青堀神社 19 ストーンゴーレム戦
ストーンゴーレムと距離を取り、まず手に取ったのは『魔力弾』が付与されている拳銃。俺はまずはこれに『自爆』を付与して投げてみようと考えた。
そして付与を終え、ストーンゴーレムと対峙する。ドローンを操作しストーンゴーレムの意識を向け、そして……俺は拳銃を全力で投げた。
投げた拳銃は予想通り、ストーンゴーレムの足へと当たり——カツンと音を立てて地面に転がった。爆発に身構えた俺は暫く固まる。
「……あれ?」
拳銃を『自爆』させるには何かが足りない?俺は慌てて『兵器操作』ドローンと拳銃を回収、そしてもう一度距離を取る。
「トリガーを引けば爆発するのか? けど、持った状態で爆発したら文字通り自爆になるぞ……。 ああそうか、兵器操作でトリガーを引けば良いだけじゃないか」
思い立ったら即実行だ。それに操作するならドローンもいらないという事実。
「成功してくれよ……」
『兵器操作』で拳銃を操り、攻撃するストーンゴーレムの腕をすり抜けていく。そして、無事に人間では左肩に当たる位置へと到達した。
「頼む!」
俺は祈るように、操作して拳銃のトリガーを引いた——すると、同時に響く爆発音。俺は顔を腕で守りながら見ると、爆発がストーンゴーレムを覆い尽くしていた。そして離れた俺まで石片が届き、体の至る所へと当たっていく。
ほんの数秒で爆発は収まり、次第にストーンゴーレムの姿が見え始める。
俺が見た光景——それは左腕を失ったゴーレムと、左腕であっただろう岩石が地面に散乱している光景だった。
ストーンゴーレムは怒ったのか、それとも痛みでも感じたのか、フロア全体に響くような大きな咆哮を上げる。それにより俺の肌がビリビリと痺れるのを感じた。
俺は身構えていると、ストーンゴーレムは残った右手で足元の岩を拾う動作をし始める。
まずいと思った俺は咄嗟に後方へと向きを変えて走り距離を取る。その直後、背後に響く岩と地面の衝突する音。
振り返ると、俺の半分ほどの大岩が地面を転がっており、背筋が凍るのを感じる。
狭い通路じゃあれを回避するのは難しい……距離に気をつけないとミンチになるぞ……だが、岩の無い場所なら問題ないか?
そんな風に考えながら俺がストーンゴーレムの様子をみていると、あいつは次の岩を拾い始める。そして……それを持ったまま体を丸め始めた。
俺は転がって突撃してくると察した。
通路はストーンゴーレムがギリギリ通れるような幅で、横に逃げる事は不可能だった。俺はそれを察して急いで逆側へと逃げ始めると、後方の角まで数十メートル。
それ位なら身体能力の上がった俺なら……!
俺を追ってくるゴロゴロという転がる音。その音は明らかに近づいている。だが、もう通路の角は目の前だった。俺が慌てて角を曲がると同時に、背後から衝突音。何とか逃げ切ったようだ。
これで安心してはいられない。向きを変えて転がられれば、次は間違いなく轢かれるだろう。鞄の中を漁り、手に触れたドローンを取り出す。俺は逃げながらそれに『特性付与』を行なっていく。
「『特性付与』!『魔石稼動』『威力』『自爆』」
それだけ行うと、後方へと振り返り投げつける。ストーンゴーレムはまだ向きを変えている所で、今なら間に合う。後ろへと下がりながらドローンを操作、今度は右腕を狙う。
ストーンゴーレムは向きを変え終わると、持っていた岩を俺に目掛けて投擲する。俺は距離が有ったので落ち着いて位置を予測し……それを回避した。
だが……俺の意識が岩に向いた事で、ドローンの操作が雑になってしまった。岩を避けた所で再度ドローンを見ると、既にドローンに向けてストーンゴーレムの腕が迫っている所だった。
「くそッ!」
ストーンゴーレムによりドローンは破壊。爆発は起こったが、あいつの右拳を破壊しただけだった。
鞄を漁る時間も惜しい!早く次の一手を!
俺は左手に持った衝撃重視のショットガンに触れる。
「『特性付与』、『自爆』」
焦る俺を前に、ストーンゴーレムは体を丸め始める。逃げても角までは遠く、最悪な状況だった。
……ここじゃ逃げ場が無い。なら一か八か賭けるしか!
ショットガンを操作して動かしたまま、背中に担いだライフルに触れる。そしてそれにも同様の付与。
「一つじゃ足りない!」
そう叫びつつも、ストーンゴーレムに近づいたショットガンのトリガーを引き、爆破。石が飛び散り、一瞬ストーンゴーレムが怯む。
「勿体無いが……!」
宙に浮いたライフルドローンを引き寄せて手に取る。横目に見るとストーンゴーレムは完全に転がる体制を取った所。
「『兵器分解』!『特性付与』『自爆』!『特性付与』『自爆』『威力』!!」
ライフルドローンを分解すると、ドローンとライフルは別の物として扱われる……と今焦って試して初めて知った。ライフルには『自爆』、ドローンには『自爆』と『威力』を付与し、それらを背中に担いでいたライフルと一緒に地面に置いた。
ストーンゴーレムは転がり、物凄い速度で近づき始める。俺は服を頭から被り、爆発の巻き添えを食らわない距離ギリギリで寝そべり、身を低くする。
——やれるだけやった!後は祈るだけだ!
そこからは時間の流れがゆっくりと感じた。
ストーンゴーレムが転がりながら近づき、ライフルとドローンを置いた位置まで到達する。俺がそれを見てライフル二丁のトリガーを引くと、ドローンも巻き込み三発分の爆発が起こった。
俺は真下から爆発できれば、丸くなったストーンゴーレムの下から爆発の衝撃が与えられ、僅かにその巨体を浮かせる事になる——と考えた。
そして——俺の作戦通りゴーレムは浮き、俺の体スレスレで上を通過。ゴーレムはそのまま破片を撒き散らしながら、地面を転がり……壁に衝突してその勢いを止めた。
俺はそれを確認すると、すぐに鞄をひっくり返しドローンを取り出す。ストーンゴーレムが生きているかどうか確認している暇は無い、今は追撃だ。
急いで付与し、ストーンゴーレム目掛けドローンを移動。そうしながらも俺の手は拳銃に触れている。
「『特性付与』『自爆』!」
ストーンゴーレムを見ると両足が無くなっており、更に左胸の辺りに黒くて丸い物体が少し見える。
多分あれが弱点なんだろう。というか弱点なのを祈るしか無い。
周りで爆破出来そうな物は最後に付与した拳銃で最後。俺にはこの二発で勝負を決めるしか無かった。
まずドローンがストーンゴーレムの左胸に衝突し爆発。黒く丸い物体が露わになる。そして拳銃を操作しながら、俺はストーンゴーレム目掛けて駆けていた。
拳銃のトリガーを引き、爆発。だが、それでもストーンゴーレムの姿は消失していない。
ストーンゴーレムに駆け寄る俺の手には刀。もうそれしか武器は無い。
俺は爆発の余韻が残り、石片や炎が舞う中に飛び込む。俺は刀を両手で突き刺す形で持っていた。
「いい、加減……消え…ろッ!」
爆発が消えると目前にストーンゴーレムの腕が迫っていたが、俺はそれを身を屈めて躱す。
そして——駆けたそのままの勢いで、黒く丸い物体を……刀で突き刺したのだった。