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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
2.領域支配と組織
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領域支配 13

 銃から放たれた二発の弾丸は、アカグロの右肩と鎖骨辺りへと当たる。アカグロはその衝撃で僅かに体が動いたが、流石に大きくノックバックさせる事は無かった。

 その傷も皮膚は捲れ、血が滲んではいるようだが致命傷には程遠い。


 『弾丸肥大』を付与した銃でこの程度の傷。あいつの肉の硬さ、コンクリートなんてものじゃ無い。


 アカグロがこちらを向こうとするも、すぐに爺さんが刀で斬りつけ注意を引く。アカグロはそれを大鉈で防ぎ、その対応で精一杯のようだ。


 その隙に俺は銃を右手のものだけ『連射』を付与した物に持ち替える。そして爺さんに当たらないよう、頭を目掛けて全弾を放つ。


 アカグロの注意は爺さんにいっていた為、その銃弾はアカグロの頬へと届く。五発の連なる銃弾は、弾が弾を押し込むように食い込みその頬を貫通し口内へと到達した。


「ギャ……ッ!?」


 アカグロはその口内に痛みを感じたのか、明らかに怯んだ様子を見せる。爺さんはその隙に左足を刀で斬りつけ、アカグロの側面へと回り込もうとする。


「『武器修復(ウェポンリペア)』」


 修復し銃弾の補充された連射の銃を、再度アカグロへ向けて放つ。今度は左手に持った銃も同時に撃ち、少しでもダメージの蓄積を狙う。


 アカグロは銃弾を嫌ったのか鉈を俺の攻撃への対応へと使った。そうなると爺さんの方は完全にフリーになり、爺さんはそれが分かったのか深く踏み込んだ一撃を膝裏へと斬りつける。

 アカグロはすぐに左手で爺さんを薙ぎ払う。爺さんは刀で防ぎつつもその威力で後退りしていく。


 俺はその間も『武器修復』を使いひたすらアカグロに銃弾を浴びせる。左手の弾が切れるとそちらも連射の銃に持ち替え、俺は秒間十発の弾丸を放ち続ける。


 上手く銃弾か傷に重なる事で、その傷は確実に深くなっていく。滲んでいた赤黒い血もその箇所は増え、出血の量も目に見えて多くなっていく。


 次の瞬間、アカグロは爺さんを放置し俺へと向かってきた。俺と爺さん双方の対応を諦め、どうやら俺に狙いを定めてきたようだ。だがその足は最初よりも遅く、左足がしっかりと動いていない。爺さんの刀が通っていたのだろう。


 俺はすぐに後ろへと振り返り、商品棚の間の通路へと逃げる。アカグロが追って来るのを確認し、棚を回り込んで爺さんの元へと戻る。

 その先には既に爺さんが待ち構えており、その目は俺の背後にいるアカグロへと向けていた。


「爺さん!」


「こうも上手く行くとはのう」


 爺さんは呆れたようにそう呟き、構えを刀を突きの形へと変えた。俺は爺さんの横を抜け、その先に有る魔石の入った袋を左手に持つ。


 アカグロはそのまま爺さんへと突進する。爺さんはそれを横にずれて躱しつつも、刀だけは斜線上に置いて行く。爺さんが横にずれた時点で俺も銃を撃ち、すぐにアカグロの正面から離脱した。


「ギャアァァアッッ!!」


 アカグロの悲鳴が建物内に響く。倒したか?と頭を過るが、まだ油断はしない。それにもしアカグロが倒れでもしていたら、爺さんが声をあげる筈だ。


 そう考えていると、予想通り俺の背後の角からアカグロが姿を現した。その脇腹には刀が深く刺さり貫通し多量の血が流れている。

 俺はまた商品棚を利用し、爺さんの方へと回り込もうとした——その時。


「小僧!戻って来てるぞ!」


 爺さんが叫ぶ声で俺は急いで足を止めると——その瞬間、商品棚の角から黒いものが振り下ろされてきた。

 アカグロがタイミングを見計らい、出てくる俺を大鉈で狙ったのだ。爺さんの声のお陰で、角手前で止まった俺はそれを直撃せずに済んだが、そのまま飛び出していたら死んでいてもおかしくは無かった。


 俺はアカグロの知能を甘く見ていた。普通のゴブリン達とは違い、アカグロには考えるだけの知能が有って同じ手は通用しないようだ。


 ……反省するのは後だ。俺は作戦の変更を爺さんに伝える。


「爺さん作戦変更だ!魚コーナーの方へ走れ!」


「了解した!」


 爺さんがそう答えると、棚を挟み反対側から走る音がする。俺も同方向へと急ぎ、そこで爺さんと合流した。





 だが周囲を見渡してもアカグロの姿は無い。

 俺は刀を一本失った爺さんに、腰の刀を渡す。爺さんは周囲に意識を向けつつそれを受け取る。


「儂を追って来ては居なかったようじゃ。儂らを諦めたか、或いは何処かに潜んで機を伺っているか……」


「待ち伏せされると厄介だな。最初で距離を取れないと逃げ切るのが難しい」


 俺はベストのポケットに魔石を詰めつつ、どうするか思案する。


 アカグロがダメージを負っているのは間違いない。出来ればこのまま押し切りたい所だ。


 だが——追い詰められたヤツは強い。出来るなら最初のような形に持ち込み、安全マージンを取りながら倒すべきだろう。


「小僧、どうする?」


 爺さんが顎髭を触りながら俺に問い掛ける。

 

 ……仕方ない。多少のリスクを負ってでも今倒そう。アカグロに知能がある以上、時間を与えるのは俺達の不利になりかねない。

 

「危険だが……探してとどめを刺そう」


 そうして——俺達はアカグロを探して倒す事を決めた。

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