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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
三章 中央区
85/142

拠点 1

 二人と会った翌日から、俺達の商業施設攻略は始まった。


 予定通りに俺達三人は他の仲間と別れ、最初に攻略予定の建物前へと到着した。そして、椿は俺の作った、一部が金属となっている手袋を着用していた。俺は安全面から銃を使う事を勧めたのだが、彼女は直接戦う事に自信が有るようで、首を縦に振る事はなかった。


「今日は見ているだけでも良いぞ。俺と爺さんだけでも雑魚なら問題無い」


 俺は椿を気遣ってそう言ったつもりだったのだが、彼女はそれを試されてるとでも思ったのか顰めっ面で返事を返す。


「私だって戦える!むしろ、あんたらが足を引っ張って怪我したりすんなよ!」


 元々、負けず嫌いな性格なのだろう。感情的になって一人で動かなければ良いんだが……。

 そんな不安も覚えつつ、俺達は渦の中へと足を踏み入れる。爺さんの後に行かせた椿は少し戸惑いながらも、意を決して渦の中へと飛び込んだ。

 そんな勢い良く入ると、渦の先でぶつかるぞ……?俺は呆れながら渦の中へと入っていった。




 俺はすぐに周囲の様子を伺うが、渦の有る入り口付近にはやはり魔物の姿は無い。街中には魔物が溢れているにも関わらず、魔物は渦に近づかないのか?


「うわ……何というか……凄い光景だな……」


 椿が現実離れした赤と黒の空間に圧倒されていた。


「渦に入るのは初めてなのか?」


「いや、だって、明らかに危ない雰囲気があったし……」


 彼女の直感なのだろうが、その行動は正しいと思う。素手の場合きっと、青いゴブリンの皮膚の硬さには苦労するからな。


「灰間の小僧。ここは最初のスーパーより手強そうだのう」


 爺さんは建物内の雰囲気から察したのだろう。俺も確信は無いが、肌に感じるピリピリとした感覚は強いような気がする。


「椿、絶対に単独行動は禁止だ。それと、最初は俺達が戦う。まずは敵の動きを見て、格闘でどう戦うかイメージしろ」


「わ、分かってるよ。最初は言われた通りにする」





 そうして、俺達は爺さんを先頭に建物の探索を開始した。

入り口からの直進通路には魔物の姿は無い。それに、店舗には壁は無く見通しはそれほど悪くない。


「……小僧」


 爺さんが横の道を見据えて刀を構える。俺もすぐに見える位置へと移動すると、そこに居たのは——青い犬型の魔物。犬は外にも溢れているが、青い色のものは初めて見る。


 おれは今までの経験から、魔物の強さについて推測していた。犬はゴブリンより強く、それに加えて色によって魔物の強さが違う。

 ゴブリンであれば通常の緑、青、赤と黒が混じったもの。犬で有れば通常の茶色、紫が今まで遭遇してきた魔物だ。

 察するに、通常、青、紫、赤と強くなるのだろう。恐らく、黒がその上か?そして今回は、犬の青。最初のスーパーの青いゴブリンに比べれば強い筈だ。恐らく、ボスもそれに準じてアカグロよりも強い事が考えられる。


 俺と爺さんはあれから強くなっている。だが、椿に対しては経験が足りずに不安は残る。椿は嫌がるだろうが……ボスは、俺と爺さんの二人で倒す事になるかもしれない。


「……来る」


 青い犬が俺達を見つけ、先頭に居た爺さんへと近づく。その駆ける速さは犬とは比べ物にならない。

 俺はまず魔石銃を発射。『連射』により続けて発射された魔力の弾が犬を狙う。


 犬はそれに気付き回避しようと横へと体をずらすが、俺が高範囲に散布するように発射したことで、数発の魔力弾が犬の体を捉える。


「キャゥンッ!」


 犬はそう鳴き声を上げるものの、その傷は浅く致命傷には至っていない。俺はそれを確認すると、すぐに『魔力弾』の拳銃に持ち替える。

 近づいた犬がその勢いのまま、爺さんに飛び掛かり噛みつこうとしてくる。爺さんは避ける事はせず、その口目掛けて刀を動かす。

 犬はそれを察したのか、噛みつこうとした口を閉めて刀に食らい付く。


 ガキィ、と刀と牙のぶつかり合う音。犬は勢いが止まると、そのまま器用に背後へと跳んだ。

 俺はその着地地点目掛けて拳銃を発射する。すると、流石に空中では体を動かせないのか——俺の放った銃弾がその胴を貫く。

 それにより青い犬は着地に失敗し、後方へと床を転がる。そして、その勢いが止まっても犬は動く事はなく、そこには青い血溜まりが広がりはじめる。


 俺達がまだ構えながら眺めていると、すぐに青い犬の体が消失していく。それを確認した俺は、銃を下ろす。


「……魔力弾でも、青い魔物には威力が足りないか」


「あれだけ速いと、油断していると対応が間に合わないのう」


 イメージとしては青いゴブリンを速くしたような感じだろうか。単体は脅威では無いが、群れで来られると厄介だ。

 そして、そんな風に俺と爺さんが話していると、様子を見ていた椿が声をかけてきた。彼女は青い犬に怖気付いたような様子もなく、先程と変わらない雰囲気だ。


「次、私に戦わせてよ」


 椿はそう言うと口角を上げて笑った。

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