16 プロローグ
あれから一年が経った。
俺は一年絶やさずに修行を続け、様々な新しい魔法を習得した。
【名前】コウ 【性別】男
【称号】転生者 不運な死を遂げた者 殺戮者
【年齢】超越 【魔力】278211/27821
【体力】205621/205621
【レベル】92
【加護】幸福神の加護 Lv.10
【スキル】???
???
???
無属性魔法 Lv.10
光魔法 Lv.10
闇魔法 Lv.6
水魔法 Lv.10
炎魔法 Lv.9
風魔法 Lv.7
土魔法 Lv.7
時空魔法 Lv.10
体術 Lv.10
鑑定 Lv.-
祈祷 Lv.-
購入した魔石に加え、魔物から手に入れたものも使い修行を続けた結果、ある程度の魔法は習得することができた。
数ヶ月に何度か町へも行きコミュ力が上昇、もとい人間として進化し、緊張せず喋ることができるようになったのが一番の成長だろう。
祈祷スキルによって幸福神ともだいぶ話し、神の大変さもわかった。なんとなく、社畜のそれと似た雰囲気を感じた。
次は魔法の説明だ。今まで使っていた光魔法、水魔法はもう完全にマスターし、炎魔法は火力の調整が完璧にできるようになり火災の心配は無くなった。
風魔法は、身体強化と同時に使うことでさらに俊敏な戦いが可能となり、もはや常人では目で終えないだろう。
闇魔法はまだよくわからないことが多く、魔物を衰弱させたり視界を奪うなどの用途で使っている。
土魔法は建築に重宝している。しかし、たくさんある魔法の中でも最も特筆すべきものは、時空魔法だ。
時空魔法は時と空間を司っており、一瞬の時止めやゾーンに入った時の周りが遅く見えるような高速演算、空間ではマジックバックの拡張、そして転移ができるようになった。
そう、テレポートだ。
これの習得よって長距離の移動に革命が起きた。
消費魔力に関しては距離によっては普通の魔法と比べるとバカほど食われるが、魔力がある限り距離は無制限、さらに瞬時に移動できる。
これのおかげで行くまでに数日かかるルザリーにも一瞬で行けるようになり、アルク、イリスに顔を見せやすくなった。
そうそう、アルクとイリスとは最近も定期的に会っている。
アルクの母親もすっかり良くなってきており、アルクもこれまでできなかった分献身的に親孝行しているようだ。
未だ妹には頭が上がらないようでたびたび怒られているようだが、それでいいのか?長男……
そんなわけで、俺は久しぶりにルザリーに行くことにした。
『時空魔法 転移』
一瞬で景色が切り替わり、石造りの街並みが現れる。
転移先の路地裏を抜け、俺はアルクの家に向かうことにした。
「あ、コウじゃないか!」
声の主は、灰色の髪に活発そうな顔、男勝りな17歳ほどのどこかアルクに似た美少女。
「アルマ、久しぶり」
この少女こそが、アルクの妹、アルマだ。
「兄貴なら冒険者ギルドに行ったよ!あと、母さんが心配してるから後で顔見せてあげて」
「うん、わかった」
アルク家には色々とお世話になっている。子供っぽい見た目の俺を心配したのか、ルザリーに来た時にはやたらと泊まらせてくれるのだ。
まあ、やたらとアルマに頭を撫でられるのは精神年齢が年上のこっちとしては恥ずかしくはあるが。
転生のことを喋るわけにもいかないし甘んじて受け入れるか。
そう思っているうちにもう見慣れた冒険者ギルドに到着した。
一年でちょくちょく依頼もこなし、ランクはCまで上がっている。
「冒険者ギルドへようこそ、久しぶりねコウくん」
「お久しぶりですエレンさん、アルクっていますか?」
「ふふ、コウくんは相変わらず礼儀正しいのね。アルクさんだったら、酒場にいるわ」
げ、また酒場か……
あそこの雰囲気は苦手なのだ。色々絡まれるし。
「…ありがとうございます」
俺が答えるとエレンさんは苦笑いをして言った。
「アルクさんったらまた妹に怒られて不貞腐れてるから、家に連れ帰ってあげて。」
「わかりました……」
はあ、戦闘に関しては優秀ではあるが、相変わらず抜けてる人だな。
日が暮れてくる時間帯のため、酒場は多くの人が利用していた。
「おぉ〜コウじゃんかぁ〜久しぶりだな〜」
久しぶりに顔を見たアレクが赤い顔で言った。
「アレク、そろそろ母さんも心配してるから帰るよ。」
「もうちょっとだけぇ〜いいだろぉ?」
俺がやれやれとため息をついていると、後ろから突然柔らかい感触を感じた。
「ねえ君〜可愛い顔してるわね〜君も一杯飲まな〜い?」
後ろを見ると、服を着崩し危ない格好をしている冒険者のお姉さんが抱きついていた。
「おおおおお、俺未成年なのでっ!!」
ちなみに年齢は超越しているが、俺は焦ってそう答えた。
てか大変だ!このままじゃ色々見えてしまう!!
「少しくらいいいわよぉ〜」
そう言いながら顔を近づけてきたところで、
『闇魔法 催眠』
俺の魔法に、お姉さんはスゥスゥと寝息を立て始め、パーティメンバーの女性に運ばれていった。
危なかった…俺の理性が残っているうちに対処できて。
それよりアルクをなんとかしないとな…そう途方に暮れている時、酒場に見知った顔が入ってきた。
「イリス!」
「コウ、きていたのか。アルクもいるな、おいアルク、お前の家族が心配していたぞ」
「お〜イリス〜お前も飲まねぇか〜?」
その言葉にイリスはため息をつくと、瞬く間に手刀でアルクの意識を刈り取り、軽々と肩に担いだ。
「ほら、コウも行くぞ」
俺は呆然と立ち尽くした。
……イリスは敵に回さないようにしよう。
そう心に誓い、イリスのもとへ走った。