魔族学校④
「星の勇者...」
確か俺がまだ5歳になる前に母親のユースティアから聞かされた昔話に出てきた勇者がそんな名前だった気がするな。
「星の勇者は魔王アルトゥム様率いる魔族軍30万にたった1人で立ち向かった伝説の勇者です―」
その後もウサギ先生の講義は続いたが簡単にまとめると...
星の勇者は魔族が人間と戦争をし始めた約15年後に突然現れ、魔族の進行を抑える為に各地に現れ猛威を振るったらしい。
そして星の勇者が魔族を抑えている間に人間達は武器、防具、魔法などの強化などを行い魔族への反撃の準備をした5年間―
1人で魔族の進行を押しとどめるなどと言う、チート転生者顔負けの活躍をする。
そして戦争開戦から20年で人類が魔族への反攻作戦を開始し、奪われた領地の3分の1を取り返すがそこからはお互い攻めあぐね28年間、戦場は拮抗状態になる。
魔王アルトゥムはこの28年間の間に内政に力を入れ、自分がこの世を去り、平和な世界で魔族が豊かに暮らせるように今の魔族領のシステムを作り上げた。
そして、28年後―
人類を打ち砕くべく、魔王アルトゥムが星の勇者討伐を決行する。
魔王アルトゥムと星の勇者は戦いというレベルを超え、史上最大規模の災害と言われりる程だったらしい。
そして約1年後、魔王アルトゥムは星の勇者を打ち破ることに成功したが自身も星の勇者との戦いで致命傷を受け前線から退く。
そして魔族が再度、人類領に進軍を開始したが突然現れた複数の勇者により阻まれ、そのまま和平ってな感じだ。
だが、それだけで何故人間側が無条件で和平を申し込んで来たのかが分からない。
確かに星の勇者が敗れ、人類はかなりの痛手になったろうが...それは魔王アルトゥムをやられた魔族も同じだ。
ならば、複数の勇者を持つ人類側がまだ有利のハズ...なんで和平を望んだ?
「ルクス君...疑問ですよね...何故、有利な人間側が和平を望んだのか...」
俺の考えを見透かすようにウサギ先生はルクスに話しかける。
「では、ヒントをあげましょうか...魔族と人類のターニングポイントは戦場が拮抗した年です」
「戦場が拮抗した年...魔王アルトゥムと星の勇者が
戦う28年前...あっ!」
「そうです魔王アルトゥム様が内政に力を入れ始めた年ですね...」
なるほど、魔族側は28年を国を豊かにする為に前線を維持しつつ国力を増強、対して人類側は魔族を打ち倒すべく軍事力に費やした―
結果、魔族は戦争継続能力を高める事になり...人類側は複数の勇者を生み出す...
そして、勇者2名の犠牲で魔族3万...数字だけ見れば人類側が有利に見えるが―
「逆に魔族3万で勇者を2人倒せる...」
「そうです...言い方は悪くなりますが魔族3万の犠牲で勇者が2人討ち取れる...人類側の犠牲の方が割りに合わなかったのですよ...」
なるほど、それに気づいた人間の王は和平を持ち出した訳か...