11 討伐任務
薬屋ではやはりどうにもならなかったが、アルク母の病名を知ることが出来た。
【オロナ病】、感染すると高熱や咳、倦怠感に加え手足の痺れなどの症状も現れ、悪化すれば死に至ることもある病気だ。アルクの母はこの病気にかかっているようで、治すための薬を作るには【人喰い花】という魔物の花弁が必要とのことだ。
俺たちはとりあえず一度、商店で聞いてみることにした。
「人喰い花の花弁〜?あいにく薬の材料となる魔物の素材は切らしていてね〜」
商店のカウンターにいた恰幅のいいおっちゃんはそう言った。
「そこをなんとかならないか?」
アルクが必死に頼むが、
「なんとかと言われても、ないものはないからね…取り寄せるにしても早くて数ヶ月はかかっちまうよ。」
うーん、数ヶ月も待っていたら病気が悪化してしまうな……
何か手はないものか……
2人が必死に考えているその時、
「人喰い花なら魔の森にいるのを見かけったって噂だぞ?お兄ちゃんたち、冒険者なら討伐したらいいんじゃないか?」
おっちゃんの言葉によって、俺たちは一度冒険者ギルドに行ってみることにした。
「人喰い花、ですか……」
前来た時と同じ受付のお姉さん、エレンさんは、後ろから何やら資料のようなものを取り出し、確認し始めた。
ちなみに、今エレンさんと話しているのはアルクだけである。
俺はアルクの後ろに隠れひっそりと話を聞いていた。
…だって、しょうがないだろう?
俺はアルクとイアンとの出会いで、数ヶ月ぶりに人とコミュニケーションをしたばかりなんだぞ?
女性と話すにはまだ心の準備が………な?分かるよな?(必死)
そうこうしているうちに、エレンさんが過去の報告を見つけたようだった。
「数日前から、魔の森でのイーターフラワーを目撃したとの報告が増えていますね。イーターフラワーの主な生息地は魔の森の西側でこちらには今までは天敵となるキラービーがいたため、南側には来ることはなかったのですが…」
あ、もしかして俺、なんかやっちゃいましたかね?
というか十中八九俺が原因だろうな。
レベル上げのためとはいえ、さすがに狩りすぎたようだ。今度からは気をつけよう。
俺がそう戒めているうちにアルクは言った。
「原因がわからないとはいえ、こっちからしたら好都合だ。イーターフラワーの討伐任務を回してもらえるか?」
「わかりました。」
エレンさんはそう言って、紙にハンコを押すとアルクに渡した。
「アルク様もAランクとはいえど、イーターフラワーもAランクの魔物、格下というほどではないので、お気を付けてください。」
アルクがエレンさんのその言葉に頷くと、俺たちはギルドを後にした。
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「2人とも、俺の勝手についてきてもらって悪いな」
「いつものことだ、気にしてはいないさ」
「……アルクの母さんには…元気になってほしいし」
俺たちはそんな会話をしながら、馬車に揺られていた。
無事宿を取り終えたイアンと合流し、さあ魔の森へ出発だ!という時に、イアンの勧めで魔の森の入り口までは馬車で行くことにしたのだ。
歩いて1日はかかるところを馬車を使えば数時間で行けるというのはとてもありがたい。
しかも、速いスピードを出しても魔法を利用して揺れも少なく、快適な旅をすることができている。
魔法があることで色々と便利なものが作られているんだな。
そう思っているうちに俺たちは魔の森へと到着するのだった。