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兵器創造の領域支配者  作者: 飛楽季
4章 死者への哀悼、死者冒涜
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『宣誓』

 考えた結果俺が出した答えに城悟と孝は苦い顔をする。


「暁門、正気か?宣誓で領域の譲渡をするって事は、あいつらの下につくって事だろ?そうなったらお前の目指していた世界一位はどうなる?諦めるのか?」


 孝は鋭い目つきで俺を睨むが、それに俺は無表情のまま返答する。


「さあな。今年が駄目なら来年が有る事を期待するさ。宣誓の効果は個人に対してだ。西区のリーダーが今年一位になれば来年は期待できるだろうよ」


「……オレは納得出来ねえ。なんでこうも簡単に諦めんだよ。中央区の魔石回収の仕組み作りから、食料の自給まで手掛けてやっと地盤が出来た所じゃねえか。アイツらを倒して西区も支配すりゃ良いだろ」


 城悟も孝と同じく俺の考えには賛同出来ないようだ。


「確かに中央区をこのまま取られるのが納得出来ないのは分かる。だが、相手の侵略の速度を考えろ。恐らく自己強化なりに特化した『ホープ』持ちがリーダーで、区役所を楽に攻略するのを見るに、俺達じゃ恐らく勝てない」


「暁門!相手を見てもいねえのに何でそんなに弱気なんだよ!お前を信じて付いてきた領域の連中はどうなる!」


 城悟は今にも俺に殴りかかりそうな勢いだ。


「はあ……なら言わせてもらう。俺は疲れたんだよ。お前達みたいに俺に頼りきりで、指示待ちの手下しかいない状況に。それに比べて西区の連中は俺の一番嫌な所を考え攻めてきたし、実力も有るだろ。なら西区の連中と俺が組めば、日本……いや、世界でも有数の勢力になれるかもな」


 孝が片眉を上げる。


「俺達が手下だと……?あの時再会してからずっと、お前は今までそう思ってたのか?」


 俺は目を合わせずに答える。


「ああ、お前達は俺が上を目指す為に利用するだけの駒だ。だがそれももうここで終わりだな。用済みだ」


「暁門……ッ!てめぇ!!」


 城悟が俺の肩を掴み殴り掛かろうとした瞬間——凛とした女性の声が聞こえた。


「おやおや中央区の連中は仲間割れか。これは余程私達の作戦に追い詰められたと見える」


 城悟は拳を下げ、俺達は声のした方向に目を向ける。


 そこにはスラリとした体型の、長い青髪の女性が微笑を浮かべていた。他の連中が背後に立つのを見るに、この女が西区のリーダーなのだろう。


「あんたが……いや、貴女が西区のリーダーか。俺は灰間暁門。想像通り、中央区周辺の領域を支配している」


「ああ、勿論知っている。こちらには耳が良いのがいてね。情報収集には長けている。それで、灰間君の言う通り私が西区の支配者皆市 澪(みないち みお)だ。で、聞こえてしまったんだが。君はどうやら私達の下につくつもりらしいね?」


「……本当に嫌なくらい良い耳を持ってるようだな。隠す必要も無い。俺は状況を見て勝てないと悟り、貴女達の下につくつもりだ。ああ、勿論ただでつけると思っていない。俺の持つ領域も手土産に献上するつもりだ」


「おい暁門!」

「暁門……」


 城悟と孝が俺を睨み、俺はそれを興味なさそうに流す。


「良い心掛けだ。拒否する理由は無い。だが……口約束程信用出来無いものはないな……」


「ああ、分かってる。宣誓で誓おう。だが一つだけ確認したい」


「……何だ?」


「領域内でのルールはどうなっている?領域には俺を慕ってる女達も居るんでね。それを奪われるのは流石に我慢ならない」


 俺の言葉に皆市はあからさまに嫌悪の表情を浮かべる。


「ふん……どうせ力を振りかざして無理矢理囲った女達だろうに。まあいいだろう。私はお前の所の領域に居る奴等には興味は無い。欲しいのは領域の支配権だけだ」


 俺は口角を上げる。


「それなら交渉成立だな。なら……」


「待て」


 俺が続けて宣誓しようとした所、皆市から待ったがかかり、俺は首を傾げる。


「宣誓にこれも追加しろ。灰間暁門は皆市澪に危害を加えない、とな。お前のような奴に寝首をかかれたらたまらん」


「ああ、問題無い。なら……」


「「暁門!」」


 孝と城悟が叫ぶが俺は言葉を続ける。




「『宣誓』灰間暁門は領域内の人達の安全を守る以上、皆市澪に領域全ての支配権を譲渡する。また、灰間暁門は()()()で皆市澪に危害を加えることはない」




 俺がそう告げると俺の体から淡く光る球体が発生し、それが皆市澪へと向かっていく。そしてそのまま光る球体は皆市澪の体に取り込まれるかのように消えていった。


「ふん……余程信用されていないようだな」


 皆市が言うのは俺が付け加えた言葉に対してだろう。領域内の人達の安全、危害を与えないのも領域下に限るという部分だ。

 宣誓で余計な事をした事で俺は完全には信用されないだろう。だがこれで良い。


 ——『宣誓』のルールは絶対だ。俺はこうして全ての支配領域を失い、皆市澪の傘下に入る事となった。





 そして、この宣誓により失ったものは領域だけではない。


「……暁門。俺達は領域を離れさせてもらう」

「ああ。見損なったぜ。敵対するつもりはねえが、テメェらに協力するつもりもねえ。オレと孝は好きにさせてもらう……じゃあな」


 孝と城悟はそう言い残し、俺を残してその場を去っていった。

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