支配後 5
——早瀬が加わった翌日。
また昨日と同じ時間になり、俺はあまり期待せずに駐車場へと向かっていた。俺に付いて歩く爺さんと、怯えた様子の早瀬。
「あ、あの……私が行く必要有るんでしょうか?領域に入れない人達からの視線が、その、辛くて……」
昨日早瀬が領域の中に入った際、彼女は『何でお前だけ!』と恨みが篭ったような目線を向けられていた。でもここにいる以上それ位の事には耐えて貰わないと困る。
「慣れろ」
「……やっぱり、灰間さんは鬼です。昨日の発言は撤回します」
「ああ、そりゃ良かった。ほら、見えてきたから喋るのを止めろ」
集団の人数は七人。内、鉄パイプを持ったのが二人で、昨日の女性と長身の男性。それとその家族であろう女性と女の子。
だが俺達が着いた時には、その四人と他の三人が分かれて立ち、その雰囲気は悪い。
「待たせたな。魔石を集めて中に入りたいやつか、それか食糧を交換したい奴は居るか?」
俺が質問すると、想像通り女性と長身の男性が手を挙げる。分かれている他三人は、それを睨み付けているだけだ。
「魔石を領域の側に置け」
そうして置かれる二つの袋。俺はまず女性の方の袋を確認する。すると中には十三個の魔石が入っていた。
……まあ一日でこれだけ集めれば充分か。この女性は合格にしておこう。
「良いだろう。名前を言ってくれ」
俺がそう言うと、三人から声があがる。
「その女は俺達から魔石を取ったんだ!だから俺達が中に入る権利がある!」
「そうだ!俺達を中に入れろ!」
それに反論する女性。
「何言ってるのよ。これは私が自力で集めた魔石よ?何なら戦う所でも見る?」
それに俺は呆れてため息を吐く。
「おいおい、なら三人でこれだけしか集められなかったのか?それなら不合格だ、もっと持ってこいよ。それにもしそれが本当だとしても、袋を渡したのはそこの人だな。中に入る権利は彼女に有る」
だが三人は黙る事なく文句を言い続ける。女性は呆れた様子でそれを見ている。
「面倒だ。早く名前を言え」
「荻菜 玲香よ」
「……荻菜 玲香が領域に入るのを許可する」
すると三人の内の一人が、発狂したかのように包丁を持ち彼女へと襲いかかる。だがその動きは随分と遅く見える。
俺はすぐに拳銃を抜き、そいつの足元へ向けて引き金を引く。
響く銃声。そいつの足は止まり、その場は静寂に包まれる。
「さっさと入れ」
女性はその声に慌てて領域の中へと足を踏み入れる。
「お前ら、もし勝手な行動をしてみろ。次は容赦なく頭を撃ち抜くからな」
俺の言葉が脅しで無いと分かったのだろう。三人の顔は青褪め、そしてこの場からそそくさと逃げていった。
「さて次だ」
背の高い男性の袋の中には、二十一個の魔石。家族三人だと少し物足りないような気がするが……。
俺がそう思っていると、先に男性が話し始めた。
「……もし足りないなら、妻と子供だけでも入れてやってくれないか。俺は明日で良い」
奥さんはそれに反論しようとするが、男性が手で静止する。
まあ元々覚悟を見たかっただけだ。それにこの男性は頼りになりそうな気がする。
「全員許可しよう。名前を」
「……安田 友則それに妻と子供は——」
こうしてこの領域に新たに四人の人員が加わった。だが、明日は追加を期待できそうに無いな。




