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怠惰な木生  作者: 超山熊
4/6

出立

風邪ひいた……



 銃火器を作るのに必要なのは構造的な知識。

 地球で使われていたような銃の構造にする必要は無い。

 俺が作る上で必要なのは、魔法より速く、魔力消費を抑え、魔法以上の威力を出すこと。

 それが出来ないのであれば造る必要が無い。

 

 魔法が、体内魔力を練り・体外魔力に干渉させ・魔法を発現し・対象を狙って・放つという過程をなぞるところ。

 銃火器を作っておけば最初の3工程を省いて、対象を狙って・トリガーを引くだけで済む。


『まずは、普通の銃が作れないといけないよな』


 簡単な構造で銃と考えたときに思い浮かんだのは火縄銃だった。

 歴史上はじめて戦争で使われた銃であり、中身は鉄の筒に鉄球を込める。

 勢いよく打ち出すために火薬を入れて導火線として縄を取り付けただけの簡易的構造。

 現代の銃に比べれば弾速・命中率・飛距離・連射性が落ちるが、最初に試しで作るなら最適だろう。


 鉱山から取ってきた鉱物の中で金属イオンを取り出し筒状に集める。


 問題は火薬だが黒色火薬は確か某アニメで硝石と硫黄、木炭の3つが必要だったはず……。

 硝石の化学組成はKNO3、つまり必要なのは(カリウム)(窒素)(酸素)の3つである。

 窒素と酸素に関しては空気中にあるため、集めるのに苦労はしないだろう。

 しかしカリウムはほとんどが食品や海などに多い。

 ここは山だから海を探すのはかなり大変だろう。

 どうするか……海……食品……ん?食品?そうか!


 俺は枝先を振るわせるとゴルドアプルをつける。

 ゴルドアプルは色こそあれだが、中身はとても美味しいリンゴだった。

 ゴルドアプルに根を刺し吸収することで成分を調べていく……どれだ?

 多くの栄養素や元素が混在していて、どれがどの元素なのかが分からない。

 

 これは、カリウムの多いものをもっと吸収して判別を可能にする必要があるな。

 カリウム……やっぱり海か。

 せっかく行くなら人が多い港町に行きたいな……観光とこの世界についてもっと知るためにも。

 ただ港町というか、海がどこにあるかが分からない。


 そこで俺が思いついたのは、野原にいた調査団のような集団のこと。

 彼らの住む場所、帰る街を調べれば人里に出られる。

 そこから上手くいけば港町にも行けるだろう。


『よし!思いついたなら行動するか!』


 港町を探すのに準備が必要だな。

 移動手段は人型で魔法をかけながら高速飛行をすればいいとして、本体が見つかるわけにはいかない。

 エウや子供達のような俺を守ってくれるような味方もいない。

 どういった魔法で守るか。

 光学迷彩や風の防壁だけでは不安だな、もっと見つけにくくするなら……。

 すでに周りの木々より遥かに大きい俺の体を隠すことは難しい。

 だからこそ光学迷彩をかけることで発見できないようにしていたのだが。

 

 地球での巨木は屋久杉のように周りの木々も大きいか、もはや目立つように生えているかのどちらかだった。

 なら隠すんじゃなくて攻撃や防衛手段を増やすべきだろうか。


 そうして俺が作ったのは風の防壁を突破しようとした者を自動で攻撃するシステム。

 簡単では無かったけれどフレイたちがここにいたときは、それぞれを守るように風の防壁を張っていたし本体に張っている風の防壁にフレイたちが当たっても怪我をしないよう設定していた。

 フレイたちやエウの体内魔力の質を感覚として覚え。風に触れた瞬間、敵か味方かを判断していたのだ。

 今回はそれに”迎撃”という手段を組み込んだだけだ。

 迎撃をする魔法には俺が使える中級魔法を連射するよう設定した。

 それに人型へ意識を移しても防壁が突破されたり本体に何かがあれば、すぐに意識の移動が出来る特訓もした。

 体内魔力の総量が多くなり、木型でも人型でも体内魔力は共有されるようだったので外に出ていて魔力が無くなることも無い。

 

 これで本体の問題は特にないだろう。


 さてあとは人型に移動してからの問題だな。

 まずは格好、人型では全裸状態に葉っぱで作った簡易ズボンしか履いていない。

 そこで周囲の木々や植物を分解し繊維状にしたところで編んでいく。

 服とズボンそして靴を履いた人型の俺はパッと見、中世の田舎青年にしか見えない。


 そして食べ物、人型は本体から生み出しているため腕からゴルドアプルを作り出すことが出来た。

 ただゴルドアプルを産み出す過程は腕からリンゴが生えてくるという化け物のような見た目のため人前では使わないほうがいいだろう。


 そして寝るところだが、そもそも木である以上睡眠は長期間いらない。

 逆に眠ってしまえば起きるのも難しいため、街の宿とかで寝るのは控えた方がよさそうだ。


 ここまで準備して気づいたことが、俺が倒し埋めた人間たち。

 彼らの身に着けていた物が使えたり、もしかしたら街で売れるかもしれない。

 どこかで金策は考えなければならないため男たちの遺体を漁る。


 身に着けていた装備やアクセサリそして鞄のような物を地中から取り出す。


「装備は埋めておこう。アクセサリーは売れるかもな。鞄には……なんだこれ」


 鞄の中は暗い闇が広がっていた。

 中身が闇という不可思議を前に手を入れる。

 もし何かあっても人型から意識を外せばいいだけだ。


 しかし、恐怖感とは裏腹に手は闇の中へと入っていき何かを掴んだ。

 中から出てくるのは干し肉などの食べ物や革製の水筒、さらには簡易テントのようなサバイバルグッズまで。

 どう考えても鞄の見た目と中身の量があっていない……つまりこの鞄は魔法で中身の空間が拡張された言わば4次元ポ〇ットなんだろう。

 相当高価なんだろうか鞄を持っていたのは1人だけだった。

 俺はそれを魔法鞄を名づけ中身はそのままに身に着けた。

 中身も使わないにしろ、どこかで売れるかもしれないからな。

 

 自作の衣服に男から剥いだ鞄を身に着け、俺は初めてこの世界へ足を踏み入れる。


 ――――――――――


 俺が向かったのは当然水蒸気爆発の実験を行った野原だった。

 野原には数個のテントが張っており、金属製の鎧を着た兵士や皮鎧を着た軽戦士めいた者まで10人以上の集団がいた。

 風に乗って聞こえる会話からすると、彼らは少し離れた街から派遣された兵士と冒険者と呼ばれる者達であった。


 そういえば俺が埋めた男たちもそんな呼ばれ方をしていたような……。

 まあ街についたときにでも調べればいいか。


 野原についての調査は終わっているものの元より開拓の進んでいないこの森を街の領主が手を入れるとしたらしく。

 彼らは開拓のための先遣隊として魔物など危険の排除を目的として留まっているようだ。


 この世界のことや一般常識が欠けている俺が今彼らの前に出れば敵視される。

 そこで集団の中から食料や物資の補給のための一団が切り離されるのを待つ。

 数日ほど彼らと離れた場所で待っていると遠くから馬車が近づいてくる。


 馬車は集団と合流すると何やらたくさんの荷物を降ろし始める。

 風で声を拾うと彼らの食料のようだ。

 荷物を降ろすと馬車はすぐに出発した。


「よし!」


 ようやく街へ向かうだろう馬車を見つけた俺は気づかれないように後を追いかける。

 馬車に乗っているのは馬を操舵する御者に護衛だろうか鎧を着た兵士が数人。

 護衛が必要ということは、この辺りは治安が悪いのか?

 しばらくすると森を抜けた、先ほどまではただ馬車を通すだけの簡易的な道だったが、ここから先の道は草木が排除され整備されている。

 森を抜けた先は野原の中に数本の木々が立っているだけの平原のため、自分自身に光学迷彩をかける。


 何度か訪れる分かれ道には立て看板が設置されており聞いたことのない名前が書いてある。

 日が沈み始めると馬車の兵士たちは野営の準備を始め、道から外れた場所で火を焚く。

 馬車の中で半数が寝ている間は残りの半数が周囲の警戒のため起きている。

 途中で交代し朝日を迎える。


 出発した彼らの後ろを歩いていると少し離れた森の中から子供のうめき声が聞こえる。

 かなり大きい声のため馬車に乗っている兵士たちも気づいたようだ。

 森から出てきたのは巨体を揺らしながら歩く二本足の豚。


「オークだ!」

「なんでこんなところに!」

「戦闘用意!幸い1匹だ、なんとかなる!」

 

 兵士たちが剣を構えると剣に色とりどりの魔法を纏う。

 剣を振ると魔法が放たれ斬撃のような魔法はオークと呼ばれた魔物を切り刻む。

 沈黙したオークが倒れるのを確認し馬車へ乗り込む。


「さっさと離れるぞ!」

「了解!」


 兵士たちがオークを相手にしている間、俺の意識はオークが現れた森に向いていた。


 まだ声が聞こえる……。

 息遣いからして限界が近い。

 

 今馬車について行けなければ俺は兵士たちを見失ってしまうだろう。

 街へ向かうチャンスを失うかもしれない、しかし俺の足は森の中へ向かっていた。


「見捨てるよりかはいい!」


 森の中へ入ると兵士が数人で相手にしたオークが4体倒れている。

 その先には巨大な棍棒を構え、他のオークとは色も体格も違うオークがいる。

 そいつの正面にいるのは全身に細かい傷をつけ血を流している少女がいた。

 少女は折れた左腕をかばいながら木を背後にナイフを構えている。

 足も怪我をしているため、これ以上は戦えないのが見て取れる。


「ブモオオオ!!!!」


 赤いオークは雄たけびを上げながら棍棒を振り下ろす。

 咄嗟に風防壁を少女に纏わせ棍棒を食い止める。

 地面から吸い上げた水を高速で打ち出しオークの頭を吹き飛ばす、初級魔法の水球の形と中級魔法の水刃の速度を組み合わせ回転をつけることで威力を上げた水砲だ。

 過剰威力だったようでオークの頭を吹き飛ばしたあと、後ろの木々を倒し破裂する。


「大丈夫ですか!?」

「……あ、ありが……」


 少女は魔法の飛んできた方向を見て俺を視認し倒れた。

 地面に当たる寸前、空気のクッションを作り少女を受け止める。

 傍により少女が呼吸をしていることを確認した俺はゴルドアプルの実を産み出し、水魔法で果汁だけ絞る。

 少女の口を開けて少量ずつ果汁を飲ませる。

 エウからゴルドアプルに回復効果があることも聞いているし少女の傷を癒せるかもしれない。


 咽ないようにゴルドアプル1個分の果汁を飲ませた少女の傷はみるみる内に塞がる。

 傷と出血そして戦闘中の汚れで気づかなかったが相当綺麗な顔をしている。

 美形のエルフと並んでも遜色ないだろう。

 頭から生えた猫耳と尻尾から人族ではないのかもしれないが、それ以外は人間と変わらない。

 倒れる寸前の言葉が感謝を伝えようとしていたならば言葉も通じるだろう。


 少女を植物を集めて作った簡易ベッドで寝かし起きるのを待つ。

 少女が起きたのは太陽が真上に登ったころだった。


「……んぅ……ん?」


 ベッドの上で身じろぎすると、目を開ける。

 太陽があるため明るすぎたのか一度ぎゅっと目を瞑りゆっくりと開く。

 周囲を見渡し俺を見つけると勢いよく起き上がり木の上へ跳躍する。

 両手には腰から抜いたナイフを持ち臨戦態勢だ。


「待て待て……とりあえず、それだけ動けるなら怪我は治ったんだな?」

「怪我……そうにゃ!あたしはレッドオークに殺されて……」


 俺は自分に敵意が無いと示すように両手を上げる。

 少女は木の上から状況を確認していると、離れた場所に首から上が無いオークの死骸を見つけ目を見開く。


「もしかして……あんたが、あたしを助けてくれたにゃ?」

「そうだ」

「――!ごめんなさいにゃ!それと、ありがとうございますにゃ……」


 木の上から降りた少女は俺の前で腰を曲げる。

 

 見るからに少女は年下だろう。

 一度くらいの失敗は許さないとな。


「いいさ。ただ……」

「……にゃ」

「俺の目的に付き合ってほしいんだけど」

「目的にゃ?」

「ここから一番近い街へ行きたいんだ」

「道案内ってことにゃ?」

「ああ、頼めるか?えーと……」

「任せてにゃ!あたしの名前はアーシャにゃ!あなた様は……」

「様なんてやめてくれ。俺は久瀬東吾。東吾でいいから」

「分かったにゃ」

 

 アーシャが了承してくれたことで案内人が出来た。

 アーシャは冒険者と呼ばれている職業の人で年齢は見た目通り14歳らしい。

 

「14歳で命を懸けているのか……」

「普通じゃないかにゃ?来年成人なら当然にゃ」


 俺はまだこの世界を知らない、ゆえに考え方が地球に基づいてしまっているのだろう。

 アーシャはオークの死骸に近づき、右耳をナイフで取っていく。

 それに何の意味があるのかを問うと。


「そんなことも知らないにゃ?トーゴはどこから来たにゃ?」

「遠い場所からだよ。だから何も知らないんだ。教えてくれよ」

「それは……いや、聞かないにゃ。トーゴは恩人だからにゃ。なんでも教えるにゃよ」


 オークの耳を取るのは討伐証明部位として決まっているため。

 討伐証明部位とは魔物を倒したとき、それぞれの魔物によって決められている部位を冒険者を統括する冒険者ギルドへ提出することで金銭を貰えるもの。

 アーシャは手際よく耳を切り取り、レッドオークの前に立つ。


「どうした?」

「レッドオークは色んな部位が高値で売れるにゃ……耳もないし……諦めるしかないにゃね」

「俺の鞄に入らないか?」

「にゃ?まさかマジックバッグにゃ!?」

「マジックバッグが何かは知らないけど中はかなり入るぞ」

「それがマジックバッグにゃ!トーゴがいいなら、入れてもいいにゃ?」

「ああ、大丈夫だ」


 中は大丈夫だとしても、鞄の口の大きさ的に入らないか。

 どうしようかと悩みながら鞄の口にレッドオークの手を入れるとスルンッと鞄の中へ入っていった。

 あれだけの巨体が入ったにも限らず鞄の重さは変わらない。


「凄いな。この鞄……」

「知らなかったのかにゃ!?マジックバッグはとんでもなく高いにゃよ!」


 アーシャが言うからにはマジックバッグを持っているのは相当稼いでいる冒険者でないと持っていなかったり、稼いでいる冒険者も一日で大量に魔物を狩る機会が少ないため荷物持ちを雇うことの方が多いようだ。

 だからこそマジックバッグを持っているのはレッドオークのような一体が全て金になるような希少かつ強い魔物を相手にするソロ冒険者か、大きな商店を経営する商人ぐらいらしい。


「なんでマジックバッグを持っているのに知らないにゃ……?」

「俺を襲ってきた冒険者が持ってたんだよ」

「それで冒険者を殺して奪ったんだにゃー?」

「ああ、反応からみるに意外とあるのか?」

「冒険者の仕事の千差万別にゃからね。裏の仕事もあれば正規の仕事もあるにゃよ。だから決まり事として冒険者は殺されても文句は言えない、死んだ奴が弱かっただけって切り離されるにゃ」

「辛い仕事だな……」


 オークの耳もマジックバッグにいれて、二人で森を抜ける。

 アーシャが言うにはここから一番近い街には徒歩で二日ほどかかるらしい。

 だから兵士たちは馬車で移動してたのか。


「空を飛んでいかないか?」

「な、なにを言ってるにゃ!?」


 俺は風魔法で自分とアーシャの体を浮かす。


「にゃあ!?お、降ろすにゃ!」


 空に浮かんだ状態でじたばたと慌てるアーシャを下におろす。


「トーゴが魔法使いなのは分かったにゃ。あたしは走るから浮かさなくていいにゃ」


 走る?風魔法での高速移動はかなり早いがついてこれるのだろうか。

 試しに200メートルほど進むとアーシャはついてきた。


「足、速いな」

「あたしは獣人種(ガルブ)だからにゃ。それにしてもトーゴの魔法はどうなってるんだにゃ……」

 

 また、初めて聞く種族だな……。

 そうして俺は風魔法の高速移動、アーシャは走って移動をすることで2日かかる道を、一度だけ野営を挟んで朝方には街へついたのだった。

 

 高い城壁が見る限り続いており、入り口には槍のような武器を持った兵士が立っている。

 その入り口から何台かの馬車や冒険者が並び何かを兵士に見せてから街へ入っている。


「アーシャ、あれは何をしているんだ?」

「……あれは身分証を見せてるにゃ。冒険者であれば冒険者証で一般人なら領民証にゃね」


 冒険者であれば冒険者ギルドから渡された金属製のカードを、一般人であれば自分がどこの領民なのかを示す紙を兵士に見せることで身分をはっきりと明かしているらしい。


「俺はどうすればいいんだ?」

「はあ……稀だけどトーゴみたいな身分証を持たない辺境の村出身の人間もいるにゃ。そういう人達は通行料を払って、街の中で身分証を買うにゃよ」

「通行料……身分証を買う……」

「……トーゴの分はあたしが払うにゃ。身分証は冒険者ギルドで登録すればいいにゃよ。登録料もあたしが払うにゃ」

「なんかいろいろ世話になって悪いな?」

「命の恩人にゃ。これぐらい良いにゃよ。ただ街の中で問題を起こすと、あたしも罰せられるから気を付けてにゃ?」

「それぐらいなら問題無い。俺も自分から問題ごとは起こしたくないからな」


 そうこうして街についてのルールや気を付けることをアーシャから教えてもらううちに順番が回ってきた。

 兵士は俺の顔をみて怪訝な表情をしたあと、アーシャの顔を見て驚いた。


「――アーシャ!?生きてたのか!?」

「なんとかにゃ。こっちにも報告は来てるのかにゃ?」

「ああ、領主の兵士が報告してくれた。オークが出たんだって?アーシャなら余裕だったか……」

「オークだけならにゃ……」

「まさか……」

「とにかくギルドへの報告が優先にゃ。手続き早くしてにゃ」

「お前なら顔パスさ。……それで隣の男は?」

「あたしの命の恩人にゃ。訳あって身分証が無いから、あたしが払うにゃ。人柄もあたしが保証するにゃよ」

「そうか……。先ほどは不躾な視線を向けてすまなかった!アーシャの恩人なら俺たちの恩人だ!決まりだから通行料はもらうが、アーシャを助けてくれて本当にありがとう!」

「い、いえ……偶然ですよ」


 さっきの表情と異なり、腕がちぎれそうなほどの勢いで両手をブンブンと振られる。

 兵士に通行料をアーシャが払い街へ入る。

 

「アーシャ!ギルドに冒険者が集められているはずだ!さきに顔を出して来いよ!」

「分かったにゃ!」


 門を通り過ぎてすぐに兵士からそう言われたため冒険者ギルドへ向かう。

 通行料は10円玉のような銅色をしたコインを5枚支払っていた。

 コインの形はいびつなものもあったため金属加工の技術はそこまで発展していないのだろう。


 ギルドまでの道中、アーシャにこの世界の金銭基準を聞くと。

 この世界には鉄貨・銅貨・銀貨・金貨・白貨が存在し、それぞれ100枚集まると次の単位で数えるということらしい。

 しかし周りの屋台を見るにほとんどが鉄貨1~3枚程度で表示され、物価がかなり安い印象だ。

 アーシャは一般的な3人家庭であれば銀貨3~5枚程度で生活できるらしい。

 金貨になると貴族や商人、大物を倒した冒険者にしか与えられることは無い。

 その上の白貨に関しては国庫でしか管理されず、国同士の取引でしか使われることは無い。


「レッドオークならどれぐらいなんだ?」

「分からないにゃ……でも頭も無いし、金貨に届くかどうかも怪しいにゃ」

 

 魔物の頭は剥製にすれば貴族が買ったり、分解すれば薬や武器になるなど用途が幅広い。

 しかしレッドオークの頭は俺が魔法で吹き飛ばしたため、そこまでの価値があるかアーシャにも予想がつかないようだ。


「あそこが冒険者ギルドにゃ」




 獣人種:ガルブ

 総人口が人族の次に多い種族であり、獣人国家ガルガニアの主要人種。

 魔法が使えないものの、それを補う身体能力や五感が発達している。

 寿命は人族より長く、森人族より短い程度で平均寿命は150年ほど。

 獣人の中には獣化と呼ばれる技を使えるものもおり、王族の血縁に近いものほど多い。

 もっとも友好的な種族と呼ばれることもあり、他の種族が運営する国家でも歓迎されるほどである。

 人族と魔物が交わった結果生まれた種族だという考えもあり、宗教や自種族至上主義の者からは敬遠されてしまっている。


 

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