領域支配 12
中は前回と同じ赤と黒の空間。アカグロが待ち構えている可能性も有り身構えていたが、それは杞憂に終わったようだ。
俺はリュックを地面に置き、爺さんに声をかける。
「取り敢えず問題は無さそうだ。作戦通りにスーパー側の青ゴブリンを倒すぞ。ただアカグロがこっち側にいる可能性もゼロとは言えない、遭遇戦になっても大丈夫なよう慎重に行こう」
「……了解した」
それから俺達はスーパー内を周り、全ての青ゴブリンを倒していく。これはアカグロとの戦い中に、余計な横槍が入らないようにだ。
五十を超える青いゴブリンを倒し、敵が居ないことをもう一度確認した後……俺は魔石の入った袋の設置へと移る。
スーパー内の至る所に置いておき、逃げ回りながらも魔石の補充が出来るように。既に効率の良さそうな置き方は考えてあり、設置後メモを見てもう一度位置を頭に叩き込んだ。
この時点で俺達が渦に入ってから一時間半は経過している。面倒ではあるが、勝てる可能性を少しでも高める為だ。手を抜くことは許されない。
「これで準備完了だな」
そうして、全ての準備が整った。
俺は釣りで使うベストを着て二丁の拳銃を仕舞い、魔石をポケットに敷き詰めた。腰には刀、手には二丁の拳銃。
魔石はポケットの中でも所持していると判定される。この状態でも『武器修復』が使用可能なのは既に試してある。これで、アカグロにありったけの銃弾を浴びせるつもりだ。
「儂も大丈夫じゃ」
爺さんの顔付きは相変わらず真剣なままだ。俺も爺さんを見習ってそろそろ気持ちを切り替えないといけない。
爺さんが先行し、俺は距離を取りつつ後ろを歩く。
ホームセンターへの通路を進み、そして前にアカグロが居た開けたスペースへ。
先を歩く爺さんが俺に目配せをする。恐らく、アカグロの姿が見えたのだろう。
俺は深く息を吐いてから、爺さんに向けて頷く。
爺さんがアカグロに見える位置へと歩を進める。俺の位置からではまだアカグロの様子は分からない。
そして——。
「小僧!来るぞ!」
爺さんが体の向きを変えてこちらへと走り始める。俺はそれを見てすぐにスーパー側へと引き返し始め、商品棚の有る定位置へと急ぐ。
駆けている最中、一度振り返れば爺さんの背後に確かに赤と黒の肌を持つ大きな人影が迫って来ているのが見える。
「爺さん!後二十メートル位だ!」
以前と同じように、アカグロの方が足は速い。だがこのペースなら定位置で迎え討つことが可能だ。
俺は一足先に定位置へ着き、商品棚の影に隠れる。
爺さんも商品棚手前の定位置へ着くと、体を反転し長さの違う二本の刀を構える。
そこで追い付いたアカグロ。走ってきた勢いをそのままに、黒い大鉈を上から爺さんへと斬りつける。
爺さんはそれを二本の刀で器用に受け流し、アカグロの大鉈が床を抉る。
アカグロの僅かな硬直——俺は棚の裏から飛び出し、アカグロの上半身目掛け……二丁の拳銃の引き金を引いた。




