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序 魔女の死

 カタリナ王国には美しい王太子がいた。

 名前はルジェド。

 幼い頃より文武に秀でており時期国王として期待と尊敬を集めていた。


 そんなルジェドの元に嫁いだ妃はヴィオラ。

 薄い色素のアッシュブロンドの髪が特徴的な少女であった。

 シャロン国の先王の末妹であり、出自も、教養も問題ないのであるが多くの臣民が首を傾げた。

 決して不美人というわけではないが、少し地味目な印象の顔で多くの令嬢の中では目立たなくなってしまう。

 公式の場でもすぐに雲隠れしてしまい、彼女の姿を覚えているものはシャロン王国でもいなかった。

 これが王妃となるには物足りない。


 それでもルジェドの父アラン王が決めた妃である。

 ヴィオラが成人した頃に二人の挙式は執り行われ、ヴィオラは王城に住むこととなった。

 しかし、結婚後数か月たつがルジェド王子とヴィオラ王女が一緒に過ごしているところを誰もみていない。


 二人とも部屋は別々であり、ルジェド王子は仕事に明け暮れることが多かった。

 食事も執務室で過ごすようでたまに部屋の外へ出たと思えば、友人の館へと出かける始末。

 二人は夫婦らしさなどなく、ルジェド王子は別に意中の相手がいるのではと囁かれていた。


 アラン王が崩御後、ルジェド王子が王となり即位する。

 この時ヴィオラも王妃として人々の前に出たが、二人の関係はぎこちなかった。

 結婚して数年の夫婦とは思えない。

 王妃も即位式の時は姿を現したがすぐに姿を隠してしまった。


 同時に噂が流れた。

 ルジェド王は貴族の娘と恋をしていると。

 お忍びで仲睦まじく町を歩いていたという話もある。


 ある日、ルジェド王は一人の女性を城に住まわせた。

 ローズマリー・アネスト伯爵の令嬢である。

 彼女のサロンは貴族の娘たちの間で評判だった。

 城内を華やかにするため招き入れたのだろう。


 すぐにみな彼女が王の恋人であることに気づいた。

 ローズマリーが王の寝室から出ているのを何度も目撃されている。

 薔薇園で抱擁しあっているというのも。

 ローズマリーに多くの贈り物をしているということも知らされていた。


 王妃には何も贈っていないというのに。

 ヴィオラ王妃とローズマリー嬢との扱いに差はあり、城内の者もローズマリーが王妃だったのではないかと首を傾げる程であった。

 どんどんヴィオラ王妃の影が薄くなっていった。


 ローズマリーが城に訪れて1年が経つ。

 ルジェド王は熱病に冒されて、臣民たちは慌てふためいた。

 国中の教会で王の治癒を願ったが、ルジェド王の熱病は改善される気配がない。


 どんどん衰弱していく中、彼の崩御をよぎってしまう。

 だがルジェド王は回復した。

 2週間の闘病生活の末復活したのだ。


 誰もが喜び、祝福した。

 そして誰も気づかなかった。

 ヴィオラ王妃が城内のどこにもいないことを。

 沸き立つ喜びの中使用人の声はかき消されルジェド王がヴィオラ王妃の不在に気づいたのは回復して3日目のことであった。


 捜索していくうちに城内で不吉なものが発見された。

 呪詛の痕跡が城の至る場にあったのだ。

 魔術師たちに解析させたところ、これこそルジェド王の病の原因であると断言された。

 ひとつひとつ見つけ出すうちに城の敷地内の塔の中でヴィオラ王妃が発見された。

 衰弱し痩せた姿であった。


 魔術師は急ぎ彼女の治療を行ったが、甲斐なく彼女は息を引き取った。

 悲しみが城を包むかと思えば、怒りの声があがった。


「ヴィオラ王妃はルジェド王を呪い殺そうとしたのだ」


 誰が言ったかわからないが、その言葉を契機にヴィオラ王妃を悪しざまに言う者が次々と現れた。

 話はどんどん膨らみ、ヴィオラ王妃は魔女であったのだとまで話が広がった。


 ヴィオラ王妃はローズマリーを嫉妬し、ルジェド王を恨み、呪い殺そうとしたが失敗して死んだのだ。

 死体を葬るなどとんでもない。

 王を殺そうとした大罪人である。


「彼女の身体を町中引きずりまわし、多くの人の前で体を八つ裂きにしてしまえ」


 国民は城へ訴え出た。臣下の中にも同様の訴える者もいた。

 しかし、ルジェド王はそれをしなかった。


 ヴィオラ王妃の身体は丁重にシャロン国へと送り届けた。

 人々はルジェド王の寛大さを褒めたたえ、ヴィオラ王妃を貶し恨み、その感情はシャロン国へも向けられる。

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