1 転生
目を覚ますと、周りは一面の白。
俺は、ぬくぬくとした布団の中のようなとても心地のいい場所に倒れていた。
「ここは…どこだ?」
『あ、目を覚ましたかい?』
起き上がり声の方をみると、そこにはこの場所と同じ白い髪の中性的な顔をした少年?が微笑みながらこちらを見ていた。
『ここはね、神界だよ』
と少年は言う。
「神界?そうかやっぱり俺は死んだのか。じゃあ君は誰だ?何で俺はここにいるんだ?というか死んだのならなぜ俺はこうして喋れているんだ?」
『まあまあ、一旦落ち着いて、僕が今から説明するから』
少年の言葉にハッと落ち着きを取り戻し、少年の顔をまじまじと見てみた。
神々しいまでに整った顔、サラサラとした純白の髪に綺麗な緑の目、小柄なその体は古代ギリシャのような服で包まれている。
『それじゃあ、説明してもいいかな?』
気づくと少年は下から俺の顔を心配そうに覗きこんでいた。
「すまない、つい取り乱した」
『気にすることはないよ、突然のことだったし驚くのもわかる』
見た目では自分より明らかに年下の少年の言葉だったが、不思議と安心してきた。
『僕は君たちの世界で言うところの神に当たる存在だ。まあ神と言ってもたくさんいるんだけど。
その中でも僕は幸福、幸運を司る神、言うならば幸福神だね。』
なるほど。随分大人っぽい雰囲気の子だと思ったら神だったようだ。
『そして君がここにいる理由だけど…』
幸福神は真面目な顔をして語り出す。
『さっき神はたくさんいると言っただろう、その神々の中でとある神が遊戯をやろうと言い出したんだよ。そしてなぜか他の神たちも乗り気になってね、協力していくつかの世界を作り出し、それぞれの神が気に入った人間を神界に呼び出して能力を与え、異世界に送ってその動向を観察するようになった』
「……じゃあ俺はあなたに選ばれたんですか?」
『ああ。君のことは随分前から気になっていてね。幸運に恵まれず辛いことがあっても悪の道に走らず、優しい心を持ち続けていたから気に入ってたんだ』
幸福神はそこで言葉を切ると、少し笑みを浮かべて言った。
『僕はこの遊戯にあまり乗り気では無いのだけど、今回のゲームの参加者として抽選に当たってしまってね、君を選ぶことにしたのさ。あ、でも僕が君を殺したのではないよ!残念ながらきみはあの時少年を庇って死んでしまうことは決まっていてね、それは僕でも変えられなかったんだ…』
「大丈夫です。俺は死んだことに悔いは残っていないので。」
『そっか、そう言ってもらえると嬉しいよ』
そう言って幸福神は申し訳なさそうに笑った。
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幸福神の説明をまとめるとこう言うことになる
・神様同士の遊戯で俺は幸福神に選ばれ、参加することになった
・異世界では戦うもよし、まったり過ごすもよし、冒険するもよしで使命的なものは無い
・幸福神的には前世で幸せになれなかった分、異世界では幸せになることを優先してほしい
・異世界には魔法がある(ここ重要)
・異世界にはさまざまな国があるが比較的平和な国に転移させてくれるらしい
・元の体は壊れてしまったので、神様が新しい身体を作ってそこの転生させてもらえる
『こんなところかな〜』
「何から何までありがとうございます…」
『いいんだよ、というか巻き込んでしまって申し訳ないと思ってるし』
「そういえば異世界には魔法があるんですね!」
『ああ。一応君も使えるよ。』
これは嬉しいぞ。昔から俺は本の虫で、ラノベも読みまくっていたから魔法を使うのは夢だった。
『新しい体の詳しいステータスはあっちの世界で見れるようにしといたから。あと、君とは長い付き合いになりそうだし、敬語はやめてもいいよ』
「そうか…ありがとう」
『うん!それじゃあ一旦お別れだね、ときどき会えるようにしてあるからたまには神界に来て、話を聞かせてね』
幸福神はそう言って微笑んだ。
「ああ、約束だ!」
俺も笑ってそう返すと同時に、段々体が透け始めた。
『それじゃあ、君の旅路に幸福あれ!』
その言葉を最後に、俺の体は完全に消滅した。