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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
三章 中央区
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対立する者達 2

 支配領域を離れた翌日の早朝。


 俺達は見通しの良い農道を通りながら中央区を目指した。日々の魔物狩りのお陰か、ゴブリンも犬も脅威になる事はなかったが、それでも進むペースは遅くせざるをえなかった。

 目的地としている新潟駅までの行程は半分以上進んでいる。だが、ここから先は農道は無く、建物が立ち並ぶ通りとなっている。それにより死角が増え急な襲撃も予想される。休憩を取りつつゆっくりと進むべきだろう。




「灰間の小僧。ここまでは順調かのう?」


「そうだな。後は大通りを真っ直ぐ行けば、新潟駅に着く。休まなければ半日もあれば着くだろうが……まあ、急がずにゆっくりと向かおう」


 朝食を終えた俺達は三十分後に出発する事に決め、その間自由時間となった。俺は特にする事もなく、爺さんと雑談していた。


「駅周辺は良く飲みに行ったのう……だが、今はどうなっているのか」


「はあ、俺も飲み歩きってやつを経験したかったんだがな……」


「ハッハッハ!生まれるのが二、三年遅かったのう!この状況では飲み屋もキャバクラもやっとらん!」


「この状況で営業してたら正気を疑うぞ。金なんてもう価値が無いようなものだし」


「儂もこうなると分かっておったら、パーッと派手に遊んだんだがのう」


「その歳で何やるつもりだよ……」


 そこに早瀬と荻菜さんがやって来て話に加わってくる。二人が呆れているのを見るに、どうやら予想以上に声が大きかったようだ。


「この状況でそんな事話してるだけでもどうかと思いますけどね?」

「ほんと。私達は道中必死だったのに、灰間君と柳さんの様子を見てると呆れるわ」


「お前達でもゴブリンや犬なら余裕だろ?それに、いざとなったら爺さんが守ってくれるさ」


「そこは俺が守ってやる、とでも言えば良いのに……」

「灰間君、本当に残念な所があるのよね……」


 二人の視線が冷たい。おい、実際はフォローしてるだろ?もっと良い評価でも良いはずなんだが?


「小僧は照れてるのだろうよ。こやつ、女性への免疫が無さそうだしのう」


「爺さん、変な事を言うんじゃ無い。俺だって人並みに経験は有るさ。……さて、そろそろ出発するぞ。早く準備しろ」


 俺はそう言うとその場を立ち上がり、銃を手に持つ。


「話から逃げたのう……」

「逃げましたね」

「逃げたわね」


 それぞれ爺さん、早瀬、荻菜さん。俺はそれが聞こえてないフリをして大通りへと向かった。




♦︎



 大通りの道は地元と同じように至る所に車が乗り捨てられていた。その車のせいで車道は通行出来ず、更に視界を遮る要因となっている。

 後、この道中人に会う事は全く無かった。普通に考えれば建物内で息を潜めているだろうし、どこかに避難した人々も多い筈だし当然か?


 だがその代わりに人の成れの果てとなった姿は多く見られた。骨なら良かったのだが、中にはまだ腐敗が少ないものも有り、それを見るのは流石に辛いものがあった。

 そのせいで耐性の無い早瀬の顔は青褪め、足取りもおぼつかなくなってしまい一度休憩を取る事になった。


「す、すみません……」


「これに関しては仕方ないだろ。本人の意思でどうにか出来るものじゃ無い」


 ペットボトルのお茶を飲みながら申し訳無さそうな早瀬。

 俺は避難所の一件から慣れてしまったが、早瀬の反応が普通なのかもしれないな。


 そうして早瀬の具合が良くなり次第、俺達はまた歩き始める。駅に近づくにつれて死体は更に増えていく。これは……俺が想像した以上に人の被害が多いのかもしれない。

 それでも俺達は先へ進み、駅まで数百メートルとなる。そこで俺はある事に気づく。



「ここで止まれ。想像通りだが……駅がダンジョン化してる」


 見えた駅舎は、ダンジョン化したスーパーと同じように赤黒い色をしていた。これ以上近づけば魔物の数は増える一方だろう。


「……どうするんじゃ?」


「右手に行けば北口に繋がる跨線橋が有るが……」


 俺達が今いるのは新潟駅の南口だ。商業施設が密集しているのは北口で、そこを目指そうかと思ったのだが……。


「南口に居るうちに、一箇所寄り道しても良いか?」


 俺が皆にそう質問すると、それぞれ頷き返事をした。



「また歩く事になるが、笹山高校へと向かう。……そこに俺の友人が居るかもしれない」


 (こう)城悟(じょうご)、まだ連絡が取れていた時に二人が避難していたのは笹山高校だった。もし二人がまだそこに居るので有れば、仲間に加えたいと思った。

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