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「お疲れさまです」

「お疲れ様です。お気をつけて」


夜勤の兵士たちが、見守る中、私は城を離れる。

草木も眠る深夜2時。

全ての業務を終え、私はふらふらと歩いていた。疲れもピークを越え、特に意味のない苛立ちだけが胸にあった。体が疲労を訴えて、怒っているからだと思う。事実、疲れていた。


「ただいま…」


家に帰るとまず、酒を飲んだ。

寝る前の酒は良くないと知っている。眠りが浅くなるのも。それでも飲まずにはいられない。家に帰ると食欲がわくのは、なぜなのだろうか。

作り置きをしておいた鍋に火をかけ、シチューを温めるとそれに残っていたパンとチーズをのせて食べ、ワインで流し込んだ。


「あ゛あ゛あ゛~~~」


おっさんのような声が喉から漏れ出す。

仕方ない。本当に疲れているんだから。

時計を見る。

3時になっていた。

早く寝ないと。

4時には起きて、身支度をしないと間に合わない。聖女に休みはない。連勤とかいう概念はない。代わりはいないからだ。


「疲れた」


私は、気絶するように、いや、おそらく気絶なのだろう。私は暗闇に落ちていった。


朝4時。

頭は起きずとも体は起きるものだ。

近くに用意しておいた服を着て、顔を洗い、これまた事前に用意しておいた、ゆで卵を食べ、家を出た。


これから、また私の聖女としての一日が始まろうとしていた。



午後1時。

村の結界の様子を確認した帰りだった。

城まで、まだ少しかかる。

少しだけ、休憩しよう。近くにある公園まで行き、ベンチに座り込む。座ると、ドッと疲れがのしかかってくる。


「… … …」


無心で、ゆで卵を食べ、水で流し込む。

だめだ、眠い。

… …少しだけ… …。

… … … … …。



「お姉様?」


その声にびくりと体が跳ね上がる。

妹の声だ。


「やっぱりお姉様だわ。こんなところで、お昼寝ですか?風邪をひいてしまいますよ」

「あ、はは。少しだけ休憩を…」

「いいご身分だな。こんな真昼間からお昼寝とはな。それが聖女とは恐れ入る」

「聖女は休憩することも許されないのですか?」

「ふん。貴様のために国の金が使われているんだぞ?こんなところで寝ているやつに貴重な国民の税金が支払われていると知ったら、さぞ問題になるだろう」

「私は、きちんと自分の責務を果たしていますし、お給料分の仕事はしているつもりですが」

「はっ!どうだか!」

「でしたら、リリアも聖女の仕事を手伝って下さい。あなたが手伝ってくれるのならば、私の負担も減りましょう」

「リリアは、関係ないだろう!お前のだらしなさにリリアを巻き込むな!彼女が…かわいそうだ…」

「殿下…私は大丈夫ですから…」

「いや、だめだ!君は、僕の隣で笑ってくれるだけでいい…それだけでぼくは…っ!」

「殿下。私はあなたの側にずっといます…あなたの隣で…ずっと…」

「リリア…」

「殿下…」


「あ。すみません。休憩時間終ったんで、失礼しますね」


二人は、もはや私のことなど眼中にないのか、ピクリともこちらを向くことはなかった。

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