15 エピローグ
見覚えのある真っ白な世界で俺は目を覚ました。
『あ、やっと来てくれたのかい?』
真っ白な髪に綺麗な緑の目、神々しいまでに整ったその顔は不機嫌そうに唇を尖らせている。
『またくると約束したのに、随分と遅かったじゃないか!僕はこれでも寂しかったんだぞ?』
やばい、異世界での生活に順応しすぎて忘れてた…
「ごめんごめん、会い方もわからなかったからさ……それよりあの像はどうしたんだ?」
『あ、話を逸らしたね?まあいいさ、君も祈祷スキルを手に入れたことだし、これからは好きな時にこちらからも連絡できるようになったから』
祈祷スキルにはそんな便利な効果もあったのか……
『あと、像かい?あれはちょっと触れられたくない話だから今度気が向いたら話してあげるよ』
なんだそれ?何があったのか謎が深まるばかりだな…
『あ、ちょうどよかった、君も来たことだし伝えておくよ』
そう言うと幸福神は急に真面目な顔になり、神の風格とでも言うようなオーラを放ち始めた。
『神託だ』
『1年後、君のいるメルセレフ王国とドズマン皇国との間で戦争が起こる…魔の森が戦場になることはないとは思うが、注意するといい…』
そう言うと幸福神は、一度目を瞑った後またいつもの穏やかな笑顔に戻り言った。
『以上だ。じゃあそろそろ時間だね、また今度』
そこで俺の意識は途切れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハッと目を覚ますと、木製の少し汚れた天井が見えた。
よし、こんな時こそ
「知らない天井だ……」
「宿屋だぞ?忘れたのか?」
右を見るとアルクが訝しげな視線をこちらに向けていた。
「……なんでもない」
街での用事も済んだことだし、俺は一度家に帰ることにした。
マジックバックには戦利品+購入した魔石と、食材、香辛料や調味料などを詰め、イリス、アルクと門まで来ている。
「……それじゃ」
そう言う俺に、イリスが珍しく笑みを浮かべて答える。
「ああ、また気が向いたらくるといい。」
それに続いて、アルクも朗らかに言った。
「おう、オレたちも母ちゃんが元気になるまでは滞在する予定だからな」
二人の言葉に俺は笑顔を浮かべて手を振った。
「…ばいばい」
アルクとイリスも、笑って手を振りかえしてくる。
ルザリー、いい街だった。
人と喋れない時はどうなるかと思ったが、なんだかんだ人に恵まれて助かったな。
頑張れば来れる距離だし、また今度来るとしよう。
そんなことを思いながら俺は、家へと向かって歩き始めた。