20 娘
突然の叫び声に、俺は急いで風呂に向かった。
「なにがあった!?」
風呂場ではクロが目をつぶって床に寝ており、リムはその横であわあわとしていた。
「あのね、あのね、おふろにはいっててね、はなしてたの。そしたらね、なんかねへんじがなくてみてみたらね、ねちゃってたの!」
リムはそう早口でまくし立てるが、要するに風呂に入っていたらクロが寝てしまったのだろう。
全裸のクロをそっと抱き上げ運び、ソファに寝かせ毛布をかけようとすると、
「……や……やめて、いたいよぉ……」
と、クロが寝言を発した。
ふと見ればクロとリム、どちらの体にも刃物で切られたような古傷やアザ、瘡蓋がある。
まだ幼い子供なのにこんな仕打ちを受けていたなんて……
この子達がこれまで愛情を受けられなかった分、俺がこの子達を幸せにしてやらないとな……
俺はそう心の中で誓うのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日
俺は二人とじっくり話すことにした。
やっぱりこれから一緒に生活していく上で彼女達を知ることは大切だと思うのだ。
「それじゃあ改めて、俺はコウ。数年前からここに住んでて、最近ハマっているのは剣術、あと昔から魔法は修行している。ここら辺は魔物が多いから気をつけろ、もしも何かあった時は俺を呼ぶんだ。以上」
だいぶテキトーだった俺の自己紹介だったが、2人はキラキラとした目で話を聞いていた。
「剣?!剣が使えるの!?」
「魔法…………」
「使えると言っても少しだがな、ならいたかったら後で教えてあげるよ。」
俺の言葉に、2人は嬉しそうに口角を上げた。
次はリムだ
「わたしはリムなの。好きなことは体を動かすこととお肉、苦手なのは野菜と雨なの」
なるほど、野菜……お肉……メモメモ
「ちなみに剣術をやりたいのはなんでだ?」
俺のふとした問いかけにリムは少し俯きつつ答える。
「わたしは、強くなりたいの。あの時……こわくてクロを助けられなかったの。わたしはだいじな人を守れるようになりたいの!!」
……良い目だ。
まあ目の相場なぞ分からんが、まだ小さいながらに良い心意気を持っているな。
さて、次はクロか
「あたしはクロ……好きなのはあったかいところと甘いもの……きらいなのは苦いもの」
ふむふむ甘いもの……メモメモ
「魔法は、あたしは運動はあまりできないから……魔法で力になりたいの…………」
2人とも、強くなりたいのか。
あんな出来事を経験したのに……いや、経験したからこそか。死を間近に体験したからこそ、強くなりたい、大切なものを守れるようになりたい、そう思うようになったのだろう。
俺としてはまだ子供だしのびのびと遊んでいて欲しいが、2人の意志がそうなら俺も協力するか。
「それじゃあ、これからよろしくな!!」
俺の言葉に2人はにっこりと笑い、頷いた。




