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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
4章 死者への哀悼、死者冒涜
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黒騎士と少女、そして柳  1

 『ご機嫌よう、人間』


 その声のした方向を向くと、そこには宙に浮かんだ黒のパーティードレスで赤い巻き髪の少女が浮かんでいた。




 その存在に気付けずに一瞬遅れをとったものの、俺は咄嗟に銃のトリガーに指をかけ少女に銃口を向けた。


「そんなもの、無駄ですわ」


 少女がそう呟いた瞬間、俺の持っていたライフルが()()()。それは黒騎士と同じような能力ではあるが、少女のソレは予備動作も何も俺には察知することが出来なかった。


 俺は動揺を隠し、冷静を装いながら身構える。


「あら、意外と冷静なのね。思っていた反応とは違っていたわ」


「そりゃどうも。で、お前は誰だ?」


 俺の言葉に対し少女はクスクスと笑う。

 俺は様子を伺うものの、その行動から何も察する事ができなかった。


「わたくしはジェニスの一人、レティーと申しますわ。そして、ズルをしてる方に細やかなプレゼントを届けに参りました」


「ジェニス?ズル?何の事だ?」


 俺の反応に対して、レティーと名乗った少女は溜息を吐く。


「はぁ、人間というものは素直に非を認められないのかしら?悪い事をしたら素直に謝るべきでなくって?」


 俺はその反応を見て察した。こいつは恐らくトリセツの行動の事を言っている。そしてズルをした奴というのは俺のことなのだろう。

 それを分かっているという事は、こいつは世界を変えた元凶、或いはその仲間という事だろう。


「あら?本当に分かってなかったのかしら?まあ良いですわ、分かってないにしろズルはズル。ペナルティは必要ですわ」




 そこで今まで黙っていた爺さんが話に入ってきた。


「ふむ。お主が灰間の小僧の事を言ってるのは察したが、それで何をするつもりなのかのう」


 レティーは再びクスクスと笑った。


「それはお爺さんに関係のある、泣くほど素敵なプレゼントですわ」


「儂に?」


 爺さんは首を傾げる。





「そうですわぁ。灰間暁門——あなたがした罪、他者の命を以て償いなさい。あなたの反応に期待しておりますわ」




「他者?おい、何を言って——」


 俺が言葉を言い終えるより早く、頭を抱えてしまいたくなるほどの耳鳴り、それと共に部屋の中央に黒い靄が集まり始めた。


「——ッ!爺さん!」

「案ずるな!」


 俺は兵器保管でライフルを二丁取り出し両手で構え黒い靄に向ける。横目で見た爺さんは既に刀を構え様子を伺っていた。




「それではわたくしのプレゼントを、お楽しみくださいませ」




 少女が言い終えると共に、黒い靄からそれが姿を現した。


 その姿は黒騎士と同じような風貌だったが、抜け殻の兜だった頭には白目の能面の顔と更には肩まである長い髪の毛があった。

 それはまるで黒騎士の鎧を女性が装着したかのように見えた。


(あのレティーとかいう奴が黒騎士に乗り移ったのか?)


 姿を完全に現したそれが立ち止まると、威圧感が黒騎士とは比べものにならない。間違いなく、()()()()()()




 身体中から冷や汗が流れるのを感じながらも、爺さんに話し掛ける。


「爺さん気を抜くなよ」

「……誰に言っとるんじゃ。だが、こやつは油断出来んのう」




 そしてそんな様子を伺ったまま動けない俺達に、何処からか声が聞こえてきた。


『オトウサン、オカアサン……マッテテ』


 その声に、横目で見える爺さんが少し動揺したように見えた。


『……ヤクソク』


『ええ、約束は守ります。この二人を倒せばあなたは両親達に会えますわ』


『……フタリニ……アウ……』





 黒騎士もどきとレティーの会話で、俺はある事が頭に過った。


(こいつ、まさかサポートのように人間の意識を黒騎士の中に入れたのか?)


「爺さん!恐らく黒騎士の中にサポートが入ってるぞ!靄の他に何かホープを使ってくるかも——」


 そこで俺は爺さんの様子がおかしい事に気付いた。唖然とした表情で刀を下ろしていたのだ。


「おい爺さん!」


 暫く経ち黒騎士もどきが動き始めた頃、爺さんはやっとその口を開いた。


「……灰間の小僧。今回は手を出さんでくれ」


 俺にはその爺さんの言葉の意味が分からなかった。


「あいつは強い!流石の爺さんでも一人じゃ無理だ!」


 そこで爺さんの表情が真剣なものへと変わった。


「それでも儂がやらないと駄目なんじゃ。これだけは絶対に譲れん」


「何を——」




 そこで俺はレティーの言った言葉を思い出した。



『それはお爺さんに関係のある、泣くほど素敵なプレゼントですわ』





「おい、まさか……嘘だろ……」




 呆然とする俺に対し、爺さんは黒騎士もどきから目を離さないまま言い放った。





「孤独となり後悔していた儂を救ってくれた、何よりも大切な声を忘れる訳がない。あの黒騎士もどきは——儂の孫、()()じゃ」






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