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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
三章 中央区
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青堀神社 4

 その日、夕飯を食べ終わり皆早めに就寝する。家具を売っている店が有り、ベッドを解放しようとしたのだが一個だけで魔石を100個以上消費する結果となった。

 結局魔石を温存する為一個だけしか解放せず、今日は荻菜さんに使ってもらう事に決まる。因みに菅谷は縛ったまま寝ている。


 そして、俺はオブジェクト化したままの、硬いベッドの上で考え事をしていた。

 俺は今どうしてもトリセツに聞きたい事があった。それは最悪の事態になった場合に、神社の勢力を無効化する為に必要な事だ。

 青堀神社に行き、手伝いでもしてれば敵対することは無いだろうが……もしハクシンとやらが支配領域を増やしていくつもりなら、互いに潰し合いになる事は避けられないだろう。


 菅谷の強さを見た限り、普通に戦えば勝てるとは思う。だが、相手に強力な『ホープ』持ちが居た場合は仲間が危険な目に遭う可能性も有る。


 だから俺は出来る限り、戦いになる事は避けたいと思っていた。勿論、黒薙のように振る舞っているのなら心置きなくやらせて貰うが……話を聞いた限り青堀神社内はそういうわけでも無さそうだ。


 これから状況がどう転ぶかは分からない。選択肢は一つでも多く持っておくべきだろう。だから、トリセツ。話を聞かせろ。



 そう考えながら、俺は瞼を閉じた。




♦︎



 ——そして、気がつけば俺は真っ白な空間に立っていた。どうやら俺が願った通りにいったようだ。


「うう……わたしも暇じゃないんですよう。こうして現れるのも、何かある時だけにするつもりだったのに」


 そういうのはいつもの幼さの残る少女、トリセツ。今回はサイズオーバーのパーカー一着の姿になっているが、そんなのは無視だ。


「俺のサポートの筈なのに裏で何してんだ。ちゃんと仕事しろよ」


「でもでも、最近ご主人様が危なげなくて、見ててつまらないんですよう。だから他のサポートの邪魔して楽しもうかなーって。あ、この格好どうですか?かわいい?」


 他のサポートの話は少し気になったが、俺はトリセツの言葉を無視して質問する。


「それなら一つくらい有利になる情報寄越せよ……。それは置いといて……トリセツ、聞きたい事が有る」


 トリセツは口元に袖を当て、あざとい仕草をしつつ上目遣いをする。……今回は無視するぞ。


「聞きたい事が有るなら、相手の機嫌を良くするのも交渉術の基本だと思うんですけどねー」


「お前の機嫌を良くしても、何一つ良いことが無さそうだからな。さて、どうせ俺の聞きたい事は分かってるんだろ?さっさと答えろ」


 トリセツはサポートの能力なのか、俺の考えている事が何故か分かる。そのせいで俺にプライバシーなんてもんは無くなっている。


「区役所を支配した時の恩恵ですよね?いやーご主人、悪どい事を考えますね。流石の私でもそんな事しませんよ?あ、残念ながら質問には答えられません。でも……その光景に困る連中が見てみたいですねー」


 やはり、サポートとしては答えられない内容なんだろう。だが、俺の考えが違うなら、ハッキリと違うと返せた筈だ。……前もそうだったように、これは肯定と考えても良いのだろうか。


 俺は何も言わずにトリセツと目を合わせる。すると、トリセツは満面の笑みを浮かべる。


「……答えられない、か。分かった、もういい帰っていいぞ」


 俺がそう言うと、トリセツは口を尖らせ不満そうにする。


「えー!やる事やったら帰っていいって酷くないですか!?ご主人様、最初はあんなに優しかったのに……」


「言い方考えろよ……それに、俺は元々お前に優しくした覚えは無いぞ」


 元を辿れば、取扱説明書の時からダメなやつと決めつけてたしな。


「うふふ……ご主人様、いつか絶対に後悔させますからね……」


 トリセツは光が消えた目でそう呟く。


「後悔させたいなら……手放したく無くなるような補助をするんだな」


「ふーんだ!なら、また他の子の所にいっちゃいますよ!」


 ……そういえば、他のサポートに干渉してるって言ってたな。サポートとして、それは有りなのか?


「干渉出来るなら、ランキング上位の『ホープ』でも教えてくれよ」


「そんなの、無理ですよぅ。マスターに呼ばれた会議室以外は、サポート付きとの距離が近くないと……」


 トリセツはそこまで言ってハッとした顔をする。


「あ、いけなーい!余計な事言ったせいで、またマスターに怒られちゃう!」


 わざとらしく舌を出すトリセツ。コイツ、絶対に今の情報をわざとバラしたな。


「そうか、ペナルティでサポートをクビになると良いな」


 俺はトリセツに微笑みながらそう言った。


「もう!わたし、絶対にクビになったりしませんから!ご主人様が振り向くその時まで!必ず!では!」


 トリセツはそう言い残し姿を消した。一人残された俺は、胡座を掻きながら考え事をする。


 ……サポート付きが近いと言い残していったのは、俺に注意を促したのだろう。流れから察するに……青堀神社の勢力にサポート付きが居る可能性が高いな。


 やはり、ハクシンというやつがサポート付きか?それか菅谷も能力を考えるに、充分可能性は有るが……。

 サポートが付いているだけで、厄介なのは間違いないし、俺と争う可能性が高くなる。事態が片付くまで用心してないと……相手に足元を掬われそうだな。



 俺は溜息を吐く。


 トリセツのやつ、余計な問題を増やして去っていきやがった。だが区役所の件も有るし、今回だけは感謝してやる。

 ……絶対に直接言わないがな。


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