成長と夢
——翌日。夜は死体を見たせいか悪夢を見た。お陰で寝起きは最悪だった。あの光景は暫く忘れられそうに無い。
俺は避難所となっている警察署へと向かう事を決めた。第一目標はあくまで警察が使う本物の銃を触る事。
避難所に関しては状況を見て、すぐに去ろうと考えている。ただ数日は居座る可能性が高く、自宅とは暫くのお別れだ。
「『威力』と『石弾』を付与した『銃』を」
また同じ銃の作成。これは消費した弾の補充だ。コンビニに行っただけで15発も石弾を使っていた。
これから節約も考えないとダメだが、近接武器はまだ自信が無い。
新品の銃を二丁。以前使っていたものはマガジンだけ抜いて家に放置。準備はこんなものか?
後は作成回数が復活する明日の朝に出発だな。
そこで、地面に落ちている紙が目に入る。
「あれ?メモが三枚?って事はまさか」
俺はすぐにメモを食い入るよに眺める。兵器取扱説明書は要らない……とこれだ。
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能力取扱説明書
パンパカパーン!ご主人様、能力が成長しましたよ!おめでとうございます!わたし、トリセツちゃんです!忘れて無いですよね?
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「あ、あぁ……そう言えば」
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忘れてるとか酷くないですか!?わたしを便利で都合の良い女だと思ってません!?悩んでるご主人にアドバイスしたのに!ひどいです!
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「あーそう言えば、石弾なら作れるってアドバイスくれたな。それより、ホープについての補足は無いのか?」
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ありがとうくらい言ってもバチは当たりませんよー。ほれほれ、さあ!とまあ冗談はさておき!いや、本気ですけど置いといて!
今更タイプとか特性についての説明なんていります?ご主人様の察しがとても良いので、説明省きましたよ!決して文字数とか、忘れてた訳では無いですよ!本当に!
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「……忘れてたんだな」
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さ、さて、ご主人に言いわす……じゃないお得な情報です!実はご主人様の作り出した兵器には、安全装置が付いています!ご主人様が自分の兵器を奪われて殺されるような事を防げるんです!
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「おい。誤魔化すな!それに言い忘れって言いかけてるじゃねえか!」
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安全装置についてー。もし、ご主人の武器でご主人様を狙った場合、なんと!武器が爆発します!爆発、おほー!
銃なら弾が発射される前に爆発するので安心ですよー。これ、トリセツちゃんが考えたんです!ほめてほめて!
そして、あ、今回文字数少なっ!それと今回成長した事で出来る事なんですが作れる兵器のランクが上昇しましたそれと魔石を使って
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「おい!また文字切れかよ!しかも最後駆け足過ぎるだろ!それに、魔石ってなんだよ!何に使うんだよ!謎を逆に増やすんじゃねえよ!」
メモに怒鳴っても追加のメモが来るわけは無く、結局俺は胸にモヤモヤしたものを抱えることになったのだった。
そして、今日はこのまま明日までやる事が無い。ラジオをつけるも、何も聞こえずザーッという音だけが響いた。ラジオの電波も駄目になったのか?
そこで消費を抑える為に今まで電源を切っていたスマホの電源を入れる。画面はついたが電池のマークは既に赤く光っている。
俺は写真のフォルダを開く。あまり写真は多くはなく、あっても友人達との写真がほとんど。そこで気がついた。
「……家族の写真、一枚も無いんだな」
思春期の男なのだから普通なのかもしれないが、それに少し寂しく感じてしまった。
「アルバムでも漁るか。いつの写真か分からないが」
アルバムの中から五年も前の家族写真を見つけ、大事にリュックへとしまう。俺は心の中で家族を探す為の写真だ、と言い訳をする。勿論そんな言い訳なんて無駄だとは分かっていた。
けれど言い訳する事で、会いたい気持ちが誤魔化せた気がした。
「……もっと強くなったら、絶対に探しに行くから、待っててくれよ」
自宅で一人、そうポツリと呟いた。
♦︎
——その日の夜。俺は夢を見た。
昨日見た悪夢では無い。
気がついたらハッキリとした意識の中で、戦いが繰り広げられる光景を眺めていた。
戦っているのは様々な武器を駆使しながら魔物や人を屠っていく、今よりもかなり目つきの悪い、俺。
夢の中の俺は、漫画に出てきたようなパワードスーツに身を包み、ライフルのようなレーザーガンを両手に持ち、周囲には小さなドローンが10体以上飛び回っている。
レーザーガンの太い光線が敵をなぎ払い、残った敵をドローンの光線が撃ち抜く。
その光景は、子供の頃に見た人型ロボットの戦いそのままだった。