(※「シン・ウルトラマン」未視聴)ポスト「大怪獣のあとしまつ」の映画として「シン・ウルトラマン」機能するか、それが及第点にいたるか否かだ。
私は「シン・ウルトラマン」を見ていません。よって、ネタバレや感想文では無い、私の妄想となります。御了承ください。
※文章に書いてある「四丁目の夕日」はかなりショッキングな漫画です。もし調べる方がいらしたら、注意してください。
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皆さんは「四丁目の夕日」という漫画をご存知だろうか? この質問が「大怪獣のあとしまつ(=以下、あとしまつ)」と「シン・ウルトラマン」にどうつながるかというのは、筆者の内宇宙にとっては極めて重要なのでどうかお付き合い頂きたい。
それは「ガロ」という伝説の漫画雑誌に載っていた鬼畜系=主人公がとにかく悲惨な目にあって読者がその様にサドだかマゾだかを刺激されて悦に浸る、という楽しみ方をする漫画である。
主人公は高校一の秀才で、東大を志望するが安全のために絶対受かる一橋にレベルを落として親を安心させるか、というほどである。彼の家は貧しい印刷所であり、父としては息子を立派な大学に行かせてこんな貧乏経営を息子に味わわせたく無いと考えている。そんな一家に鬼畜が降り注ぐ。母は庭で焚き火をしていたら不注意でガス爆発を起こして全身麻痺の重傷を負い入院した。父は息子の大学と母の入院費のために闇金にまで手を出して新しい印刷機を買いもっと金を稼ごうと仕事に奮闘するが疲労で気が抜けた瞬間に印刷機に体を巻き込まれバラバラ、見るも無惨な死に方をする。そんな遺体をやっとのことで棺に入れ葬式をしていると闇金の取立てが来て葬式を荒らし回り、棺からつぎはぎで奇怪な父の遺体が転げ落ちる。その後、主人公は闇金にすべてを奪われて東大などという余裕は無くなり高校を退学、陰毛の入ったような臭い飯を日々食べながら、残った妹弟を養うために働く。見せ場はここ、そんな天から地獄へと堕ちた生活の中で主人公は慶大に進学した同級生の友と出会う。因みに友は主人公が付き合っていた彼女とくっついていた。彼ら三人はファミレスでお茶をするのだが、地獄に堕ちた主人公は鼻水をずるずるとすすりながら100万円でポルシェが欲しいと大声で騒ぎ立てる。その前の雨の中での友と彼女との出会いは、堕ちた主人公の汚い顔があまりにショッキングである。
私は初めてこの漫画の紹介文を読んだ時、「なんて非道い漫画なんだ!」と衝撃を受け買って読んでみると、思い描いた非道さが10であるなら、実物の漫画は6ぐらいであった。漫画として読んでみると、読み物として配慮されたのか、かなりコメディチックで軽くなっていた。
長々と書いたが、「あとしまつ」に戻ると、「あとしまつ」を聞いて思い描いた非道さを10とするなら、実物の映画は100を平気で叩き出しそうな気がして恐い。もしかしたら私の今後の創作人生を狂わせてしまうのではないかと恐怖に駆られ見られないので、非道の10で話をする。
「あとしまつ」の後始末とは、怪獣の死体の後始末だが、その怪獣とはすなわち人間という名の怪物の後始末、『観客』が人間という名の怪物の後始末をするという意味、ではないだろうか。怪獣映画において怪獣というのは災害としてのディザスタームービーの要素か、もしくはデウスエクスマキナのようにその一挙手一投足でストーリーを操ってしまうそういった神の性格が与えられがちである。そしてこの「あとしまつ」には、一流の特撮クリエイターが集まっており、そういった怪獣の性格を描くに十二分な力が備わっていた。しかしスクリーンを占拠する怪獣とは、他でも無い人間である。これは画期的ではないか。怪獣映画において災害や神に等しい性格を有しそれを表現する土俵でありながら、怪物たる人間を描いている。ここでこういった言い回しをするのは倫理的にどうかわからぬが、今の世界情勢を見ると街を焼き払いし瓦礫の山を作り世界を叩き壊すということにおいて、人間も十分に怪獣たりうるということを、我々はここ数ヶ月で身を持って知った。怪獣という存在を映画内に置きながら、怪物のごとき人間を描いているというのなら、それは怪獣映画の歴史に残る一石ではないだろうか。だとしたらこれからのポスト「あとしまつ」の怪獣映画が描くべきなのは、
〈災害、神の性格を有した怪獣〉
と、
《街を焼き払い瓦礫の山を作り世界を叩き壊すほどの怪物としての非道な人間》
の、それらとの関係性や衝突、変革ではないかと考える。
そういえば、「シン・ゴジラ」もあれは人間牧ゴローではとの話もある。1954年の「ゴジラ」も、水爆実験という人間の非道を土台として構想された。怪物=人間ならば、「あとしまつ」もその派生系ではないだろうか。
つまり、「シン・ウルトラマン」がこの、ポスト「あとしまつ」の先を行かなければ、私としては及第点には届かないということである。
「シン・ウルトラマン」見ました。
好きな「ウルトラマングレート」を80点とすると、
「シン・ウルトラマン」は70点、そして庵野秀明と「円谷」への怒りから減点し、64点です。
映画として、「平成ガメラ」の方がいいです。あれが至高です。
「川北ゴジラ」もいいです。造形と特撮が素敵です。