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絶望勇者の異端録  作者: 小松篤久
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第一章 滅びゆく国の姫

 父上と母上とは少し前に会ったきり、もう連絡も取れなく無くなってしまった。父上達がどうなったかわからない。

 死んでるかもしれない。どこかに落ち延びていれば少しでも幸いなのだけれども、もはやそんなことを気にしている暇はないわね。

敵国が放った炎は森を燃やし、もうすぐそこまでせまっている。もうこの国は終わりなのかもしれない。


 森の近くに建てた壁の上に一人防具を身につけた女性が立っていた。彼女は周りに誰もおらずひとり目下の森の奥の木々が轟々と燃えさかっている様子を眺めている。


 私が17年育ったこの場所は、この国はもう駄目かもしれない。だけどこのままあっけなく終わらせたくはないの。

口のうるさい騎士長も、ネチネチとした右大臣もいろいろと細かく別の意味でうるさいメイド長も、よい相談相手だったメイドたちも良く訓練に付き合わせてしまった兵のみんなも、そしてこの国の衰退に付き合わせてしまった国民にも何も示しがつかないでしょ。

 彼女は息を小さく吐くと顔を上げ、決意に固めた瞳は少し潤んでるようにみえる。

 

 そこへ後ろの方にある階段から一人の足音が聞こえる。

その音が姫の背後につく。甲冑を身につけた兵士が片膝をつき彼女に話をかける。

「レベッカ様!ここにいらっしゃいましたか。探しました」

「ごめんなさい、落ち着かないもので」

姫は振り返り兵士に向かう。

「いいわ、大丈夫よ」

姫は片膝をつく兵士を立たせる。

「姫様、城内といえど流石におひとりはまずいです護衛の者をおつけになってください」

「みんなそれどころではないでしょ。それに、ひとりになりたかったのよ」


「なにか、伝えたいことがあったのではないのかしら?」

「はっ東方より多数の松明と思われる明かりが、動くのが見られます。指揮所に来て頂きたいです」

「……そうですか。分かりました」

 唾を飲み込み甲冑を着た彼は続けて言った。

「城門前の森は火を放たれ、裏手に囲まれるのも時間の問題ではないかとヴァルト副騎士長からの伝言です。我々もここまでかと……」

「そうね…」

 二人の顔は沈んでいく。

 

彼女は希望を思い出したように、顔を上げ兵士にたずねる。

「ねぇ、そういえばあれはあとどれぐらいかかるかしら?」

「はい。あれは、あと一刻ほどかかるかもしれないとのことです」

「そう、まだ半刻ほどかかるのね。間に合うといいのだけれど」

レベッカはもう一度森の方に向き直り敵が陣をとっているであろう丘を見る。

「わかりました。では、それまでここを落とされるわけにはいきませんね」

瞳を数秒閉じ、この城にいない者達へ別れを告げる。そしてかかとを翻し階段へと向かう。

「では、いきましょうヴァルト副騎士長のところまで案内をお願い」

「はっ、かしこまりました」


 丁度会議の行われている指揮所に到着するふたり。

「失礼します姫様を連れてきました!」

「ははっ、やっぱりあそこにいただろ」

指揮所に集まる兵士の中の一人が、こんな状況ながら彼は明るく振る舞う。

「ヴァルト副騎士長、姫様の前ですよ」

横の副官の男が諫める。

「いいわ、会議の方を続けて頂戴」

「だとよ、クラーク参謀」

ヴァルトは揶揄い、クラークは溜め息を吐き頭をすこし振ると、顔を正し途中から参加したレベッカのために最初から始めた。

「この城内に居る者の内、兵士は2500人、負傷兵含む一般人が500人となります」

「各所監視塔からの報告では城門側の北側の森で火災を確認しています。ここまで燃え広がるのは早いでしょう。そして松明の灯りと思われる光が東西に動いていることが確認できました此方も配備が完了するのに時間はかからないでしょう」

「そうですか。副騎士長、兵力的にみてどの位持つとお考えでしょうか?」

「2500だともって半刻か最悪なことを考えると四半刻ももたないかもな。なんせこの城塞都市は古く小さいからな現代の防衛戦にはむいてない」

「そうですか…参謀、兵士でわない方々を裏手へ回られる前に脱出は間に合うかしら?」

「ギリギリですねそれに負傷者を連れてとなると追って差し向けられたら壊滅してしまうかもしれません」

「では、城の地下水路をたどると、王家用の抜け道が何カ所かありますそこから逃がしましょう。この城にいたメイドが知っているはずです案内させましょう」

「では、抜け道数だけ班に分け移動しましょう。ではどこで落ち合うか」

「いや落ち合わせるのはまずいな、各自そのまま中立国へ逃げた方がいい」

「そうですね。この城の宝物庫からいくつかの金を持たせましょう。逃げた先で必要でしょうから」

「おーそれは太っ腹なことだ」

ヴァルトの口の利き方にクラークはとがめる。

「副騎士長!」

「ここに有っても敵国のやつらに捕られるだけなのですからいいのです」

「じゃあ、逃がす側に50人ほど兵を回そう追ってや野盗、魔物に対処する必要があるだろうからな。問題ないだろ?クラーク参謀」

「あぁ大丈夫だろう。先に50人の精鋭を選別しよう。ハーマン頼む」

「ハッ!」

 クラークは指示を飛ばし、兵士は指揮所を出てかけ向かう。

「逃がす方達はもう行動を始めた方がいいわね。メイド達を集めてもらえる」

「では、カイル頼む」

「はっ!」

 此方も城内へ急ぐ。

「じゃあ残ったやつがどう守るかだな。あれ出来るまでまだ一刻もあるからな」

「城門から城下町までは捨てるしかないだろう、出来るだけ罠を仕掛け放棄がいいと思う」

 クラークは提案する。

「なるほどな、姫様はなんか意見あるかい?」

「いえ、軍事の采配はあなたたちにまかせます。できるだけ長く持たせる方法をおねがいしますね」

「じゃあ、なおさら街の放棄は必要だな。よし動かせる攻城兵器を城内にいれて固めるか」

「部隊をわけて、兵器を移動させる方と罠を仕掛ける方あと城内の防御を固める方の3つにわけるか」

「そうだな、じゃあノーマンを…」

 と作戦会議は順調に進んで行った

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