14 教会
翌日、今日もアルクは母親の様子を見るため早朝から出かけ、俺とイリスで市場に行くことになった。
薬は3日後には出来そうだと、アルクはそれはそれは嬉しそうに語っていた。
家族をほっぽって冒険者になったくせに、この変わりようである。人とは随分と変わるもんだな。
そんなことを考えているうちに、この前お世話になった商店に到着した。
「俺はあっちで見ている」
イリスは相変わらずの放任主義である。
とりあえず、新たな魔法の開拓のため魔石を買うことにした。
「お、この前の坊ちゃんか今日は何の用かな?」
「…魔石が欲しい」
「魔石かい?それならこっちに並んでるから、適当に見てくれ」
そう言っておっちゃんは魔石売り場に案内してくれた。
おお、意外とたくさんあるな。
持っていない色の魔石もたくさんだ。
俺はワクワクとした気持ちを抑えショーケースに並ぶ魔石を眺める。
ふむ、水と風、炎の他にまだ覚えていない、黄色の土、紫色の闇属性の魔石も売っているな。
この銀色の魔石はなんの属性なのだろうか?
謎の魔石をしげしげと眺めていると、店主が声をかけてきた。
「お、坊ちゃんその魔石を選ぶとはお目が高い。それはとても珍しい時空属性の魔石だよ。」
時空魔法か!これは何かと便利そうだな!
とりあえず土と闇、時空属性の魔石を購入するとしよう。
「はいよ、合計で10万ギルだね」
そうそう、この世界のお金の単位はギルと呼ばれ、銅貨一枚で10ギル、銀貨で100ギル、金貨で1000ギル、ミスリルで一万、そして白金貨で十万ギルだ。日本円にすると、1ギル=1円くらいになる。
そのため、魔石の値段もそこそこ高いようだ。
まあ、魔物の素材全部で白金貨数十枚分にはなったため余裕はあるんだけどね。
俺は買った魔石をマジックバックに入れると、イリスと店を出た。
次に向かうところは教会だ。
この世界にも宗教観念はあるようで、この地域ではなんの因果か幸福神を信仰しているようだった。
教会は、よく結婚式などをやるあの教会と似ていて、レンガ作りの壁にステンドガラスの窓の綺麗だけど年季の入った建物だ。
中に入ると、太陽の光が差し込み幻想的な空間が広がっている。
子供の声がちらほら聞こえるのは、孤児院としても使われているから、らしい。
イリスがシスターのような格好をした女性に一声かけると、俺たちは真ん中の道を進み奥に向かった。
1番奥には大きな窓の前に巨大な像が立っている。イリスによるとこれが幸福神のようだ。
なるほど、確かにこれは幸福神に似て……いないな!!
そう、そこにあったのはゴリゴリにマッチョの高身長なイケメンの像だった。
「この像は伝承に書かれた情報をもとにして作られたそうだ」
そうイリスは言った。
その伝承は大丈夫なのか?幸福神のあの小柄な姿からは想像もできないが。
神には会えないので仕方ないといえば仕方ないか。
そう思っているとイリスが膝を突き、像に向かって祈り始めた。
俺も真似して、祈ってみる。む?なんだか暖かいような?気のせいか。
しばらく祈った後、イリスと共に教会に寄付をし、宿屋に戻った。
寝る前、俺はふと久方ぶりにステータスを見てみた。
【名前】コウ 【性別】男
【称号】転生者 不運な死を遂げた者 殺戮者
【年齢】超越 【魔力】203401/203401
【体力】150924/150924
【レベル】75
【加護】幸福神の加護 Lv.10
【スキル】???
???
???
無属性魔法 Lv.10
水魔法 Lv.10
光魔法 Lv.10
炎魔法 Lv.5
体術 Lv.8
鑑定 Lv.-
祈祷 Lv.-
この間のイーターフラワー大量討伐でレベルがだいぶ上がり、光魔法のレベルもついにMAXになった。
そして、
「祈祷……?」
いつのまにか新しいスキルを手に入れていたようだ。
祈祷と言えば、教会で祈ったときだろうか?
試しに使ってみよう。胸の前で手を合わせ、祈祷、と念じてみる。
すると途端に、俺の視界が白く染まった。