表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/24

19 リムとクロ

猫の少女も起きてきたところで、俺は改めて2人に話しかけた。


「君たちの持ち主であった奴隷商人は死んだからもう奴隷身分では無くなったけど、君たちはどうしたい?」


「……わからないの…私たちは生まれた時から奴隷だったの」


「………………もう痛いのはや」


暗い顔で2人はそう話す。

親の顔も知らないのか…まだ10歳にもなっていないのに……

前途ある子供の未来を潰さないようにするのが大人の使命ってもんだろう。


「……とりあえず、やりたいことが見つかるまでうちにいるといいよ!幸い、家は1人で住むには広いから。」


明るく言った俺の言葉に、2人は少しホッとしたように表情をゆるめた。



朝ごはんを食べ始める猫の子を前に、俺は再度話し続ける。


「君たち、名前が無いみたいだけど色々不便だから俺が着けてもいいか?」


その言葉に2人とも嬉しそうに言う。


「うん!名前を貰ったことがないからうれしいの!」


「…………うれしい」


「よかった」


そしてうーむと考え始める俺。

名前と言っても呼びやすい方がいいからな……


俺は犬獣人の少女を指さし言う


「じゃあ、君はリム」


次は猫獣人の少女を指さす


「君はクロね」


さすがに安直すぎただろうか。

2つとも、前世で飼っていた犬と猫の名前のんまなのだが。


俺の心配とは裏腹に、2人は今までで1番嬉しそうに笑った。


「わかったの!わたしはリムなの!!」


「あたしはクロ……」


良かった……反応は悪くないようだ。


「それじゃあ改めて」


俺は2人の目を真っ直ぐ見つめ言う。


「これからよろしくね、リム、クロ!」


「「うん!!」」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その夜……


この家についてあまり説明していなかったな。

この前幸福神がふと話していたのだがこの家は昔賢者と呼ばれたほどの魔法使いのもので、そのため魔法の書やコンロ、魔力を流すだけで水が出る水道など魔道具がたくさんあるようだ。

そして、俺が一番、亡き賢者に感謝していることは……


風呂がある


……と言うことだ。

もう一度言おう。


風呂がある


……のだ。

だからなんだと思うかもしれないが、これは重大なことである。

アルクの家や一般的な宿に風呂、温泉というものは存在しない。

アルマの話によるとメルセレフ王国の王宮には大浴場なるものがあるらしいが、それも維持費がとんでもなくかかるので、風呂というものがどれだけ高価なものかわかるだろう。


この家の持ち主の賢者様は、魔力を流せばお湯が出る仕組みの小さな風呂に加え大きい浴場のようなものも作ったようだが、完全にお湯を張るためには莫大な魔力がかかるようで掃除だけはされていたが放置されていた。

そこで俺の二十万越えの魔力の出番である。


五万ちょっとでいっぱいにお湯を張り、一人優雅に温泉を楽しんでいたのだよ。


一人で…………


…まあ、今日は客人がいる!!

流石に一緒に入るのはできないだろうが、温泉の良さをリムとクロにもわかってもらうとしよう!


「リムークローお風呂にお湯張っといたから入ってきな」


俺が呼ぶと二人一緒にぴょこんと顔を出す。


可愛い。


「「おふろ?」」


「…うん、とっても気持ちいいから体も洗ってゆっくり入っておいで」


「「はーい」」


リムはテンション高めで、クロはいつもの無表情で走っていった。


二人とも警戒心が少なくなってきたのか、だんだん感情を表に出してくれるようになってきた。クロはまだまだ硬いけど。


娘ができていたらこんな感じなんだろうな〜


さあ、二人が風呂に行っている間に俺もやることがある。

早いとこ、二人の服を作らねば。


俺はマジックバックから布と糸を取り出し、魔法を発動する。


『無属性魔法 裁縫(ソーイング)


服作りに使うのは無属性魔法である。

いつの間にかレベルが上がりあまり使ってもいなかった無属性魔法だが、これがなかなか奥が深い。


基本的に使っているのは念動力のようなものだが無属性魔法は操作がしやすく、動き方をプログラミングのように設定することで魔力を流せば工場の機械のように服を作ってくれるようになる。


まあ、これはアルクのお母さんが教えてくれた魔法なのだが。

アルクのお母さんも元気になったことで内職に力を入れ始め、服屋顔負けの仕上がりの良い服を作れるようになっていた。


「できた!!」


二人とも白のワンピースを基本にして、リムの方には緑の、クロの方には黄色の刺繍を入れておしゃれな感じに仕上がっている。


二人とも美人さんだし似合うだろうな〜


そんなことを考えていた時だった。


「キャーー!!なのーーーー!!!!」


何事だっ!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ