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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
三章 中央区
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拠点 8

 ライフルから放たれた銃弾は、ボスの左肩へと当たった。貫きはしないものの、肩からは血が噴き出すように流れる。

 俺はすぐに銃のレバー操作し銃弾を装填し直す。ただし、その動作のせいでまた構え直しになり、狙いもやり直しとなってしまう。


 ……これなら連射を付与して武器修復(ウェポンリペア)の方が遥かに火力が出るな。


 まあ、今回の失敗は次に活かせばいい。俺はすぐに二発目を発砲する。今度は右の脇腹に当たり、小さくは無い傷を負わせた。だがタイムアップだ。ボスの動きが速く、もう一発は撃っている余裕は無い。俺はライフルを諦め、横に待機していた爺さんに向かって声を上げる。


「爺さん!」


 俺の声と同時に、爺さんは刀を構えて俺とボスの間に立ち塞がる。俺はライフルを地面に投げ捨て、腰の拳銃を両手に持ち、ショットガン二丁を兵器操作(ウェポンコントロール)で宙に浮かせる。


 そこで、爺さんがボスと交戦する。赤い獣人型のボスは爪による切り裂きで攻撃しようとするが、爺さんはそれを両手の刀で上手く流していく。


 どんな攻撃だろうが見えているのだろうか。その反射神経は元々なのか、それとも魔物を倒したお陰なのか……。


 暫く爺さんとボスの攻防を見ていたが、刀と爪で押し合う形になった。これなら……。


「行くよ!」


 俺が指示を出す前に、椿は動き始めていた。ボスの側面から駆け寄ったかと思うと、『迅速行動(ファストアクション)』により姿が消え、気がつくとその拳がボスの体を捉えていた。

 椿はすぐにボスから離れると、椿が先程まで居た位置を、爺さんを弾きながらボスの爪が襲う。


「儂とやり合ってて余所見とはのう……」


 爺さんが自身からボスの意識が離れたと分かり、その隙を付いてボスの右太腿を斬りつける。その斬り傷は浅いが皮膚で弾かれるような事は無いようだ。

 ボスは慌てて二人から距離を取ろうと後方へと跳躍する。


 俺はそれを察知し前に駆ける。そして二人に当たらない位置で、拳銃とショットガン、四丁を同時に発射した。

 ショットガンの散弾がボス全体を襲い、『連射』拳銃の銃弾が次々とボスの体に穴を開けていく。


「グルォッ!!」


 今回、ショットガンに付与したのは『威力』と『衝撃』。散弾一つ一つでは威力が低くて皮膚を貫けなくても、衝撃だけなら伝わる筈と思っての特性だ。

 そして、俺の目論見は成功する。『衝撃』が付与された散弾により、ボスはその衝撃に耐えられず大きく体を退け反らせる。それは着地した直後の不安定な足元では、耐えられるものでは無かった。


 ボスはそのまま後方へと倒れていく。そこを椿が二撃目で追い討ちをかけ、遅れて爺さんがボスの側面を斬りながら走り抜ける。

 ボスはそのまま地面に倒れるが……地面に打ち付けられた反動を利用してそのまま体を起したようだ。


 爺さんはボスの後方。椿は側面。俺とボスの間に邪魔する者は居ない。


 ……これは来るだろうな。


 俺はそう思い、宙に浮かぶショットガンの弾をポンプアクションにより装填する。


武器修復(ウェポンリペア)……」


 そして、拳銃にも銃弾を補充。そこで、ボスが足で地面を強く踏み込む。


 踏み込んだのが右脚だったからか、爺さんに斬られた傷から血が噴き出す。爺さんは利き足まで考えて斬ったんだろうか……?


 ボスが地面を蹴り、そのままかなりの速度で突進し俺へと迫る。だが、踏み込みが足りないのか俺はそれを考えながら対応する余裕が有った。

 俺は横に跳躍し、ボスの突進を回避。更にボスが通り過ぎる手前で、ショットガンをボスの至近距離で発砲する。


 その衝撃で横に吹き飛ぶボス。これは、俺への追撃は無理だろうな。

 横へ吹き飛ぶボスの背中を椿の能力により、速度と威力が増した強打が襲う。拳は背骨に当たったのか、何かが砕けるようなメキョッという鈍い音が聞こえた。



 椿はまた一撃離脱。その空いた空間に爺さんが入り込み、両手持ちで強く踏み込んだ—— 一閃。ボスの背中は大きく切り裂かれ……ボスはそのまま地面に倒れ込む。


 椿と爺さんが動いている間、俺はショットガンの兵器操作を止め、ライフルを二丁とも引き寄せた。

 

特性付与(エフェクトグラント)。『連射』、『武器修復(ウェポンリペア)』」


 俺は両手にライフルを持ち、『連射』を付与して修復で弾を補充。そこで、妙案を思い付く。


 ああ、そうか……兵器操作でボルトを引けば良いのか。


 そう思い俺はすぐに実行する。すると、案外すんなりボルトを引いて戻す事ができた。よし、後は……。


「爺さん!」


 俺の声で爺さんは後方へと跳ぶ。これで外しても当たることは無い。

 俺は両手に持ったライフルの引き金を——引いた。


 放たれた銃弾は計六発。それは、赤い獣人の頭を吹き飛ばすには充分な威力だった。周囲に血等が飛び散り……それは、ボスの最期だと告げているようだった。


 ボスの体はそのまま前のめりに倒れ、すぐに消失を始める。


 俺はそれを見ながら、ライフルを地面に置いて脇を摩る。


「いてて……」

 

 俺はライフル二丁を持つため、銃床ストックを脇に抱えていた。だが、その反動が予想以上に大きくて脇が少し痛い。身体能力が上がって居なければ、骨が折れていてもおかしくは無かった。


「お、終わったのか?」


 椿が恐る恐るボスに近づく。


「……ああ、椿は初めて支配する所を見るのか。ボスの体が消え始めれば大丈夫だ。ただ、二匹居る時もあるから注意しろよ」


 俺の言葉に椿は頷く。そして暫く眺め、ボスが消えた場所にはやはり白い玉が残っていた。


 ……商業施設は白なのか?


 そんな疑問を抱きつつ、俺は白い玉を拾った。そうすると、建物内の赤黒い色は消え、照明の無い普通の建物に切り替わる。


「わ!何だ!?」


「この領域が魔物から解放されて、支配状態になったんだ。これでここは俺達だけの物になる」


 椿は驚いた顔のまま、周囲を見渡す。


 さて……すぐに早瀬さんと荷物を領域内に移動するか。また他の連中に来られても困るしな。


 そうして挙動不審な椿を置いたまま、俺は銃を回収してエスカレーターを降り始める。尚、爺さんは既に居ない。余韻も何も無いな……。


「あ、おい!待って!」


 慌てて追いかけてくる椿。

 俺はそんな椿に見えないように背を向けながら笑ったのだった。

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