対立する者達 1
暁門達が中央区を目指し移動し始めた頃。中央区の避難所の一画では二つの集団が向かい合い、対立していた。
「だから城悟、お前も『希望の力』を持っているのならこちらに来るべきだ」
そう言ったのは黒縁の眼鏡を掛けた、男性にしては少し髪が長く細身の青年。
その青年と向かい合った、城悟と呼ばれた体格の良い青年は彼を睨みながら反論する。
「生き残った奴ら全員で協力しなきゃ、生き残れる訳がねえだろうよ!孝、いい加減考え直せ!」
孝と呼ばれた青年は、眼鏡を上げ直してからため息を吐く。
「『ホープ』持ちは、選ばれた人種だとは思わないのか?もし能力を持った人員だけで集団を作れれば、他の集団なんて相手にならないぞ?食糧なんて奪えば良いんだ」
「はっ。お前がそう言って、集まったのはたったの五人だろうが。それでどうやって数十人は居る警察に勝つんだ?」
「だからこそお前を誘っているんだ。これは友人としてでは無く、お前の能力を買っての事だ。お前こそ硬い頭を解してから良く考えるんだな」
孝と呼ばれた青年の背後には四人しかおらず、逆に城悟と呼ばれた青年には十数人の人が武器を構えていた。
だが孝という青年は人数差に全く怯みもせず堂々と接している。
「俺はお前の誘いには乗らない。俺はこの力を人々を守る為に使うと決めたんだよ」
「ふん。文句だけ言ってる連中を守るのか?馬鹿馬鹿しい、利用されて終わるだけだぞ」
「何とでも言えよ。お前との友人関係もここまでだ。今度からはお前は避難所を狙う敵として見るからな」
「……そうか、分かったよ。お前がここまで馬鹿だとは思わなかった。絶対に後で後悔する事になるからな」
「お前こそ後悔するぞ。少人数で生き残れると思うなよ」
そのまま、暫くの間二人は睨み合った。そして、孝と呼ばれる青年が何も言わずに振り返ると、そのまま歩いて離れていった。
残された城悟という青年はそれを最後まで見送らず、別の方向へと立ち去っていく。
——こうして別れた御渡 孝と堅持 城悟。
この二人は十年来の友人だったのだが、その友情も意見の食い違いから壊れ、離れていってしまった……。
二人は離れた場所で、それぞれ呟く。
「「お前なら、どうしたんだろうな……暁門」」




