2-39 ニャル 幼馴染との再会
本日もよろしくお願いします。
ニャルの名前はニャル。
猫獣人の女の子だよ。
いよいよ戦争の足音が近づいてきたある日、学校にお知らせがあったの。
簡易的なお家をたくさん作るアルバイトに参加しませんか、ていうお知らせ。
なんでも、戦争でゾルバ帝国軍に大勢の困った人が出るから、その人たちが1か月くらい過ごすためのお家なんだって。捕虜ってやつかな?
アアウィオルは自信満々だね。
でも、学園島で過ごせば、それが驕りではないってわかる。
いくらニャルが世間知らずでも、ここで修行した人たちが異常な強さになっているくらいはわかるもん。
バランスよく魔法を覚えるコースに進んだニャルですら超強くなったのに、戦闘特化のコースで頑張った騎士たちはもっともっと強いはずだよ。
まあそれはいいとして、アルバイトの件。
戦争中は学校がお休みなの。
学園には貴族の人も多いし、場合によっては先生たちも活躍するかもしれないから、さすがにお勉強どころじゃないんだと思う。
そんなわけで、その間、ニャル達は暇になるからアルバイトを受けることにしたよ。
転移門でアアウィオルに戻って、そこから先生の転移魔法でビュンなの。
転移魔法は凄いの!
でも、この魔法は教えてもらえないんだ。
学園島では凄い魔法や技術をたくさん教えてもらえるけど、転移魔法や転移門みたいに教えてくれないのもあるの。
もちろん、自力で覚えるなら話は別だし、先生はニャル達が頑張ればきっと覚えられるって言ってくれたよ。
さて、転移魔法でビュンってしたニャル達は、ブロジード侯爵領の平原地帯に来たよ。
「みなさん、今日はお仕事に参加してくださりありがとうございます。それでは事前に渡された番号札ごとに、こちらに掲げられた番号の旗の場所に集まってください」
アルバイトに応募すると、番号札を貰ったんだ。
この番号割りは、学園島で学んだことを参照してるみたいなの。
ニャルは3番。
魔法隊だよ。
アルバイトに参加している人は凄く多くて、子供も大人もいるね。
「ミャムム、大人の人に迷惑をかけちゃダメだよ。ちゃんとするんだからね?」
「うん!」
ミャムムは1番で、測量隊。
一応先生に面倒を見てもらえるようにお願いしたけど、大丈夫かなぁ。
1番の旗の方へててぇっと向かうミャムムを見送り、ニャルも自分の隊へ向かった。
ニャルの3番隊は魔法隊なわけだけど、人気なコースだったから一番人が多いかも。
「私たちは土地の整備を行ないます。土地を平らに均し、1番隊の指示で地面に穴を開けていきます」
「「「はい!」」」
先生の説明にニャル達は元気にお返事して、お仕事を始めたよ。
みんなで平原に広がって、魔法で草を刈ったり、地面を平らにしたり。
魔法使いがたくさんいるから、広い範囲があっという間に整地になっちゃった。
そんな整地を先生たちが歩いていき、時々、手直しする。手を置いてピカーッてして終わり。入学した時期がまちまちだから、やっぱり実力に差があるんだ。
ニャルの担当した場所にも来たけど、ニャルのところは大丈夫だった!
それが終わったら、測量班の子たちが土地に線を引いて目印にしていく。
ミャムムもちゃんとお仕事をしていて、貴族っぽいお兄さんたちに混じって、魔法で作った赤い光の玉を浮かせてる。
専門的すぎて何をしてるのか全然わからないけど、変な魔道具を覗き込んでいるお兄さんが指示を出すとミャムムはちゃんとやることがわかっているようで、別の場所にててぇっと走って、また赤い光の玉を浮かべるの。
お兄さんがちょいちょいと手でサインを送り、ミャムムはそのサインを見て少し右に移動する。お兄さんが手を上げて、オッケーらしい。なんだか凄くプロっぽい。
「ミャムムちゃん凄いじゃん。なにしてるのか全然わかんないけど」
同じ3番隊のお友達が、ミャムムを褒めてくれた。
「うん。思ったよりちゃんとしてた」
妹のそんな成長を確認しつつ、ニャルも次のお仕事が始まった。
下水道を作るの!
……本当に一時的に暮らす場所を作ってるのかな?
下水道なんて、下手をすればおっきな町にもないけど。
いっぱい人がいただけあって、推定で5万人が暮らせる町が1週間でできちゃった。
まあ、全部おんなじ家で、その家自体も魔法で土を固めただけの飾りっ気のない長方形の箱なんだけどね。本当に寝るだけの家。長屋っていうタイプの家なんだって。
でも、ニャルが昔住んでたボロ小屋よりは過ごしやすそうかな。
最終日は家の中に毛布を入れたり、入口にカーテンを取り付ける作業をしていたんだけど、遠くの方で凄い音がいくつもした。
きっと戦争が始まったんだ。
「お姉ちゃ、大丈夫かな」
一緒に働いているミャムムがお耳をペタンとして尋ねてくる。
「ダメだったら避難するように言われるから大丈夫だよ」
自分で言って、凄く納得のいく説明だなとニャルは自画自賛。
ミャムムもコクリと頷いてちょっと安心した様子だよ。
音はすぐに止んだ。
ニャル達のお仕事も終わり、先生の前に整列。
「みなさん、お疲れさまでした。ひとまず、みなさんが気になっているであろう戦争についての報告ですが、アアウィオルの勝利で終わりました」
その言葉に、おーっ、とそこかしこで歓声が上がった。
先生が手を叩いて、そんな歓声を抑える。
「自分の国が勝つのは喜ばしいことですが、相手側の兵士にも辛い事情があったかもしれません。あなた方も兵役を断れない事情を持つ人が多くいるのは想像がつくでしょう」
うむ、ニャルは平民だから想像できるよ。
「今回の戦いで捕虜となったのは、戦争が始まる前に女王陛下からの降伏勧告を受け入れた人たちです。戦場に来たのに戦う前に降伏するのは、勇気や他者を想いやる優しさが必要です。ですから、相手をバカにしたり、いじめるようなことをしてはいけませんよ」
先生の言葉に、みんな素直に頷いた。
気の荒い子だっているだろうけど、そんなつまらないことで学園島から追い出されるようなことがあったら大変だもん。
それから最後のお仕事が始まった。
戦争で負けたゾルバ帝国の人たちが大勢やってきたんだ。
すんごく多い。
3万人くらいいるんだって。
その人たちは、町の入り口に設けられた凄く長い受付カウンターの向こう側にいた。
カウンターを挟んだゾルバ帝国の人達とニャル達。
その格好は悲しいほどに差があった。
行軍でボロボロになった服や靴の人達。心も体もクタクタだって、一目でわかる。
ニャルは……ううん、見習い冒険者だったほとんどの子たちが、あの子たちの格好に昔の自分の姿を重ねていたよ。
そんなゾルバ帝国の人たちだったけど、全員が顔を真っ青にしていた。カウンターに並ぶように指示が出されるけど、動き出したのは少しだけで、ほとんどの人はその場から動けないでいた。
どんな戦争だったのかはわからないけど、凄く怖い目に遭ったに違いない。
一番に受付を終えて、傭兵っぽい人たちがこちら側に来た。
この人たちは青い顔をしておらず、神妙な顔をしていた。
「こっちです。案内します」
ニャルたちの最後のお仕事は受付を終えた人たちを案内する係なの。
ニャルたちの出番はまだで、傭兵の人たちは大人が案内したよ。基本的に、大人は大人、子供は子供、女の子は女の子が案内する感じだね。
そういうお仕事だからミャムムは参加せず、先生に預けてあるよ。
そうこうしていると動き出さなかった人たちもカウンターに並び、忙しくなってきた。
もうそろそろニャルが案内する番というところで、ハッとした。
「にゃんと!」
ニャルは急いで次の案内係としてスタンバイしている子の下へ走った。
「ごめん、順番を代わってくれない?」
「え。別にいいけど。あんた、ニャルちゃんでしょ? どうしたの?」
違うクラスの子だから初めて話す子なの。
「次に来る子が昔の知り合いなの」
「超偶然じゃん。いいよー」
順番を代わってもらったニャルだけど、すぐになにを話せばいいのかわからないことに気づいた。
向こうも3等民だったし相当に大変な人生を送っていたはずで、もしかしたら弟妹は死んじゃっているかもしれない。そんなだから迂闊な世間話も難しい。
そんなことを考えていると、5人の女の子がニャルのところにやってきた。
全員が不安そうにきょろきょろと周りを見て、そして、ニャルの姿を見て平伏しようとした。たぶん、格好が綺麗だから貴族と間違えたんだと思う。
貴族はカウンターで受付をしていた人たちだけどな!
「貴族じゃないよ。だからそんなことしなくて大丈夫だよ」
ニャルがそう言うと、5人はビクビクしながら頷いた。
返事はないけど、彼女たちの立場なら仕方ないと思う。
ニャルの知り合いの子はニャルに気づかなかった。
まあ、無理もないよね。もう何年も前の話だし、リゾート村でニャルはピカピカになっちゃったから。
「こっちだよ。ついてきて」
ニャルは予め指示された手順通りに、まずは大浴場に連れていった。
大浴場といっても、細長い通路がいくつも区切られた建物なの。
通路に入ると、ニャルのお耳と尻尾がビビッてしたよ。
以前はわからなかったけど、いまなら見破れるよ。虫殺しの魔法陣が起動してるの!
女の子たちの体からピョンピョンと黒い虫が跳ねて地面で死んじゃった。でも、女の子たちは気づいてないみたい。というか、不安でそれどころじゃないんだと思う。
「もう怖いことなんてないから大丈夫だよ。大丈夫。大丈夫。だーいじょうぶ!」
だから、ニャルは5人を1人1人抱きしめて、慰めてあげた。
5人はポカンとしていたけど、1人が泣き出すとつられて全員が泣き出しちゃった。
うむ。ニャルの愛が人を救ったの!
ニャルは5人を通路の次の間へ連れていき、そこで裸にしたの。
あれ、5人とも股が紫色になっている。ゾルバ人ってこんな感じだったっけ?
「ひ、ひぅ……ち、違うの。これはお薬を塗ってわざとこうしてるの」
女の子たちは真っ青な顔でそう言った。
わざとこんなことするんか? よくわからないけど、まあ先生がどうにかするでしょ。
次の間には回復魔法の先生がいるの。
先生は5人の目や口、股などを見て言った。
「乙女の守り薬か。夏場に使ったとなればさぞ辛かっただろう」
先生はそう言うと、5人に回復魔法をかけてあっという間に治しちゃった。
5人がポカンとしているので、ニャルは乙女の守り薬がなんなのか尋ねた。
「女性が冒険者や兵士をやっていると性的な暴力に襲われることがある。昔の女たちはこれを防ぐために一時的にフラガ病という性病に似た皮膚炎を起こす薬を作った。それが乙女の守り薬だ」
「にゃんと……」
「これは女だけの秘密の薬なんだ。決して男には言ってはいけない。これは女たちの掟なんだ。わかったね?」
「はい!」
ニャルは元気にお返事した。
治療が終わり、次の間はお風呂なの。
お風呂といっても、座ってのんびりするお風呂じゃないよ。すんごく大勢の人がいるから、ゆっくりしている暇なんてないの!
ニャルの胸くらいまでお湯が入った道を5人に歩いてもらう。
はい、ちょっとだけ潜ってぇ。
この子たちの前にも使っている人がいるから、お湯はすんごく汚れちゃってる。もうそろそろ入れ替えかも。
そうして階段を上がると、今度は体を洗うの!
ニャルは知り合いの子をお手本にして、体中を泡でもこもこにしたよ。……1回じゃダメだな!
リゾート村で初めてお風呂に入った時のことを思い出すの。ニャルも合計3回は洗わないとダメだったよ。
すっかりピカピカになった女の子たちは、お互いを見てびっくりしてる。
そうして、最後にまたお湯の道に入るよ。こっちは最初のお湯の道とは違って、洗った後に入るから綺麗なお湯なの。
今度は少しだけゆっくり入ってもらうけど、そうするとまた1人の子が泣き出しちゃった。うむ、ニャルも覚えがあるの!
お風呂から出ると、最後に服をプレゼント。
かつてリゾート村でニャルが貰った普段着よりも出来が悪い服に思える。たぶん、リゾート村の被服コースの人たちが修行で作った物だと思う。
でも、5人にとってはびっくりすることだったみたいで、また1人が泣きだしちゃった。この子は泣き虫だな。
「て、敵だったのに、なんでこんなに良くしてくれるの?」
知らぬ!
でも、なにか言ってあげないとダメだと思ったから、さっき先生が言っていたことを言っておいた。
「戦う前に降伏するのは勇気や優しさが必要なの。たしかに、みんなは戦争をしようと思って戦場まで来たんだと思うけど、最後の最後にアアウィオルと戦いたくないって思ったのなら、もう敵じゃないの!」
ニャルがそう言うと、5人は顔を手で覆って「ごめんなさい」って泣いた。
うむぅ! ニャルもやるようになったの!
お風呂が終わり、綺麗な服に着替えたら、今度はご飯!
料理人コースの人たちがモリモリ作ってる!
5人もご飯を貰ったよ。クリームシチューとパンか。じゅるり。
「ひっくぅ、うぐぅ……」
こ、こいつめ、ご飯を食べてまた泣いてる!
メンタルが完全にぶっ壊れてるの!
ニャルは泣き虫な女の子の背中をせっせと撫でて慰めてあげたよ。
ご飯を食べ終わると、次の任務。
お家へ案内するんだ。
女の子たちは受付で割り当てられた家があり、ニャルはその番号に案内するわけ。
赤の25番か。
えーっと……。
ニャルは長屋の屋根に立てられている旗を確認した。
長屋は似たような造りだから、屋根に立てられた旗の色で覚えられるようになっているんだ。
赤は……あっ、あった。
「ここは似たような建物ばかりだから、この赤い旗をよく覚えておくんだよ。このあたりは女の子しかいないから安心してね。で、みんなのお家は25番。ここに刻まれた25っていう数字も覚えておくこと」
ニャルはそう説明しながら、お家に案内した。
ちなみに、25って数字は玄関の上に刻まれているよ。
「こんないいお家を使っていいの?」
「うん」
お家は魔法で壁と屋根を作っただけのもの。いいお家ではないがな。
でも、昔のニャルなら同じことを思ったかも。ニャルも贅沢になったものだな!
カーテンを潜ると中は一部屋だけで、毛布と枕が畳んで置いてあった。
あとは単純な仕掛けの水の魔道具と排水設備があるだけ。
「この毛布と枕は1つずつね。これはこの町の見取り図ね。ここが赤組のおトイレで、ここがお風呂」
ニャルが説明を続けていると、1人の子がおずおずと尋ねてきた。
「あ、あの、あたしたちはなにをするの?」
「え? どゆこと?」
「だって、捕虜って働くんでしょ?」
「え。わからぬ。明日には何か言われるかもしれないけど、そんなに難しいことはしないんじゃないかな?」
学園島の授業で奴隷は非効率だって聞いた。
その時はまだ専門コースに入る前だったから意味がよくわからなかったけど、いまならわかるよ。
だって、奴隷が10人で仕事をするよりニャルが1人で仕事した方が早いし。もちろんニャルが得意な魔法で解決できないこともあるけど、そういうのは他のコースの子を使えばいい。
アアウィオルで奴隷を使うのなら、学園島で学ばせなければ使い物にならないと思う。
あれ?
じゃあどうして、この子たちはここでしばらく過ごすんだろう?
うーん、わからぬ!
「それじゃあ、みんな名前を教えて」
わからないものはわからないので、とりあえず、ニャルは玄関口でみんなから名前を聞いていった。
その名前を1つずつ、玄関の横の壁に魔法で刻み込んでいく。
「魔法が使えるの?」
「うん。アアウィオルだとみんな使えるよ。使える魔法の種類は人それぞれだけどね」
「……なんでゾルバ帝国の偉い人はアアウィオルに戦争を挑んだんだろう」
「先生が言ってたけど、土地と奴隷が欲しかったんだって。ゾルバ帝国にはもう貴族に分ける土地がないからアアウィオルの土地が欲しいの。奴隷はまあ欲しい人は欲しいんじゃないかな?」
「でも、大人は正義の戦いだって言ってた」
「自分たちが悪者の戦争をこれからするとは誰も言わないよ。創造神様が見てるもん」
「……そうかも」
そして、5人目が名前を言った。
ニャルの知り合いの子だ。
「お、オリビア」
やっぱり!
いかんせん結構前に別れた子だったから、もしかして違うかもと思い始めていたけど、やっぱりそうだった。
ニャルはオリビアちゃんの名前を刻みながら尋ねた。
「ロウとメイは元気?」
「え?」
キョトンとするオリビアちゃんに顔を向ける。
「ニャルだよ。昔、隣に住んでた、ニャル」
そう告げた瞬間、オリビアちゃんは顔をくしゃっとさせた。
「ニャルちゃん、生きてたんだ」
「うん。お別れも言えなくてごめんね」
「ううん。あのままあそこにいたら、それこそニャルちゃんたちは死んでたよ」
ニャルたちは猫獣人。
獣人はゾルバ帝国で扱いが凄く悪いの。
「だからお母さんに連れられてアアウィオルに逃げた。お母さんは死んじゃったけど、ミャムムは元気だよ」
「そう。ウチもお母さんは死んじゃった。戦争に行くからロウとメイは残してきたよ。隣のおじさんに任せてきたし、きっと大丈夫な……はず」
オリビアちゃんの弟妹も生きてるのか。良かった。
でも、なんだか心配そう。
「2人がどうしているか見てあげようか?」
「え。そんなのどうやって?」
「遠見の魔法だよ」
「ニャルちゃんはそんなことができるの?」
「うん」
「……同じ貧民だったのに、どうしてあたしたちはこんなに違うんだろう。なにが……なにが違ったんだろう」
そう言ったオリビアちゃんの目には、少し暗い陰の色が見えた。嫉妬や羨望、諦めのような色だ。
でも、そんな感情は誰でも持っている。
汚いものだと遠ざけたら、もっともっと濁った色になっちゃう。
「ニャルだってついこの前までは生きるか死ぬかの生活だったよ。世界はきっと良くなっていく。ニャルはそれを少し早く受け取れただけ。オリビアちゃんたちもこれからそれを受け取るんだ」
ニャルはそう言って、オリビアちゃんとついでに隣にいた子の手を握った。
「本当に敵だったあたしたちも幸せになれるの?」
「うん。幸せになりたいと願い、頑張れば。ニャルは頑張ったよ。だから暗い道に足を踏み入れたらダメだよ」
ギール君やミャムムと旅をして、辿り着いたリゾート村で頑張ってお勉強をした。だから、未来が開けた。
あの瞬間、ギール君の誘いに乗らずに待っていたら、きっと幸せを逃していたと思う。
目に希望が宿った5人に頷き返し、ニャルは遠見の魔法を使ってあげることにした。
お家の中に入り、闇魔法の玉を浮かべる。
闇魔法といっても黒くはないよ。むしろ光の魔法と思えるような綺麗な魔法なんだ。
「ロウとメイのことを思い浮かべて。この魔法は魂の繋がりを辿るんだ」
家族や親友なら遠くにいてもはっきり見られるけど、知らない人や1、2日程度の付き合いの人の姿は見られない。あとはレジストされると見られない。これはそういう魔法だ。
ニャルの説明を聞いて、オリビアちゃんは玉の前で眉毛をムムムとさせた。
ロウとメイか。
ニャルがお別れした時はまだ赤ちゃんだったけど、どんな子に育っているかな。
ニャルがそんなことを思っていると、玉の中に小さな男の子と女の子の姿が映し出された。
「「「っ!」」」
その様子を見て、全員が息を呑んだ。
オリビアちゃんの弟と妹は、たくさんの子供たちと一緒に牢屋に入れられていたんだ。
読んでくださりありがとうございます。
ブクマ、評価、感想、大変励みになっております。
誤字報告も助かっています、ありがとうございます。




