついているだろ。


「お前には、この国を出ていってもらう」


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